安倍氏辞任

安倍首相辞任:緊急会見で話した内容の全文掲載(毎日新聞 2007年9月12日(水))

安倍晋三首相は12日午後2時から首相官邸で緊急に記者会見し、辞意を表明した。安倍首相は会見の中で、民主党小沢一郎代表に党首会談を断られたことが辞意を固めたきっかけのひとつであることを明らかにした。安倍首相が話した内容は、以下の通り。


◇-◇-◇


本日、総理の職を辞するべきと決意をいたしました。
7月の29日、参議院の選挙が、結果が出たわけですが、大変厳しい結果でございました。しかし厳しい結果を受けて、この改革を止めてはならない、また戦後レジームからの脱却、その方向性を変えてはならないとの決意で続投を決意をしたわけであります。今日まで全力で取り組んできたところであります。
そしてまた先般、シドニーにおきまして、テロとの戦い、国際社会から期待されているこの活動を、そして高い評価をされているこの活動を中断することがあってはならない、なんとしても継続をしていかなければならないと、このように申しあげました。国際社会への貢献、これは私が申し上げている、主張する外交の中核でございます。この政策は何としてもやり遂げていく責任が私にはある、この思いの中で、私は、中断しないために全力を尽くしていく、職を賭していく、というお話をいたしました。そして、私は、職に決してしがみつくものでもない、と申し上げたわけであります。そしてそのためには、あらゆる努力をしなければいけない。環境づくりについても、努力をしなければいけない、一身を投げ打つ覚悟で、全力で努力すべきだと考えてまいりました。
本日、小沢党首に党首会談を申し入れ、私の率直な思いと考えを伝えようと。残念ながら、党首会談については実質的に断られてしまったわけであります。先般、小沢代表は民意を受けていないと、このような批判もしたわけでございますが、大変残念でございました。今後、このテロとの戦いを継続させる上において、私はどうすべきか、むしろこれは局面を転換しなければならない。新たな総理のもとで、テロとの戦いを継続をしていく、それを目指すべきではないだろうか。きたる国連総会にも、新しい総理が行くことが、むしろ局面を変えていくためにはいいのではないか。
また、改革を進めていく、その決意で続投し、そして内閣改造を行ったわけでございますが、今の状況でなかなか、国民の支持、信頼の上において力強く政策を前に進めていくことは困難な状況であると。ここは自らがけじめをつけることによって、局面を打開をしなければいけない。そう判断するに至ったわけでございます。
先ほど、党の五役に対しまして私の考え、決意をお伝えをいたしました。そしてこのうえは、政治の空白を生まないように、なるべく早く次の総裁を決めてもらいたい、本日からその作業に入ってもらいたいと指示をいたしました。私としましても、私自身の決断が先に伸びることによってですね、今国会において、困難が大きくなると。その判断から、決断はなるべく早く行わなければならないと、そう判断したところでございます。
私からは以上であります。



霞が関「自爆テロのようなものだ」 首相辞意表明で(朝日新聞 2007年9月12日(水))

改造内閣スタート直後の首相の辞意表明に、霞が関にも驚きが走った。
テロ対策特措法の延長問題を抱える防衛省。幹部の一人は「重要法案を抱えているのに」と、うなった。特措法の延長について首相が「職を賭して」と述べたことに対し、防衛省には「ハードルを高くした」という懸念が出た一方、強い決意と受け止める見方もあった。「なぜ今の時期に。無責任では」とつぶやく幹部も。「個人的に耐えられなくなったのか」との声も出た。
国土交通省のある幹部は「替わったばかりの副大臣政務官もまた交代か。なんという無駄だ」とため息。別の幹部は「なんで今なんだ。ミステリーのミステリーだ」。
法務省の幹部は「ただただ驚いている。所信表明をした直後の辞任はあまり例がないのではないか。何のために、なぜ今の時期に、と意図をはかりかねている」と語った。「新しい大臣が仕事を始めたばかりのところですべて振り出しに戻った感じ。これからどうなることか……」と途方に暮れる幹部も。
厚労省の幹部は「『職を賭して』と発言しても『総理のために』という求心力は高まらず、これでは臨時国会も乗り切れないと気持ちが途絶えてしまったのではないか」。別の幹部は「今のタイミングでやめるのは自爆テロのようなものだ。体調が優れないことが原因かもしれないが……」と語った。




