各紙の社説

社説「集団的自衛権 根拠なき憲法の破壊だ」(2014/5/16 毎日新聞)

憲法9条の解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にし、他国を守るために自衛隊が海外で武力行使できるようにする。安倍政権は日本をこんな国に作り替えようとしている。
安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、集団的自衛権の行使容認などを求める報告書を提出した。法制懇の委員14人は、外交・安全保障の専門家が大半で、憲法学者は1人だけだ。全員が行使容認派で、結論ありきといえる。
歴代政府は、憲法9条を次のように解釈してきた。
◇9条解釈の180度転換だ
9条は戦争放棄や戦力不保持を定めているが、自衛権までは否定していない。しかし、自衛権行使は必要最小限度の範囲にとどまるべきだ。個別的自衛権は必要最小限度の範囲内だが、自国が攻撃されていないのに、他国への武力攻撃に反撃できる集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため憲法上許されない。
つまり個別的自衛権集団的自衛権を必要最小限度で線引きし、集団的自衛権行使を認めてこなかった。
報告書はこの解釈を180度変更し、必要最小限度の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈することによって行使を認めるよう求めた。
これは従来の憲法解釈の否定であり、戦後の安全保障政策の大転換だ。それなのに、なぜ解釈を変えられるのか肝心の根拠は薄弱だ。
報告書は根拠材料として、9条の政府解釈は戦後一貫していたわけでなく、憲法制定当時は個別的自衛権の行使さえ否定していたのが、自衛隊が創設された年に認めると解釈を大きく変えたことを指摘している。
現在の憲法解釈は歴代政府が30年以上積み上げ、国民に定着したものだ。戦後の憲法解釈が定まっていない時代に変遷を遂げた経緯があるから、変えてもいいというのは理屈が通らない。その時々の内閣が憲法解釈を自由に変えられるなら、憲法への信頼は揺らぐ。憲法が権力を縛る立憲主義にも反する。
それでも行使できるようにしたいというのなら、国会の3分の2の賛同と国民投票という手続きを伴う憲法9条改正を国民に問うのが筋だ。
何のために行使を認めるのか、現実に必要があるのかも明確でない。
報告書は、中国や北朝鮮情勢など厳しさを増す安全保障環境を指摘し、「安全保障環境の大きな変化にかかわらず、憲法論の下で安全保障政策が硬直化するようでは、憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない」と警告した。
憲法の平和主義が果たしてきた役割への言及は極端に少なく、まるで憲法を守って国を滅ぼしてはならないと脅しているようだ。そして検討の具体的事例として「公海上の米艦防護」「米国向け弾道ミサイルの迎撃」「シーレーン海上交通路)の機雷除去」などを挙げた。
安倍首相も記者会見で二つの事例をパネルにして説明し、現在の憲法解釈のままでは自衛隊がそれらの活動を行うことができないと訴えた。 しかし、首相が挙げた一つ目の事例の、朝鮮半島有事を念頭に避難邦人を輸送する米艦船が攻撃された場合の防護は、集団的自衛権を認めなくても、個別的自衛権などで十分に対応できるという指摘も多い。
二つ目の、国連平和維持活動(PKO)に参加している他国軍の部隊などが襲われた場合の駆けつけ警護は、そもそも集団的自衛権とは関係がないPKOの武器使用の問題だ。
◇本質そらす首相の会見
集団的自衛権問題の本質からそれた国民に理解されやすい事例をあえて選び、首相自ら「命を守るべき責任を負っている私や日本政府は、本当に何もできないということでいいのか」と情緒的に訴えることで、集団的自衛権の行使容認に向けた空気を醸成する狙いがにじむ。
報告書は、実際の行使にあたっては「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」などの要件を満たした場合、政府が総合的に判断して必要最小限度の行使をするか否かを決めるよう提言している。いわゆる限定容認論といわれる考え方だ。
裏返せば、政府が日本の安全に重大な影響を及ぼすと判断すれば何でもできるということだ。実質は全面容認と変わらない。報告書は、地理的限定は不適切とも言っている。
首相は記者会見で、法整備により「抑止力が高まり、紛争が回避され、戦争に巻き込まれなくなる」と強調した。だが歴史を顧みれば、自衛の名のもとに多くの侵略戦争が行われてきた。集団的自衛権が戦争への道をひらく面があることを忘れてはならない。
報告書は、国連の集団安全保障への参加、PKOでの武器使用の見直し、グレーゾーン事態と呼ばれる武力攻撃に至らない侵害への対応なども検討するよう求めた。
このうち湾岸戦争イラク戦争のような集団安全保障の戦闘参加について、首相は提言を採用しない考えを示した。与党協議では、日本の安全や国益に必要なことは何か、憲法解釈変更でなければ実現できないのか、近隣諸国との関係にどんな影響が出るのかなど、現実を踏まえた具体的で冷静な議論を求める。



社説「集団的自衛権−戦争に必要最小限はない」(2014/5/16 朝日新聞)

