すい星:探査機から衝撃弾打ち込む実験実施へ NASA(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

すい星:探査機から衝撃弾打ち込む実験実施へ NASA(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

地球に近づいたすい星の核に探査機「ディープ・インパクト」から銅製の衝撃弾(インパクター、重さ370キロ)を打ち込む壮大な宇宙実験を、米独立記念日の4日、米航空宇宙局(NASA)が実施する。衝撃で飛び散った物質を探査機のカメラや望遠鏡で観察し、すい星の構成物質を調べる。すい星は、太陽系が誕生した約46億年前当時の物質を含んでいるとされる。太陽系の起源に迫る人類初の試みだ。
ターゲットのテンペル第1すい星は長径約15キロ、短径約5キロのだ円体。太陽を中心に、5.5年周期で木星の内側の軌道を回っている。衝突時はおとめ座の方向にある。明るさは約9等級で肉眼では見えない。
すい星の核は汚れた雪だるまと言われ、氷や岩の固まりだ。表面は岩石などの殻で覆われている。ディープ・インパクトインパクターで殻を破り、内部の物質を噴出させる計画だ。総費用は約3億3000万ドル(約360億円)という。
NASAによると、1月に打ち上げられた探査機はすい星に向かって順調に飛行している。
インパクターは日本時間3日午後3時ごろ、すい星から約88万キロの地点で探査機から切り離される。4日午後3時ごろ、秒速約10キロですい星に衝突する。
すい星の表面には深さ25メートル、長さ100メートルほどの穴があき、内部の氷が太陽熱で蒸発してちりやガスが放出されると予想されている。
探査機の本体はすい星から500キロまで接近し、衝突後を観察する。搭載したカメラや赤外線分光計などで放出された物質を観測、データを地上に送る。
NASAは宇宙空間のハッブル望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡も使い、赤外線やX線などでも観測して、すい星の構成物質を解析する。世界各地の研究者も観測準備を進めている。世界中の望遠鏡が一斉に一つの天体に向けられるのは、木星にすい星が衝突した94年以来になるという。
ただ、すい星の殻が予想以上に厚かったり、軟らかくてインパクターがもぐってしまえば、何の変化も起こらない。衝突で明るさが増したり、尾が伸びるとの推測もあるが、専門家も「ぶつかってみないと何が起こるかわからない」と話す。
衝突は日本時間の昼間で、国内からぶつかる瞬間は見えないが、5〜6時間後には観測できる。
国立天文台渡部潤一助教授は「太陽系誕生のときにすい星内部に閉じこめられた物質の組成がわかれば貴重なデータになる」と話している。