野党「解散すべきだ」 安倍首相辞意で(朝日新聞 2007年9月12日(水))

自民党の代議士会と同じ頃、代議士会を開いていた民主党にも安倍首相辞意のニュースが伝わり、議員がばらばらと外に飛び出した。
枝野幸男衆院議員は集まった報道陣に対し、「一昨日の所信表明は一体何だったのか。こちらの代表質問を前に、あまりにも無責任だ。辞めるなら所信表明をする前だろう。ここまで来たら衆議院を解散して民意に問うしかない」と批判した。
国民新党亀井久興幹事長は「(理由としては)テロ特措法の扱いなどで野党と厳しく対立し、出口が見つからなかったということかもしれない。所信表明をした直後での辞意表明は、常識では考えられない。よくわからない」と話した。
社民党保坂展人衆院議員は「こんな中途半端な辞め方をした総理大臣はこれまでなかったし、これからもないだろう。到底、美しい国規範意識を語れる器ではなかった。政治家どころか社会人としての基本も欠いた極めて幼稚な辞め方に恥ずかしい思いだ」と話した。
新党日本代表の田中康夫参院議員は「シドニーでブッシュに激励されたら『職を賭す』と強がりを言い、国内で反発を受けると『辞める』という。お坊ちゃん気分で発言する人は首相のみならずどんなリーダーにも向かない。美しくない政治、日本を世界に発信して辞任するとは語るに値しない」と話した。



安倍首相辞意:与野党とも「全く無責任」と強い批判(毎日新聞 2007年9月12日(水))

安倍晋三首相が与党幹部に辞任の意向を伝えた。所信表明演説を終え、代表質問直前の辞意表明であり、与野党ともに「全く無責任だ」との強い批判が上がっている。
野党側からは「この段階で辞めるのは無責任だ。辞めるのならもっと早く辞めるべきだ」(鳩山由紀夫民主党幹事長)、「放り出すのは無責任だ。参院選直後にやめるべきだ」(福島瑞穂社民党党首)の声が出ている。
また自民党の閣僚経験者は「続投自体に問題があった。政権は完全に行き詰まってしまい、政権を投げ出したとしかいいようがない」と語った。
また中堅議員は「ポスト安倍で混乱するだろう。国政への影響ははかりしれない。国家の危機的な状況だ」と首相を批判している。
自民党は今後「ポスト安倍」選びで混乱することも予想される。
このためインド洋での海上自衛隊の活動の根拠になるテロ特別対策措置法や新法などの審議について大きな影響が出ることは必至だ。
首相は7月29日の参院選で惨敗したのにかかわらず、続投を表明した。続投に関しては与党内からも批判も浴びたが、参院選政権選択選挙ではなく、安倍政治そのものが否定されたわけではないという理由で退陣論を突っぱねた。
安倍首相は内閣改造では派閥の長を中心にしたベテラン閣僚を起用し、求心力の回復を図った。いったんは支持率が回復したが遠藤武彦前農相の辞任で首相の任命責任が問われ批判を浴びていた。この時点で首相の命運は尽きていたという指摘もある。



安倍首相辞意:不祥事続いたお友だち内閣(毎日新聞 2007年9月12日(水))

安倍首相は06年9月20日、自民党総裁選で麻生太郎幹事長と谷垣禎一財務相を破って第21代総裁に就任した。第1次安倍内閣は同26日に発足したが、親しい仲間を多く集めたことから「お友だち内閣」などとも呼ばれた。
安倍内閣は、相次ぐ閣僚の不祥事に悩まされた。同12月に、佐田玄一郎行政改革担当相(当時)政治資金問題で辞任。今年1月に故松岡利勝農相(当時)の事務所費問題が浮上し、5月に松岡氏が自殺した。7月には久間章生防衛相(当時)が、原爆投下について「しょうがない」と発言し辞任に追い込まれた。さらに、参院選直前の同月、赤城徳彦農相(当時)が事務所費問題が浮上したことなどから自民党は歴史的な大敗。8月になって赤城氏を更迭した。
第2次安倍内閣では、閣僚などの相次ぐ政治資金の問題が発覚し、混乱を極めていた。
赤城元農相の度重なる事務所費問題など閣僚の不祥事で傷ついた安倍内閣は、「身体検査」を終了したはずの参院選後も、やはり政治とカネの問題にまみれた。
今月1日に遠藤武彦前農相が組合長を務める農業共済組合が、99年に国の補助金115万円を不正受給していた事実が発覚し、出鼻をくじかれたほか、額賀福志郎財務相玉沢徳一郎元農相などの事務所や政治資金を巡る不祥事も相次いだ。



