知事の持論による主義主張は県全体の意向ではない

県平和資料館運営協が会合 『従軍慰安婦』の記述、結論先送り(東京新聞 2006年7月26日(水))

県平和資料館(東松山市)にある年表の「従軍慰安婦」の記述について、上田清司知事が「間違った記述で、訂正しなければならない」と発言したのを受けて、同館の運営協議会は二十五日、対応を検討する会合を開いた。「従軍慰安婦」に関しての結論は、十月中旬に予定される次回以降に持ち越された。
会合では、一九九三年の開館以来、年表に記載されていた「南京大虐殺」に関する記述と写真が、館の判断でテープで隠されていたことが明らかにされた。これについて、同館側は「外部からの圧力ではない。写真の客観性が担保できなくなった」と説明したが、委員からは「さまざまな議論がある展示の修正については、協議会に諮るべきでは」と批判があった。
運営協議会は、館長が任命した学識経験者や教育、市民団体の関係者ら十四人で構成。運営方針などについて通常は年二回開催している。今回は上田知事の意向を踏まえ、異例の臨時開催となった。
上田知事は六月県議会で、年表の中の「従軍慰安婦問題など日本の戦争責任論議多発」という記述に関し「慰安婦はいても従軍慰安婦はいなかった。自虐史観になっていないか、きちっと検討しなければならない。協議会で見直しをしてもらいたい」と述べていた。
協議会の会合では、委員から「従軍慰安婦問題は過去の協議会で論議されているはず」「県立の館なのだから、国の見解と乖離(かいり)した展示をするべきではない」などの意見が出た。協議会会長の森田武埼玉大教授は「次回以降、議論いただくが、従軍慰安婦についての考え方はさまざまで、客観的に慎重に進めたい」と結論を急がない考えを示した。(堀場達)



南京虐殺記述削除が判明 県平和資料館運営協(WEB埼玉 2006年7月26日(水))

県平和資料館(東松山市)の昭和史年表にある「従軍慰安婦」の記述をめぐり、上田知事が「従軍」の削除を求めている問題で、有識者ら十四人で構成する県平和資料館運営協議会(森田武会長)が二十五日開かれ、「従軍慰安婦」の記述については次回以降の検討課題とすることが決まった。また委員の指摘で、館内に掲出されている年表から「南京大虐殺」の記述と写真が削除されていることも分かり、その扱いについても検討することになった。次回協議会は十月の予定。
同館事務局は「戦後六十年がたち、新たな視点での見直しが必要」として[1]常設展示の見直し[2]戦後日本の国際平和貢献の展示について―の二項目を委員に諮問。同日は展示見直しの方向性について意見交換を行った。
従軍慰安婦の記述については、「政府は旧日本軍が慰安所に関与したことを認め謝罪している。政府見解に矛盾しない方がいい」という意見があったが、記述を削除する、しないについて具体的な言及はなかった。
また、事務局は昭和史年表に掲載されていた川岸で多数の死体が倒れている様子を撮影した「南京占領から十日後の揚子江岸」と説明がついた写真と「日本軍南京占領(南京大虐殺)」という文言のうち「南京大虐殺」の部分を二〇〇五年三月に削除したことを明らかにした。事務局は「史実を否定しているわけではない。だが最近の研究で展示していた写真が確実な証拠でないことが分かったので外した。暫定的な措置」としている。