歴代の内閣が憲法9条のもとで否定してきた集団的自衛権の行使を、政府解釈の変更によって認めるべきだ――。
安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」がきのう、こんな提言を柱にした報告書を首相に出した。
これを受けて、安倍氏集団的自衛権の行使容認に向けた与党協議などの政治プロセスに入ることを表明した。
自衛権の行使=戦争
集団的自衛権の行使を認めるには、憲法改正の手段をとらざるを得ない。歴代内閣はこうした見解を示してきた。
安倍氏が進めようとしているのは、憲法96条に定める改憲手続きによって国民に問うべき平和主義の大転換を、与党間協議と閣議決定によってすませてしまおうというものだ。憲法に基づいて政治を行う立憲主義からの逸脱である。弊害はあまりにも大きい。
まず、戦争の反省から出発した日本の平和主義が根本的に変質する。
日本が攻撃されたわけではないのに、自衛隊武力行使に道を開く。これはつまり、参戦するということである。
懇談会は、集団的自衛権を行使するには「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」「(攻撃された国の)明示の要請または同意を得る」といった条件をつけている。
だが、いずれも単なる前提に過ぎなかったり、国際法上あたり前のことだったりして、明確な歯止めとはなり得ない。
集団的自衛権を行使するかしないかは、二つに一つだ。首相や懇談会が強調する「必要最小限なら認められる」という量的概念は意味をなさない。
日本が行使したとたん、相手にとって日本は敵国となる。
また解釈変更は、内閣が憲法を支配するといういびつな統治構造を許すことにもなる。
国民主権基本的人権の尊重といった憲法の基本原理ですら、時の政権の意向で左右されかねない。法治国家の看板を下ろさなければいけなくなる。
そして、近隣国との関係改善を置き去りにしたまま解釈改憲を強行することで、東アジアの緊張はかえって高まる。
■見過ごせぬ二重基準
きのうの記者会見での首相発言は、理解しがたかった。
懇談会は集団的自衛権のほか、国連の集団安全保障のもとでの自衛隊武力行使憲法の制約はないと解釈するよう、政府見解の変更を求めた。
首相はこの考え方を「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合せず、採用できない」と退けた。
それをいうなら集団的自衛権の行使容認も、これまでの政府の憲法解釈とは整合しない。それなのに首相は、「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」は禁じられていないという72年の政府見解を引き、集団的自衛権は許されるとの考えは「政府の基本的な立場を踏まえている」と評価した。
だが、72年の見解は、首相の引用部分に続いて「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と明記している。そこには触れぬまま提言を受け入れようというのは、二重基準によるごまかしとしか言いようがない。
これから与党協議に臨む自民党公明党の議員は、こんなまやかしを認めてしまうのだろうか。協議の行方から目を離すことはできない。
■9条のたがを外すな
一方、集団的自衛権の行使容認とは別に、報告書は国連PKOの際の武器使用のあり方や、日本の領土・領海への武力攻撃とまではいえない侵害への対応にも触れている。
「PKOでの武器使用に憲法の制約はない」という懇談会の提言は論外にしても、PKOなどの問題は、一つひとつ丁寧に検討すべき論点であることは確かだ。
海外での武器使用に関しては、政府は9条の平和主義と国際社会からの要請とのはざまで、針の穴を通すような憲法解釈や立法を重ねてきた。そうした矛盾がPKOの現場で端的に表れてきたのも事実だ。
しかし、それは憲法9条を尊重してきた日本国民が自らに課した「たが」でもある。
この矛盾を少しでも解消するため、さらに知恵を絞るべきなのは当然のことである。ただし、憲法を改正するのでなければ、検討は9条の範囲内にとどめるのもまた当然である。首相は集団的自衛権の行使容認を突破口に、やがては9条のしばりを全面的に取り払おうとしているように見える。
これが「戦後レジームからの脱却」の本質であるならば、看過できない。
いったい何のための集団的自衛権の行使なのか。日本の安全確保や国際平和への貢献のために何をすべきなのか。その目的や手順を誤ってはならない。



社説「「集団的自衛権」報告書 行使ありきの危うさ」(2014/5/16 東京新聞)

出来レース」の誹(そし)りは免れまい。安倍晋三首相に提出された報告書を「錦の御旗」に、集団的自衛権の行使容認に踏みきることなど断じて許されない。
報告書を提出したのは“有識者”らでつくる「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」だ。第一次安倍内閣で設けられ、第二次内閣でも再開された安倍首相の私的諮問機関である。
報告書では、政府が憲法違反としてきた「集団的自衛権の行使」を認めるよう、憲法解釈の変更を求めた。集団的自衛権の行使も「自衛のための必要最小限度」の枠内という理屈だ。
◆大国の介入を正当化
集団的自衛権とは例えば、米国に対する攻撃を、日本が直接攻撃されていなくても反撃する権利である。政府は国際法上、権利を有しているが、その行使は憲法九条で許される実力行使の範囲を超える、との立場を堅持してきた。
この権利は、報告書が指摘するように、一九四五年の国際連合憲章起草の際、中南米諸国の求めで盛り込まれた経緯がある。
安全保障理事会常任理事国に拒否権が与えられ、発動されれば国連の安全保障措置が機能しない懸念があるとして、中小国が集団で防衛し合う権利を認めさせたのだ。
しかし、国連に報告された行使の事例をみると、米国などのベトナム戦争旧ソ連ハンガリー動乱プラハの春への介入など、大国による軍事介入を正当化するものがほとんどだ。このような「戦争する」権利の行使を今、認める必要性がどこにあるのか。
中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発が現実的な脅威だとしても、外交力を駆使して解決するのが筋ではないのか。軍事的な選択肢を増やしたとしても、軍拡競争に拍車を掛ける「安全保障のジレンマ」に陥るのが落ちだ。
◆正統性なき私的機関
戦争放棄と戦力不保持の憲法九条は、第二次世界大戦での三百十万人に上る尊い犠牲の上に成り立つことを忘れてはなるまい。
その九条に基づいて集団的自衛権の行使を認めないのは、戦後日本の「国のかたち」でもある。
一九八一年に確立したこの憲法解釈を堅持してきたのは、ほとんどの期間政権に就いていた自民党中心の歴代内閣にほかならない。
憲法解釈自体は内閣法制局が担ってきたが、国民に選挙で選ばれた国会議員と政府が一体で三十年以上積み上げ、国会での長年の議論を経て「風雪に耐えた」解釈でもある。それを一内閣の判断で変えてしまっていいはずがない。
もし、集団的自衛権を行使しなければ、国民の命と暮らしを守れない状況が現実に迫りつつあるというのであれば、衆参両院での三分の二以上の賛成による改正案発議と国民投票での過半数の賛成という九六条の手続きに従い、憲法を改正するのが筋である。
そうした正規の手続きを経ない「解釈改憲」が許されるのなら、憲法は法的安定性を失い、憲法が権力を縛るという立憲主義は形骸化する。それでは法の支配という民主主義国家共通の価値観を、共有しているとは言えない。
安保法制懇のメンバー十四人は外務、防衛両省の元事務次官国際政治学者ら外交・安全保障の専門家がほとんどだ。憲法という国の最高法規への畏敬の念と見識を欠いていたのではないか。
その上、集団的自衛権の行使容認を目指す安倍首相への同調者ばかりである。バランスのとれた議論などできるわけがない。そもそも、この“有識者”懇談会の設置に法的根拠はない。
首相は記者会見で、今後実現を検討すべき具体例として、邦人輸送中の米艦船防護や、国連平和維持活動(PKO)の他国部隊が武装勢力に襲われた際の自衛隊による「駆け付け警護」を挙げた。
国民の命と暮らしを守る方策を検討するのは当然だ。しかし、現行憲法の枠内でも可能とされるこれらの事例と、憲法解釈の変更を前提とする報告書の事例とは、あまりにも懸け離れている。
混然一体とした例示で、集団的自衛権の行使容認の必要性を印象づけようとするのは姑息(こそく)だ。
◆守るべきは平和主義
首相は会見で「憲法の平和主義を守り抜く」「自衛隊湾岸戦争イラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」とも述べた。これ自体は評価したい。ぜひ実践してほしい。
しかし、公明党自民党の一部など与党内でも、解釈改憲という安倍内閣の政治手法に対する危機感が高まっているのも事実だ。
カギを握るのは公明党である。戦後日本の「専守防衛」政策を根底から変えようとする安倍内閣に、政権内部からどう歯止めをかけるのか、日本の命運を左右する正念場と心得るべきである。