安倍首相辞意:「週刊現代」が「脱税疑惑」追及で取材(毎日新聞 2007年9月12日(水))

突然辞意を表明した安倍首相については、「週刊現代」が首相自身の政治団体を利用した「脱税疑惑」を追及する取材を進めていた。
同編集部によると、安倍首相は父晋太郎氏の死亡に伴い、相続した財産を政治団体に寄付。相続税を免れた疑いがあるという。晋太郎氏は91年5月に死亡し、遺産総額は25億円に上るとされていた。編集部は安倍首相サイドに質問状を送付し、12日午後2時が回答期限としており、15日発売号で掲載する予定だったという。



民主「職責放棄だ」…野党各党、突然の辞意表明を批判(読売新聞 2007年9月12日(水))

安倍首相が12日、突然に辞意表明したことについて、民主党は12日午後、国会内に小沢代表、菅代表代行鳩山幹事長ら幹部が集まり、対応を協議した。
午後2時からの首相の記者会見の後、改めて幹部が協議することにした。
鳩山幹事長は午後1時半ごろ、国会内で「参院選直後に、お辞めになるべきだと言った時には、辞めなかった。体調が理由かとも感じるが、どうも、そういう話でもないようだ。小沢代表に党首会談を断られたから辞めるという発想は、信じがたい。何か別の要因があるのではないか。(首相の)記者会見を踏まえて、小沢代表が民主党としての立場から申し上げたい。今は推移を見守りたい」と語った。その後、「首相が辞めるなら、当然、総辞職だ。本来、衆院を解散して、民意を問うべきだ」と指摘した。
民主党高木義明副代表は「全く前代未聞で、所信表明の直後に辞任するということ自体に驚いている。職責放棄としか言いようがない」と語った。
一方、国民新党亀井静香代表代行は「あり得ないことだ。一国の首相が簡単に異常な形で辞めるのは、いい形ではない。支えきれなかった自民党の責任もある。かわいそうだ。もう自民党はおしまいだ」と述べた。
共産党の志位委員長は「所信表明演説を行った後にこういう形で政権を投げ出すのは無責任の極みだ。自民党政治の末期症状極まれりという感を強くする。どういう後継政権であれ、自公政権に対する審判があった以上、衆院解散・総選挙に追い込む」と語った。



安倍首相辞任、関西でも驚きと疑問の声(読売新聞 2007年9月12日(水))

