ずいぶん無責任な対応だ

タミフル:異常行動「視点、欠けていた」 厚労省、調査不足認める(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年3月30日(金))

インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と「異常行動」の因果関係を巡る問題で、厚生労働省の辻哲夫・事務次官は29日の定例会見で「(副作用として報告があった)異常行動の中身を見る視点が欠けていた」と話し、死亡例以外を調査しなかった方法に問題があったことを初めて認めた。
(中略)
また辻事務次官は年間3万件の副作用情報を少ない担当者で処理しているとし、「どうしても重大な死亡例からとの考え方に、(担当者が)疑問を感じなかったという状態が続いた」と釈明。「これからはきちんと整理して、問題の解明をしていきたい」と述べた。
厚労省は04年6月、医薬品安全性情報でタミフルの重大な副作用として異常行動を公表後、今月21日に飛び降りと転落に限定した異常行動の調査結果を発表するまで、死亡例以外は分析していなかった。



あまりに無責任な対応だったし、お粗末な釈明だ。
約1800件の報告が膨大なモノかどうか、1件ごとの内容にもよるだろうから議論は分かれるかもしれない。しかし、タミフルが承認されてから7年、厚労省が「重大な副作用」として「異常行動」を公表してから3年経っているわけで、この間に数十件の死亡例だけを調査・検討の対象にしていたというのはどう考えても不自然だし、真摯に対応していたのかどうか疑われて然るべきだろう。
厚労省のこうした無責任な姿勢で対応がここまで遅れ、もしかしたら死ななくてもよかった人たちが死んだかもしれないのだ。
タミフルを服用していない場合も、インフルエンザではないけれどタミフルを服用した場合も、異常行動が報告されている。つまり、異常行動を起こす要因には「インフルエンザに罹患する」「タミフルを服用する」という二つの条件があり、インフルエンザでなおかつタミフルを服用すると異常行動が増加するのではないか、という疑いが持たれているわけで、ここはしっかり調査してほしいところだ。
もし「インフルエンザにタミフルはよく効く」「タミフルは異常行動(もしくは突然死など)を引き起こす副作用がある」「インフルエンザに罹っているときにタミフルを飲むと副作用の発生頻度が高まる」ということだと仮定すると、例えてみれば「病気を治すのに毒を飲む」ということにならないだろうか。
「完全に安全な薬」というものがあるのかどうか知らないが、多かれ少なかれ薬だのワクチンだのは副作用を起こすモノである、との立場に立つとすれば、薬を飲む際にはある程度のリスクを前提にしておくことが必要になる。要はリスクと効果のバランスが問題なのであって、「コレを飲めば誰でも完治するけれど、死に至る副作用の発生率は50%」なんていう薬だったら、誰も飲まないし、そもそも承認されるとは思えない。タミフルはどうなのか、ということになる。
現行のインフルエンザに対するタミフルの効果については疑いのないところだと思われるけれども、それに付随するところの副作用にはどのようなモノがあるのか、その程度、発生頻度はどの位かについて、もう一度確認する必要があるのではないか。承認の過程に問題はなかったか、例えば一度承認を取り消して治験をやり直すくらいのことをやる必要があるのかどうか、などが、一般の「ド素人」たる国民の最大の関心事なのだと思う。結局のところ、薬を飲んで効果を享受するのも副作用に耐えるのも、患者たる国民なんだから。
何が何でもタミフルじゃなくちゃダメということではなくて、必要に応じてリレンザやアマンタジンの使用も考慮するとか、選択肢はあった方がいいだろう。タミフルを普及させるために、インフルエンザの怖さを過大に喧伝したようなことはなかったか、そこのところの反省も必要ではなかろうか。
そして、新型インフルエンザへの対応に意味があるかどうかはわからないけれど、取り敢えずリスクはリスクとしてあるにしてもタミフルは備蓄しておくということはアリだと思うが、いずれにせよもっと安心して使える薬の開発が早く開発されるように、強く望みたい。