社説「集団的自衛権 日本存立へ行使「限定容認」せよ」(2014/5/16 読売新聞)

◆グレーゾーン事態法制も重要だ◆
日本の安全保障政策を大幅に強化し、様々な緊急事態に備えるうえで、歴史的な提言である。
政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、集団的自衛権の行使を容認するよう求める報告書を安倍首相に提出した。
首相は記者会見し、「もはや一国のみで平和を守れないのが世界の共通認識だ」と強調した。
在外邦人を輸送する米輸送艦に対する自衛隊の警護などを例示し、集団的自衛権の行使を可能にするため、政府の憲法解釈の変更に取り組む考えも表明した。その方向性を改めて支持したい。
◆解釈変更に問題はない◆
自民、公明両党は20日に協議を開始する。政府は来月中にも新たな憲法解釈などを閣議決定することを目指しており、与党協議の加速が求められる。
懇談会の報告書は、北朝鮮の核実験や中国の影響力の増大など、日本周辺の脅威の変化や軍事技術の進歩を踏まえ、個別的自衛権だけでの対応には限界があり、むしろ危険な孤立主義を招く、と指摘した。
さらに、周辺有事における米軍艦船の防護や強制的な船舶検査、海上交通路での機雷除去の事例を挙げ、集団的自衛権を行使できるようにする必要性を強調している。
こうした重大な事態にきちんと対処できないようでは、日米同盟や国際協調は成り立たない。
報告書は、あらゆる集団的自衛権の行使を認める新解釈と、国家の存立にとって必要最小限の集団的自衛権に限って認める「限定容認論」を併記した。戦闘行動を伴う国連の集団安全保障措置への参加も可能としている。
これに対し、安倍首相は、集団的自衛権の全面行使や集団安全保障への全面参加は従来の憲法解釈と論理的に整合しないとして、採用できないと明言した。一方で、「限定容認論」に基づき、与党との調整を進める方針を示した。
首相が有識者会議の提言の一部を直ちに否定するのは異例だが、解釈変更に慎重な公明党に配慮した政治的判断と評価できる。
集団的自衛権の全面行使が可能になれば、有事における政府の選択肢が増えるのは確かである。
ただ、従来の解釈との整合性を保ち、法的な安定性を確保することは法治国家として不可欠だ。海外での戦争参加を認めるかのような誤解を払拭し、幅広い与野党や国民の合意を形成するためにも限定容認論が現実的である。
解釈変更には、「立憲主義の否定」といった批判もある。
だが、内閣の持つ憲法の公権的解釈権に基づき、丁寧に手順を踏み、合理的な範囲内で解釈変更を問うことに、問題はなかろう。
◆主眼は抑止力の強化◆
報告書は、集団的自衛権の行使の要件として「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」「国会承認」など6項目を挙げた。日本攻撃に発展する蓋然性や日米同盟の信頼性への影響を含め、「総合的に勘案する」とも明記した。
おおむね適切な内容だ。どんな事態が発生するかを事前に予測するのは困難であり、政府に一定の裁量の余地を残す必要がある。
報告書も指摘するように、集団的自衛権は権利であり、義務ではない。政府が検討した結果、行使しないとなることも、十分あり得よう。
解釈変更は、行使を可能にしておくことで日米同盟を強化し、抑止力を高めて、紛争を未然に防止することにこそ主眼がある。憲法には平和主義に加え、平和的生存権や国際協調主義がうたわれていることも忘れてはなるまい。
偽装漁民による離島占拠など、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」について、報告書は、平時から「切れ目のない対応」を可能にするよう、法制度を充実すべきだと主張している。
安倍首相も、与党協議で優先して検討する考えを示した。
◆「切れ目のない」対応を◆
中国が海洋進出を活発化し、尖閣諸島周辺での領海侵入を常態化させる中、グレーゾーン事態はいつ発生してもおかしくない。
現行の自衛隊法では、自衛権に基づく「防衛出動」は武力攻撃を受けた場合に限られる。警察権で武器を使う「海上警備行動」では、武装した特殊部隊の制圧などには不十分との指摘がある。
海上自衛隊海上保安庁がより迅速かつ機動的に対応し、効果的に武器を使用できる仕組みにしておくことが重要だ。
公明党もグレーゾーン事態に対処する法整備には前向きな姿勢を見せており、議論を深めたい。



主張「集団自衛権報告書 「異質の国」脱却の一歩だ」(2014/5/16 産経新聞)