◆所信表明何だった、街の声「混乱するだけ」
「なぜ、この時期に」「周囲に足元をすくわれ、無念だろう」――。就任からわずか1年という安倍首相の突然の辞意表明に、市民から驚きと疑問の声が相次いだ。
市民の多くは、辞任を決意したタイミングに首をかしげた。大阪・キタを歩いていた会社員斧原俊三さん(59)(神戸市東灘区)は「参院選敗北の時に辞めるべきで、今辞めれば混乱するだけ。理想を掲げた割には実行が伴っていなかった。時代の空気を読み切れない人だった」と評した。
大阪府枚方市の会社員山口彩さん(26)は「あまりにも短い政権だった。テロ特措法や年金問題など課題が山積みなのに、辞任は無責任」と批判。奈良県大淀町の会社員女性(26)は「相次ぐ大臣の辞職で任命責任を取るべきと思っていたが、この時期になぜ首相自身が辞めるのか。理解に苦しむ」と疑問を投げかけた。
職場のテレビで辞意を知った兵庫県西宮市、会社社長添田修次さん(60)も「参院選後も続投したのに、なぜ今なのか。テロ特措法を何とか成立させなければというプレッシャーが大きく、追い詰められていたのかもしれない」と話した。
閣僚の不祥事などで追い詰められた形の首相に、同情の声も聞こえた。
神戸市中央区の主婦岩上喜美さん(79)は「周囲に足を引っ張られた形の辞任は残念で気の毒。辞めずに信頼回復に努めてほしかった」と惜しみ、和歌山市園部の主婦小畠展子さん(51)は「誠実そうな人柄で拉致問題にも熱心だったが、年金や政治とカネの問題などタイミングが悪く、ツイてない人という気がする」と話した。
広島市西区李実根(リシルグン)・在日本朝鮮人被爆者連絡協議会長(78)は「8月にお会いし、被爆者問題に前向きに取り組むと約束していただいた。期待をかけていただけに大変残念だ。次の総理に責任ある形で継承してほしい」と話した。
一方、近畿地方などの政党関係者からも戸惑いや怒りの声が上がった。
議員宿舎のテレビで知ったという自民党大阪府連筆頭副会長の谷川秀善参院議員は「寝耳に水。知り合いに電話をかけ回っているが、誰も要領を得ない。これから一体どうしたらいいのか……」と頭を抱えた。党京都府議団代表幹事の多賀久雄府議は「なぜ、この時期なのか、驚愕(きょうがく)の一語」と絶句。党岡山県連議員総会長の千田博通県議は「党がますます見放されてしまう」と困惑していた。
民主党大阪府連代表で、党本部幹事長代理の平野博文衆院議員は「とんでもない話。所信表明は何だったんだ」と憤り、党滋賀県連の朝倉克己幹事長も「参院選直後に潔く辞めるべきだった。この時期に辞めるのはあまりにも無責任」と批判した。


◆判断すべて遅れている/大切な時、理解に苦しむ
安倍首相が辞意を表明したことについて、各界の識者に聞いた。
ジャーナリストの櫻井よしこさんの話「安倍さんはいま辞めるのなら、参院選の開票結果が出たときに辞めるべきだった。判断がすべてワンテンポ遅れている。(野党と)戦う前に敵前逃亡したようなもので、最初から最後まで戦わなかった。これで、安倍さんの政治生命が終わっただけでなく、総選挙が行われれば、結果次第では、自民党の終えんになる可能性さえある」
作家の高村薫さんの話「内閣を改造してまで続投を決め、先日も、テロ特措法の期限切れ以降も海上自衛隊の活動を継続させたいと話したばかりで、首相にとっては、いまが一番大切な時のはずなのに、理解に苦しむ。首相の言葉はそんなに軽いものであってはいけないはず。これでは国民はもちろん、海外各国も混乱するし、真意を測りかねる」
関西経済同友会代表幹事の小嶋淳司さん(がんこフードサービス会長)の話「責任を全うしてほしかった。ただ、状況は大変厳しかった。何はともあれ、しっかりした内閣が維持されることが、日本の経済にとって重要だ。腰の据わった対応をしてほしい」



安倍首相辞任:国民の信頼得られなかった……一問一答全文(毎日新聞 2007年9月12日(水))

安倍晋三首相が12日、首相官邸で行った記者会見の一問一答は以下の通り。


−−参院選直後ではなく、なぜ今、辞任を決断したのか。
参院選は厳しい結果でありました。そこで反省すべきはしながら、今進めている改革を止めてはならないと思い、私が進めている国づくりは止めてはならないと思い、所信を述べさせて頂きました。しかし、テロとの戦いを継続していくことは極めて重要なことであり、それは私の約束でもありますし、国際公約でもあります。それを果たしていくためには、むしろ私が職を辞することによって、局面を転換した方が、その方がむしろいいだろうと判断致しました。


−−辞めることで、どのような自衛隊活動につながるのか。
私がなんとしても改革を進めなくてはいけないとの思いで全力を尽くしてまいりましたが、残念ながら私が総理であることによって、野党党首との話し合いも難しい状況が生まれています。そして、党において、今の状況においては新しいエネルギーを生み出して、そのエネルギーで状況を打開し、新しいリーダーの下で状況を打開し、新法を新しいリーダーの下で推し進めていくことの方がいいのではないかと考えました。


