森博嗣「スカイ・イクリプス」読了

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

図書館から。
スカイ・クロラシリーズのどうにもわからないところが少しでも氷解するかと思って読んでみたが、わからないことは結局わからないまま。たぶん理解しようと思わないことだ、ということなのだろう。
何かこう、牛乳瓶の底から眺めているような、周囲がぼんやりした、時には視点さえもぼやけているようなもどかしさを、常に感じながら読み終えた。
視点者が誰なのかできるだけ伏せたまま話を進める手口は、この短編ではより一層徹底されている。
死に直面することで生きることの意味を考えること、それによる孤独感等を共有することが要求されているのかもしれない。その意味では確かに、この文庫版の解説にあるように「青春小説」だ。
キルドレとは何か、何のためか、クサナギ、クリタ、カンナミとは何者かといったナゾは明かされない。作者はたぶん、そんなことはどうでもいい事だと思っているのではないか、と感じている。
ここまで読み終え、なにがしかの知識を得た状態でもう一度読み通せば腑に落ちる何かが見えてくるのかもしれないが、それだけの労力を払う価値は恐らく、ない。
できるなら、若いうちに読んでしまうべきものだ。