■行使容認なくして国民守れぬ
日本の安全保障政策の大きな転換につながる集団的自衛権の行使について、政府の有識者会議が憲法解釈の変更で容認することを求める報告書を安倍晋三首相に提出した。
首相は記者会見で「いかなる危機にあっても国民を守る責任がある」と述べ、本格的な与党協議に入る考えを表明した。
日本の平和と安全、国民の生命・財産を守るため、当然の政治判断がようやく行われようとしていることを高く評価したい。
早期に与党合意を取り付け、自衛隊法など必要な関連法の改正などに取り組んでもらいたい。
≪緊張への備えは重要だ≫
なぜ今、集団的自衛権の行使が必要なのか。それは、厳しさを増す安全保障環境を乗り切るため、日米同盟の信頼性を高め、抑止力を強化する必要があるからだ。
報告書は「一層強大な中国軍の登場」に強い懸念を示した。「国家間のパワーバランスの変化」から「特にアジア太平洋地域」の緊張激化を指摘した。
中国は東シナ海では尖閣諸島の奪取をねらっている。南シナ海ではフィリピンやベトナムを相手にスプラトリー(南沙)、パラセル(西沙)諸島などを奪おうとしている。力による現状変更を図る試みは受け入れられない。
東西冷戦の時代であれば、日本が個別的自衛権の殻に閉じこもっていても、米国は仮にソ連の攻撃があれば日本を守っただろう。
だが、今や米国に一方的庇護(ひご)を求めることはできない。オバマ政権はアジア重視の「リバランス」(再均衡)政策をとるが、国防費は削減の流れにあり、米国民も海外での軍事行動を望まない。
集団的自衛権の行使容認で日本が責任を分担する姿勢を明確にし、地域の平和と安定のため、今後も米国を強く引きつけておく努力が欠かせない。
朝鮮半島有事の際、日本人を含む各国国民を避難させる米軍の輸送艦自衛隊が守ることは、集団的自衛権の行使にあたるため、現状では困難とされる。安全保障の法的基盤の不備から、国民を守ることができない。
米軍将兵は命をかけて日本の防衛にあたる。その同盟国が攻撃を受けているのに、近くにいる自衛隊が助けなければ、真の絆を強められるだろうか。日本の国際的信用も失墜しかねない。
集団的自衛権の行使を認めれば戦争に巻き込まれるといった批判がある。だが、むしろ行使容認によって抑止力が向上する効果を生むとみるべきだ。外交努力に加え、同盟や防衛力で戦争を未然に防ぐ必要がある。
過去の内閣法制局憲法解釈を金科玉条のように位置付け、変更は認められないとの主張もある。だが、過去にも憲法66条の「文民」の定義で現職自衛官を外すなどの解釈変更は行われた。
≪グレーゾーン対応急げ≫
そもそも、憲法が行使を許す「自衛のための必要最小限度」の中に、集団的自衛権を限定的に含めるのは、国の守りに必要である以上、当然だ。危機を直視せず、十分な抑止力を使えない不備を放置すれば「憲法解釈守って国滅ぶ」ことになりかねない。
与党協議に向け、公明党は行使容認に慎重な態度を崩していない。だが、通算11年以上、自民との連立で政権を担当してきた。安全保障面でも国家や国民を守る責任を等しく負っている。行使容認への接点を探ってもらいたい。
容認に前向きな日本維新の会みんなの党などと党派を超えた議論も加速すべきだ。
有識者会議の報告書のうち、武力攻撃手前の侵害である「グレーゾーン事態」への対応や、国連平和維持活動(PKO)での「駆け付け警護」を容認する点などは、公明党を含め多数の政党の理解が広がっている。
漁民に偽装した中国の海上民兵や特殊部隊が、尖閣に上陸して占拠しようとするケースもグレーゾーン事態だ。これに対応する領域警備の法整備は急務だ。
一方、国連安保理決議に基づく多国籍軍への自衛隊の参加などの提言を、首相が「海外での武力行使」にあたるとの従来の解釈に立ち、採用しない考えを示した点は疑問もないわけではない。
自衛隊の活動への強い制約を解くことが課題である。内外に表明している積極的平和主義の具体化へ、現実的対応を求めたい。



社説「憲法解釈の変更へ丁寧な説明を」(2014/5/16 日本経済新聞)

安倍晋三首相が憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能にする方向で「政府としての検討を進める」と正式表明した。日本の安保政策の分岐点となり得る重大な方向転換だ。幅広い国民の理解を得られるように丁寧な説明、粘り強い対話を求めたい。
首相の発言は有識者の集まりである「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)が報告書を提出したのを踏まえてなされた。
安保環境の大きな変化
報告書は「我が国を取り巻く安保環境はわずか数年の間に大きく変化した」と指摘した。東シナ海南シナ海での中国の振る舞い、北朝鮮の挑発的な言動などを例示するまでもなく、うなずく国民は多いだろう。
さらに報告書は「一方的に米国の庇護(ひご)を期待する」という冷戦期の対応は時代遅れだと強調し、新たに必要な法整備を進めるべきだと訴えている。
財政難の米国に単独で世界の警察を務める国力はもはやない。内向きになりがちな米国の目をアジアに向けさせるには、日本も汗を流してアジアひいては世界の安定に貢献し、日米同盟の絆を強める努力がいる。
日本が取り組むべき具体策として報告書は(1)日本近隣有事の際の米艦防護や不審船の船舶検査(臨検)(2)日本船舶が利用する海上航路での機雷の除去(3)離島に上陸した武装集団への迅速な対応――などを挙げた。
これらはあくまでも有識者の意見である。政策を決めるための土台でしかない。
政府はまず、急いで取り組むべき課題とじっくり考えるべき課題、現行法制でできることと憲法解釈の見直しが必要なことを、きちんと仕分けることが大事だ。
提言のうち、国際貢献のための武力行使を容認するくだりを首相が「採用できない」と明言したのは当然だ。
今の時点で最も警戒が必要な非常事態としては、沖縄県尖閣諸島などの離島に漁民と称する正体不明の武装集団が上陸するケースが考えられる。
警察や海上保安庁には荷が重いが、かといって、いきなり自衛隊が防衛出動するのか。警察権と自衛権の境界にあるグレーゾーンへの対処方法を早く決めておかなくてはならない。これは憲法解釈の見直しも不要で、来週始める自民党公明党の協議はここから着手するのが妥当だ。
「与党協議の結果に基づき、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定していく」。首相はこうも述べた。解釈変更ありきではない、と印象付けることで、現在の解釈を変えたくない公明党と折り合う糸口を探る狙いがある。
与党協議では具体的な事例に沿って検討すべきだ。戦後日本の憲法論議は一般人には縁遠い法理にばかり着目し、袋小路に入り込むことが多かった。
日本が直面しそうな危機に対処するにはどんな手があるのか、それは公明党が主張する個別的自衛権の拡大解釈などで説明できるのか、集団的自衛権にもやや踏み込むのか――。こうした議論を重ねれば合意に至る道筋は必ずみつかるはずだ。
与党以外とも対話を
もちろん日本ができる実力行使の範囲を歯止めなく広げ、際限なき軍拡に走ることは憲法が掲げる平和主義に反する。戦前には在外邦人保護を理由にして中国大陸に戦闘部隊を送り込んだこともあった。日本が許される自衛権は「必要最小限度の範囲」という憲法解釈まで変えてはいけない。
自公関係に亀裂が生じれば、影響は安保・外交政策にとどまるまい。景気の先行きは予断を許さない。与党の内輪もめで成長戦略のとりまとめなどが滞り、日本経済が立ち往生するような事態は誰も望んでいない。
話し合うべきは与党だけではない。民主党など野党にも集団的自衛権の行使解禁に前向きな議員はいる。国を二分する論争にすれば政権交代があるたびに憲法解釈が変更されかねない。
海外では外交・安保政策で与野党が一定の共通認識を持つ国が多い。日本でもそうした与野党関係を築きたい。
外国への説明も不可欠だ。報告書の中身をよく読みもせずに「軍国主義の復活」などと言い立てる国も出てこよう。有事への備えの強化と並行して、周辺国との緊張緩和にも全力で取り組み、日本の意図を世界に正しく理解してもらわねばならない。