−−公約を途中で投げ出すのは無責任では。
もちろん、私はそのために全力を尽くさなければいけないと考えておりました。しかし、むしろ公約を果たしていくうえで、どういう環境を作ることが必要かと考えたとき、私が職を辞することでその環境ができるのではないか。私が職に就いていることで、成立することにマイナスになると考えました。


−−後継の総裁についてはどう考えているか。
今日はまだ、そうした決断をしたばかりでございます。まだ、日程的なものを決めているわけではございませんが、なるべく早い段階で、後継の総裁を決めてもらいたいと思っています。後継の総裁については、私がとやかく申し上げることは適切ではないと思いますが、いずれにしても新しいリーダーとして与党を率いて、力強く政策を前に進めていっていただきたいと思います。


−−総理の辞任で、戦後レジームからの脱却などの政策が停滞してしまうとは考えなかったのか。
続投するに当たって、新しい国づくりを進めていかなければいけない。その中には、戦後の原点にさかのぼって見直しをしてという、戦後レジームからの脱却も果たしていかなければいけないという思いでございます。今まで、教育基本法の改正や、公務員制度の改革等々の、いわば戦後の出来上がった仕組みを変えていく、そういう挑戦をしてまいりましたし、成果も上げてきたと思います。しかし、現在の状況においては、新たな局面の打開を図って、新たなエネルギーで前に進めていかなければ、そうした政策の実践も難しいという状況であろうと判断しましたが、その方向で是非、進んでいってもらいたいと思います。


−−辞任の理由についてテロとの戦いを第一に挙げたが、総理の職責は外交面ではなく、国民生活を背負っている面がある。そういう状況で、月曜日(10日)に続投を決意する所信表明をして、各党の質問を受ける直前に総理の職を辞するのは、国民から見ると逃げていると思われても仕方ないのでは。どのように責任をお考えか。
総理の職責は大変、重たいものがあると考えています。そして私も所信において思うところを述べたこところであります。しかし、述べたことを実行していく責任が私にはあるわけではございますが、なかなか困難な状況です。この中において、それを果たしていくことが出来ないのであれば、それは政治的な困難を最小限にする、という観点からなるべく早く判断すべきだという決断に至りました。


−−政策を前に進めにくい状況は参院選で大敗した後も変わっていないと思うが、なぜ所信表明後に辞意を表明する決断をしたのか最大の理由と、最終的に決断したタイミングはいつか。
総理としては常に職責を果たしていかなければいけないということは、常に考えているわけでございます。そして私が、ここは職を辞することによって、局面を変えていかなければいけないと判断いたしましたのはですね、今日、残念ながら党首会談も実現もしないという状況の中で、私の約束をしたことが出来ない、むしろ、私が残ることが障害になっていると、こう判断したからです。


−−政策を実行するのに非常に困難な状況になったというが、困難な状況に陥ってしまった原因などについて、どう分析しているか。そこに至らしめた自らの責任について、反省点など伺いたい。
もちろん、反省点は多々ございます。前の内閣、また新しい内閣においてですね、安倍内閣として国民の信頼を得ることが出来なかった。これは私の責任であろうと思います。それを原動力に政策を前に進めていくということが残念ながら出来なかったということです。


−−党首会談を理由に挙げたが、今後国会の流れの中で、党首会談が出来るという見通しはなかったのか。また、党首が代われば党首会談が出来るという見通しなのか。
私が民意を受けていないということが理由の一つとして挙がっているわけでございます。この選挙結果は、やはり大きなものがございます。もちろん、そのうえに立って決意をしたわけでございますが、新しい自民党のリーダーとの間においてですね、率直な党首同士の話し合いがなされると、私はそのように期待しています。