アップデート2回目

2ヶ月ぶりのアップデート。
AQUOS PHONE SERIE SHL23 アップデート情報

以下の事象が改善されます。

  • Wi-Fi接続時に電源の再起動が発生する場合があります。

 ※更新されるソフトウェアには、上記以外に、より快適にSHL23をご利用いただくための改善内容が含まれております。

ビルドは「01.00.04」から「01.00.06」になった。
LTE経由で3分で再起動して更新完了。

奈須きのこ「空の境界 未来福音」読了

空の境界 未来福音 (星海社文庫)

空の境界 未来福音 (星海社文庫)

図書館から。
劇場版を観る前に、と思って読んでみた。が、読まずに観た方がよかったように思う。
読んでしまえば、ああ、こういうことだった、とわかってしまう。
とりあえず、忘れた頃に観ることにしよう。

また骨折?

デイケアセンターから、父の左手がまた腫れているとの電話。
取り急ぎ早退して、ここのところ毎週お世話になっている整形外科に行くことにした。
腫れているのは肘から先で外傷がないとのことなので、転んだのではないらしい。
どこかにぶつけたか捻ったか。
何はともあれ、これで治療は振り出しに戻る。

今年後半に観た映画26本

アニメだのレースだの本だのに時間を取られたが、頑張って観た。

1「ザ・メキシカン(The Mexican)」(2001年、アメリカ・メキシコ)
<監督>
ゴア・ヴァービンスキー
<出演>
ブラッド・ピットジュリア・ロバーツジェームズ・ガンドルフィーニJ・K・シモンズボブ・バラバン、デヴィッド・クラムホルツ、ジェレミー・ロバーツ、ジーン・ハックマン
<感想>
ブラッド・ピットジュリア・ロバーツの達者が頼りか。面白かったけど、お話はどうもバラバラでラストもとって付けたような感じ。伝説の銃「メキシカン」をもっとマクガフィン的に使ってもよかったように思う。(2013/07/27)


2「大鹿村騒動記」(2011年、日本)
<監督>
阪本順治
<出演>
原田芳雄大楠道代岸部一徳佐藤浩市松たか子冨浦智嗣瑛太、姜洪軍、石橋蓮司小倉一郎、でんでん、加藤虎ノ介小野武彦三國連太郎
<原作>
延江浩「いつか晴れるかな」
<感想>
映画自体は何ということもないごく普通の日本映画。公開3日後に亡くなった原田芳雄の遺作となった。(2013/07/29)


3「イングロリアス・バスターズ(Inglourious Basterds)」(2009年、アメリカ・ドイツ)
<監督>
クエンティン・タランティーノ
<出演>
ブラッド・ピットイーライ・ロスティル・シュヴァイガー、ギデオン・ブルクハルト、B・J・ノヴァク、オマー・ドゥーム、サム・レヴァイン、マイケル・バコール、メラニー・ロラン、ジャッキー・イド、ボー・スヴェンソン、マイケル・ファスベンダーマイク・マイヤーズ、ロッド・テイラー、ダイアン・クルーガークリストフ・ヴァルツダニエル・ブリュール、アウグスト・ディール、ジュリー・ドレフュス、シルヴェスター・グロート、マルティン・ヴトケ、クエンティン・タランティーノサミュエル・L・ジャクソン
<感想>
いつもながら殺戮・暴行シーンはショッキング。何かのメッセージになっている、というわけではないとのことだが、やはりタランティーノはダテじゃない。映画館で観たかった。(2013/07/30)


4「インファナル・アフェア(無間道/Infernal Affairs)」(2002年、香港)
<監督>
アンドリュー・ラウアラン・マック
<出演>
トニー・レオンアンディ・ラウアンソニー・ウォンエリック・ツァンケリー・チャン、サミー・チェン、ショーン・ユーエディソン・チャン、チャップマン・トウ、ラム・カートン、エルヴァ・シャオ、ン・ティンイップ、ワン・チーキョン、ディオン・ラム
<感想>
トニー・レオンの哀愁とアンディ・ラウの野心。昔から変わらぬ香港らしさをきちんと残したノワール。(2013/08/05)


5「インビジブル2(Hollow Man II)」(2006年、アメリカ)
<監督>
クラウディオ・ファエ
<出演>
ピーター・ファシネリ、ローラ・レーガンクリスチャン・スレーター、デヴィッド・マルキレース、ウィリアム・マクドナルド、サラ・ディーキンス、ジェシカ・ハーモン、ジョン・ショウ、ダーシー・ローリー、ザラ・テイラー
<製作>
ポール・バーホーベン
<感想>
第1作と比べるとコンパクトで地味な感じだが、サスペンスとしてまとまっていて飽きない作りになっている。透明化に関する悪意がはっきりと描かれているのでわかりやすい。
透明になるCGはほんのちょっとだけ。元はオリジナルビデオとかでアメリカでの劇場公開なしだそうで、制作費はあまり掛かっていないのかもしれない。ラストのアイデアはなかなか秀逸。(2013/08/07)


6「月に囚われた男(Moon)」(2009年、イギリス)
<監督>
ダンカン・ジョーンズ
<出演>
サム・ロックウェルケヴィン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット、カヤ・スコデラリオ、ベネディクト・ウォン、マット・ベリー、マルコム・スチュワート
<感想>
とてもよかった。
ぜひ映画館で観たい。イギリスならではという感じである。ほぼ全編一人芝居の主役サム・ロックウェルも素晴らしい。何気なく人間くさいガーティのスマイルマークのいろいろな表情もいい。結局出口があるのかないのかわからないが、アイデアもまとめ方も秀逸。監督はデヴィッド・ボウイの息子。(2013/08/08)


7「サウンド・オブ・サンダー(A Sound of Thunder)」(2005年、アメリカ・ドイツ)
<監督>
ピーター・ハイアムズ
<出演>
エドワード・バーンズキャサリン・マコーマック、サー・ベン・キングズレー、ジェミマ・ルーパー、デヴィッド・オイェロウォ、ヴィルフリート・ホーホルディンガー、コーリイ・ジョンソン
<原作>
レイ・ブラッドベリ「いかずちの音」
<感想>
クリーチャーだけでなく街の風景や車などはどこからどう見てもCGだし、スペクタクルシーンもアメリカ映画とは思えないほどちゃち。パラドックスの妙も原作があるから何とか保っているものの、全体的にB級感満載。(2013/08/10)


8「デイブレイカー(Daybreakers)」(2008年、アメリカ・オーストラリア)
<監督>
マイケル・スピエリッグピーター・スピエリッグ
<出演>
イーサン・ホークウィレム・デフォーサム・ニール、クローディア・カーヴァン、マイケル・ドーマン、イザベル・ルーカス、ヴィンス・コロシモ
<感想>
吸血鬼人口が人間を凌駕して血液不足に陥るというお話。人間を捕えての血液工場とか代用血液とか、いろいろと面白い仕掛けあり。人間に戻るとか戻った人間の血液で治療とか筋立てはそこここに強引なところもあって気になるところだが、ムダに引き伸ばさずにコンパクトに仕上げてある。おおむね楽しんで観られてよかった。イーサン・ホークガタカの時と変わらず大根で表情に乏しいが、派手さのないところが却ってよかったかも。(2013/08/14)


9「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ(L'Empire des loups/EMPIRE OF THE WOLVE)」(2005年、フランス)
<監督>
クリス・ナオン
<出演>
ジャン・レノ、アーリー・ジョヴァー、ジョスラン・キヴラン、ラウラ・モランテ、フィリップ・バス、ダビッド・カメノス、ディディエ・ソーヴグラン、パトリック・フラールシェン、エチエンヌ・シコ
<原作>
ジャン・クリストフグランジ
<感想>
同じニオイがするなぁと思ったら、クリムゾン・リバーと同じ作者が原作。謎のまま二つの状況が提示されつつ、繋がりがだんだんと明かされていくサスペンス。展開にはよく考えればいろいろとムリはあるだろうし、アレよという間に結局ジャン・レノがヒーローというラストは賛否あるのではないかと思うが、何も考えずにいれば面白く観られるのでヨシとする。(2013/08/15)


10「バビロンA.D.(Babylon A.D.)」(2008年、アメリカ・フランス・イギリス)
<監督>
マチュー・カソヴィッツ
<出演>
ヴィン・ディーゼルミシェル・ヨーメラニー・ティエリー、ランベール・ウィルソン
マーク・ストロングシャーロット・ランプリングジェラール・ドパルデュー
ジョエル・カービー
<原作>
モーリス・G・ダンテック「バビロン・ベイビーズ」
<感想>
最後の最後はもうちょっとスッキリしないところも残ったが、おおむね面白く観た。(2013/08/16)


11「ドラゴン・キングダム(The Forbidden Kingdom)」(2008年、アメリカ)
<監督>
ロブ・ミンコフ
<出演>
マイケル・アンガラノ、ジャッキー・チェンジェット・リーリウ・イーフェイコリン・チョウリー・ビンビンモーガン・ブノワ
<感想>
基本的にはカンフー映画だと思うが、アメリカ製作だけに少々味付けは異なる。何も考えずに楽しんで観られる娯楽作品。ジャッキー・チェンジェット・リーも実に達者。ラストの現実世界に戻るシーンは、よく思い出せないが、何となく、ナルニアのラストと似ていたような気もする。(2013/08/17)


12「エアベンダー(he Last Airbender)」(2010年、アメリカ)
<監督>
M・ナイト・シャマラン
<出演>
ノア・リンガー、デーヴ・パテール、ニコラ・ペルツ、ジャクソン・ラスボーン、ショーン・トーブ、アーシフ・マンドヴィ、クリフ・カーティス、セイチェル・ガブリエル、キャサリン・ホートン、フランシス・ギナン、デイモン・ガプトン、サマー・ビシル、ランダル・ダク・キム、ジョン・ノーブル
<感想>
テレビアニメシリーズの映画化だそうで、本来は3部作の予定とか。確かにラストは「続く…」って感じだったけど。全体的にストーリー展開が荒っぽい感じで、お話のつながりを追いかけていくのが大変。基本的に動作は太極拳ぽいカンフーだし、火の国の武具は日本の鎧みたいだし、国の入り口には鳥居みたいなのがあるし、お話も含めて世界観や展開はアチコチからいろんなものをつまみ食いして無理やりくっ付けたみたいな感じ。妙に動きのよいノア・リンガーとニコラ・ペルツのカンフーが何だか見事。(2013/08/24)


13「アイ・アム・サム(I am Sam)」(2001年、アメリカ)
<監督>
ジェシー・ネルソン
<出演>
ショーン・ペンミシェル・ファイファーダコタ・ファニングダイアン・ウィーストローラ・ダーン、ロレッタ・ディヴァイン、リチャード・シフ、ダグ・ハッチソン、スタンリー・デサンティス、ブラッド・シルバーマン、ジョセフ・ローゼンバーグ、チェイス・マッケンジー・ベバック、メイソン・ルセロ、ケン・ジェンキンス、ボビー・クーパー、キャロライン・キーナン、ウェンディ・フィリップス、メアリー・スティーンバージェン、ロザリンド・チャオ、マイケル・B・シルバー
<感想>
ダコタ・ファニングが一番かわいい頃かも。出だし「あぁ、心温まるいい話かぁ…」と感じながら、最後まで引き込んで観せるのはたいしたものだ。ショーン・ペンも達者である。全編に流れる"カヴァーの"ビートルズも実にいい。ソーシャルワーカーも検事も、職責に従って最後までとてもイジワルなのがアメリカ的。スタバやピザハットはちゃんと障害者雇用をしてるってしっかり宣伝。(2013/08/30)


14「ラブリーボーン(The Lovely Bones)」(2009年、アメリカ・イギリス・ニュージーランド
<監督>
ピーター・ジャクソン
<出演>
シアーシャ・ローナンマーク・ウォールバーグレイチェル・ワイズ、ローズ・マクアイヴァー、クリスチャン・アシュデール、スーザン・サランドンスタンリー・トゥッチ
マイケル・インペリオリ、リース・リッチー、キャロリン・ダンド
<音楽>
ブライアン・イーノ
<原作>
アリス・シーボル
<製作総指揮>
スティーヴン・スピルバーグ
<感想>
シアーシャの透き通るような青い眼に吸い込まれるようにして観た。エンバーでは溌剌とした少女、本作では思春期を迎えたばかりの少女を演じて揺れる心を見事に魅せてくれるなど、実に達者で楽しみな役者である。まったくキャラクターの異なる「ハンナ」もぜひ観てみたい。お話はあまりひねらずサスペンス半分で作られているが、ラストは少々可哀想な感じも残る。そう感じさせておいて、そんなことに捕らわれずに前に進めというメッセージなのかもしれないが。(2013/08/31)