−−総理の強調するテロとの戦いを継続するためには衆議院の再議決をもってすれば党首会談がなくても突破できたという見立てが我々の間では主流だと思うが、それでも党首会談が出来ないとなると、多くの支持があって総理になったのに、説明としては不十分ではないか。本当の心境、あるいは何がこの決断に至ったのかを、総理として最後にぜひ、伺いたい。
私は、いわばこのテロとの戦いにおいては、中断されてはならないと考えて、先般シドニーで職を賭すという話をしたわけでございます。新法で継続を図っていくという考え方もあるわけでございますが、日程的な関係で、新法ですと、一時的に中断という可能性は高いわけでございまして、そうであるならば、事実上そういう状況が出てくるわけでございまして、そう判断せざるを得ないと考えました。そこで、その時に判断するよりも、むしろ今、判断した方が、党が新たにスタートするうえにおいては、むしろその方がいいだろうと。国民のみなさまに対しましてもですね、混乱を招かないうえにおいては、なるべく早い判断の方が良かったと、決断がいいだろうというふうに判断いたしました。



「党首会談の申し入れは昼前」 民主・小沢党首が会見(朝日新聞 2007年9月12日(水))

民主党の小沢党首は12日午後3時、安倍首相の辞意表明を受け、記者会見を開いた。
会見での発言と質疑応答は以下の通り。


◇-◇-◇


参議院選挙で与党が過半数を割り、国民の支持を得られなかった。そういう事態の中で総理に居続けて、先月は改造をやって、一昨日は所信表明を行い、今日は代表質問の予定だったのですが、その直前に辞職の表明だった。このようなケースは40年近くこの世界におりますけれど、初めてのことではないかと思いまして、本当のところ安倍総理自身がどういう心境かということはよくわかりません。


――テロ特措法について、総理が述べたように辞職で局面が打開されると思うか?
わかりません。安倍総理がそう思われたことについて、私に問われても答えようがありません。テロ特措法についてもイラクの問題についても、我々の安全保障の基本的な考え方から、反対の意思をマニフェストにおいて国民に示してきました。そのマニフェストを示しつつ民主党過半数を取り第1党となったわけで、自民党の政権が代わったからといって、我々の考え方が変わることはあり得ないことだと思います。


――党首会談を断られたことを、総理は辞任の理由の一つにあげているが。
総理から党首会談の再三の申し出を受けて、それを私が拒否した、との一部報道を見ましたが、私も、幹事長と国対委員長も今まで政府から、総理から、一度も党首会談の呼びかけを受けておりません。
党首会談の申し入れついては国対委員長から報告を聞きました。今日の昼前、自民の大島国対委員長から申し出があったそうです。「党首会談はいつでも結構ですが、今日のこの状況ですから総理はどういうお考えでどういうお話がしたいのか、もう少し官邸と話をしてきちんとした申し入れをしてもらいたい」という趣旨のお話をしたら、「いやごあいさつだ」ということだったそうです。いまこの時点で「ごあいさつの党首会談」というのはちょっと。そういう首をかしげるような提案だったそうです。
「それならば党首討論という方法もあるんじゃないでしょうか」ということも申し上げたそうです。そうしたら、「それも含めて総理にもう一度お伺いをしてまた参ります」という話だったそうです。
大島委員長が総理にどう伝え、総理がそれをどう判断したかはわかりませんが、きょうのこの申し入れ以前に一度も、私も我が党も、党首会談の申し入れは受けておりませんし、イエスもノーも言う機会がなかった、というのが事実であります。


――自民党の新総裁の下、民主党の国会審議に変化はないか。新総裁が党首会談を申し入れた場合、対応は?
国会運営がどうなるかは、新しい総裁に聞いてください。話し合いをしたいということであれば、いつでも応じます。


――早期の衆議院解散を求める考えに代わりはないか。
次は任期から言えば衆議院の選挙。いつ解散があるかわからない。常にいつあってもいいように万全の態勢をとっているのが、政党として、政治家としての当然の心構えだと思います。
我々が最終的に首班を決めるのは、衆議院の総選挙において過半数を取らなくてはいけない。その意味で総選挙の実施をできるだけ早い機会に、という考えはまったく変わっていません。
いずれにしても民主党は、自民党うんぬんの問題ではなく、総選挙で国民の過半数の理解を得られるような政党にならなければいけない。そのためにこの国会で、参議院選挙で国民と約束した政策を、できる限り実現に向けて努力していく。そのことに尽きると思います。