15「ワイルド7」(2011年、日本)
<監督>
羽住英一郎
<出演>
瑛太椎名桔平丸山隆平阿部力宇梶剛士、平山祐介、松本実、要潤本仮屋ユイカ中原丈雄吉田鋼太郎深田恭子中井貴一
<主題歌>
L'Arc〜en〜Ciel「CHASE」
<原作>
望月三起也
<感想>
かっこいいということがよくわかっていない監督、カメラにより撮られた映画。陰影の深みもなく残念な画面と冗長でちぐはぐな演出、何しろバイクの乗り方、撮り型がまったくかっこよくない。草薙の中井貴一はまだしも、巨悪であるはずの桐生や草薙の上司であるはずの成沢の小物感あふれるキャスティングにはがっかり。(2013/09/07)


16「クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち(Les Rivieres pourpres II: Les anges de l'apocalypse/Crimson Rivers II: Angels of the Apocalypse)」(2004年、フランス・ドイツ・イタリア)
<監督>
オリヴィエ・ダアン
<脚本>
リュック・ベッソン
<出演>
ジャン・レノブノワ・マジメルカミーユ・ナッタ、クリストファー・リー、ガブリエル・ラズール、オーギュスタン・ルグラン、セルジュ・リアブーキン、アンドレ・パンヴェルン、ミレーヌ・ジャンパノワ
<原案>
ジャン=クリストフ・グランジ
<感想>
ストーリーの細かいところはどうでもいいから、息もつかせずどんどん進む。"顔のない修道士"は見事なパルクール。(2013/09/12)


17「シャッター アイランド(Shutter Island)」(2010年、アメリカ)
<監督>
マーティン・スコセッシ
<出演>
レオナルド・ディカプリオマーク・ラファロミシェル・ウィリアムズ、サー・ベン・キングズレーエミリー・モーティマーマックス・フォン・シドージャッキー・アール・ヘイリーイライアス・コティーズパトリシア・クラークソンテッド・レヴィンジョン・キャロル・リンチ、クリストファー・デナム、マシュー・カウルズ、ネリー・サイウット
<原作>
デニス・ルヘイン
<感想>
導入から謎を少しずつはらみ、徐々に狂気が明らかになっていく展開はさすが老練監督。2時間もいらないかもしれないが、最後に丁寧に明かされる事実まで、観る気持ちを掴んで離さない。ラストでは、レオナルド・ディカプリオのたった一言のセリフで、結局は心の中の真実は誰にもわからないとの余韻を残す。(2013/09/15)


18「第9地区(District 9)」(2009年、アメリカ・南アフリカ共和国ニュージーランド
<監督>
ニール・ブロムカンプ
<出演>
シャールト・コプリー、ジェイソン・コープ、デヴィッド・ジェームズ、ヴァネッサ・ハイウッド、ジョン・ヴァン・スクール、マリアン・フーマン、ルイス・ミナー、マンドラ・ガドゥカ、ユージーン・クンバニワ、ケネス・ンコースィ、ウィリアム・アレン・ヤング、ナタリー・ポルト、ニック・ブレイク
<感想>
ストーリーは荒っぽいが、アイデアは素晴らしい。CGを含めた特殊効果は隙がなく、B級とはいえない、低予算とは思えないほど、よく作っている。監督の高校時代の友人という主演のシャールト・コプリーは、セリフはアドリブだそうだし、エイリアンはCGだろうからほとんど一人芝居だったはずだが、実に達者に演じた。ディスカバリーチャンネルみたいなドキュメンタリー風の作り、いわゆるモキュメンタリーも面白かった。もう少し心理に迫るところを掘り下げられると深みも増すのかもしれないが、娯楽作としては十分。さて、3年経って、クリストファーは帰ってくるのか? ラストのインタビュー、あまりしつこくしなかったのはよかったけれど、ちょっと余計だったかも。映画館で観たかった。(2013/09/16)


19「スターシップ・トゥルーパーズ2Starship Troopers 2: Hero of the Federation)」(2003年、アメリカ)
<監督>
フィル・ティペット
<出演>
リチャード・バージ、コリーン・ポーチ、ローレンス・モノソン、ブレンダ・ストロング
エド・ローターサンドリーヌ・ホルト、ジェイソン=シェーン・スコット、ブライアン・ティー、ケリー・カールソン、J.P.マノックス、エド・クイン、ビリー・ブラウン、サイ・カーター、ドリュー・パウエル
<原作>
ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」
<感想>
予算は前作の15分の1という低予算で、アメリカではTV映画として劇場公開はなかったとか。全編薄暗い画面で、ギミックも軽そうだし構成もチープだが、それなりに楽しめる作り。軍への嫌悪はそこここにちりばめられているが、ラストにくっきりと表現した。(2013/09/25)


20「スターシップ・トゥルーパーズ3Starship Troopers 3: Marauder)」(2008年、アメリカ)
<監督>
エド・ニューマイヤー
<出演>
キャスパー・ヴァン・ディーン、ジョリーン・ブラロック、ボリス・コドジョー、スティーブン・ホーガン、アマンダ・ドノホー、セシル・ブレシア、ステリオ・サヴァンテ、マーネット・パターソン、ダニー・キーオ、コーキー・ファルカウ
<製作総指揮>
ポール・バーホーベン
<感想>
2作目の3倍の予算というのが触れ込みだったらしいが、第1作と比較すれば5分の1と、低予算には変わりない。前作の暗い画面と違い日中のシーンも多く、バグのCGにはアラが見えなくもない。3作を通じて概ね軍事礼賛を揶揄する内容と見せているが、今回は宗教批判も。テレビ映画として取り扱われた前作と比べると映画らしくなったが、1作目の雰囲気がそのまま続いていて、ここまで続けなくても…という印象も否めないか。(2013/09/27)


21「マチェーテ(Machete)」(2010年、アメリカ)
<監督>
ロバート・ロドリゲス、イーサン・マニキス
<出演>
ダニー・トレホジェシカ・アルバロバート・デ・ニーロミシェル・ロドリゲススティーヴン・セガールリンジー・ローハンジェフ・フェイヒーチーチ・マリンドン・ジョンソンダリル・サバラ、エリース・アヴェラン、エレクトラ・アヴェラン、シェリル・チン、トム・サヴィーニアリシア・レイチェル・マレク、シェー・ウィガム、アラ・セリ
<感想>
プラネット・テラー in グラインドハウス」のフェイク予告編の一つの長編映画化。クエンティン・タランティーノと比べると娯楽としての映画をうまく作っている印象。やっぱり面白い。映画館で観たかった。(2013/09/28)


22「変態島(Vinyan)」(2008年、フランス・ベルギー・イギリス・オーストラリア)
<監督>
ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
<出演>
エマニュエル・ベアールルーファス・シーウェル、ペッチ・オササヌグラ、ジュリー・ドレフュス、アンポン・パンクラトク
<感想>
津波で子どもを亡くした夫婦が放浪し狂っていく話。確か番組表の惹句を読んで録画したはずなのに、観始めたらどうも様子が違ってどう観進めたらよいかわからなかったのだが、ホラー・サスペンスということらしく、そういう風に観てみればもう少し違った感想もあったかも。すっぴんのエマニュエル・ベアールは迫力あり。原題の「Vinyan」はタイ語で"魂、成仏できない霊、幽霊"(Wikipedia)だそうで、邦題の「変態島」というのはまったくよくわからない。(2013/10/19)


23「フィクサー(Michael Clayton)」(2007年、アメリカ)
<監督>
トニー・ギルロイ
<出演>
ジョージ・クルーニートム・ウィルキンソンティルダ・スウィントンシドニー・ポラック、マイケル・オキーフ、ケン・ハワード、デニス・オヘア、ショーン・カレン、メリット・ウェヴァー、オースティン・ウィリアムズ、デイヴィッド・ランズベリー、デイヴィッド・ザヤス、ロバート・プレスコット、テリー・セルピコ、ビル・レイモンド
<製作総指揮>
スティーブン・ソダーバーグジョージ・クルーニー
<感想>
時間も気にならず面白く観たのだが、もう少しわかりやすくできたのではないか。息子との関係や、クレイトン一族の絆というか否応ない関係というか、その辺をもう少し丁寧に描いてもよかったように思う。馬を見つけて丘を登り偶然難を逃れるとか、自殺に見せかけた手口はそれなりによかったのにいろいろとツメがあまいとか、気になるところはいくつかあった。結局クレイトンは何を拠り所に善を為そうとしたのか。それを最後に際立たせればよかったのに、と、ちょっと残念な感じ。ところで原題はかの作家のオマージュかなんか? と思ったら「Clayton」と「Crichton」と、綴りがぜんぜん違う。(2013/10/20)


24「SUPER8/スーパーエイト(Super 8)」(2011年、アメリカ)
<監督>
J・J・エイブラムス
<出演>
ジョエル・コートニー、エル・ファニング、ライリー・グリフィス、ライアン・リー、ガブリエル・バッソ、ザック・ミルズ、カイル・チャンドラー、ロン・エルダード、ノア・エメリッヒ、グリン・ターマン、デヴィッド・ギャラガー、ジョエル・マッキノン・ミラー、ブレット・ライス、トム・クイン、マイケル・ヒッチコック、アマンダ・ミシェルカ、ジェシカ・タック
<製作>
スティーヴン・スピルバーグJ・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
<感想>
未知との遭遇」とか「E.T.」とか「宇宙戦争」とか「トランスフォーマー」とかいろいろ。いつもながら家庭問題も織り込み、少年少女の淡い恋とかもあり、派手な爆発シーンもある、いわゆるアメリカンエンターテイメント。ラストもアッサリと終わってよかったと思ったら、エンドロールで少年たちが撮ったゾンビ映画を観せるというご愛嬌も。エル・ファニングは姉ダコタとまた違った美少女。今のところ年相応といった印象で、その点では姉が一枚上手だったかも。(2013/10/27)


25「劇場版 SPEC〜結〜 漸ノ篇」(2013年、日本)
<監督>
堤幸彦
<出演>
戸田恵梨香加瀬亮北村一輝栗山千明香椎由宇有村架純、KENCHI(EXILE)、遠藤憲一イ・ナヨン渡辺いっけい三浦貴大、森山樹、岡田浩暉、松澤一之、載寧龍二、大森暁美、向井理大島優子竜雷太
<感想>
「欠」ではなく「結」となったもよう。公開に先立ちスペシャルドラマ「翔」の新や再放送と新作「零」放送、「天」の地上波初放映と準備万端。ドラマではできないカネの使い方をしたかった、ということではなかろうか。お話はどんどん複雑を極めてきており、「天」のラストシーンにあったあの国会議事堂はどういうことかとか、その辺はまだ「漸」では明かされない。「漸」だけ観て「爻」は観ないってのはなかなかなかろうとは思うが、「天」でもそうだったように「次があるから」感は否めず、パンフレットには「俳優の演技をじっくり見せる」などと言い訳はしてあるけれど今までと比較すれば結局冗長であることには変わりない。ラストをバッサリ切ってエンドロールも流さないのは覚悟の現われかどうか、「爻」でしっかり観極めたい。って、ハメられてるかしら。(2013/11/04)


26「劇場版 SPEC〜結〜 爻ノ篇」(2013年、日本)
<監督>
堤幸彦
<出演>
戸田恵梨香加瀬亮北村一輝栗山千明、岡田浩暉、松澤一之、載寧龍二有村架純神木隆之介福田沙紀城田優田中哲司安田顕真野恵里菜浅野ゆう子三浦貴大、大森暁美、森山樹、香椎由宇遠藤憲一、KENCHI(EXILE)、イ・ナヨン渡辺いっけい宅間孝行堀北真希井上真樹夫田島令子向井理大島優子北大路欣也竜雷太
<感想>
何はともあれ終わった。公開初日とはいえ平日の初回はがらがらで、席は3分の1程度埋まった、といったところ。駐車場は1番乗りだったし、早朝割引で1200円はとってもお得だった。「漸」で時間をたっぷり使ったからか1時間半とコンパクトながら、時間の使い方はずいぶん贅沢だったように思う。人間の醜さと、とはいえ希望とを対比させたかったのか、その点はわかりやすかったか、却ってわかりにくかったか。堤監督にしてはラストが冗長で、整理が付いたんだかどうなのか。当麻と瀬文の再会は、もっと幻想的であってもよかったのではないだろうか。というか、もっと大事に撮ってほしかった、というのは言いすぎだろうか。「天」のラストとの整合は結局なかった、と考えるべきなのか。(2013/11/29)