暮らしそのもの『国の基本』全103条 <第40条> 規定ない被害者の権利

何人も、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

(前略)
容疑者、被告人の権利を手厚く保護している三一条からこの条文までについては、大きく改正しようという声はほとんどない。
その代わりに注目されているのは、犯罪被害者の権利だ。
憲法では、犯罪被害者の権利についての条項は全くない。最近の事件などでは、被害者やその家族のプライバシーがあらわにされ、救済されることもなく、不幸に追い打ちをかけられている例がよくみられる。
このため、改憲の際には、被害者の権利も盛り込むべきだという意見が、与野党問わず多い。
(後略)

容疑者や被告人はまだ無罪なのだから、有罪が確定せずに無罪になったのであれば補償をうけることを担保されるのは当然だ。推定無罪である者が不当な扱いを受けない、ということは大切なことである。戦前にはいろいろな場面で不当に弾圧された事例があった反省がここにあるわけで、この基本は忘れてはいけないと思う。
翻って、被害者の権利は守るべきだ、という点には大いに賛成するわけだが、それを憲法に書かなければならないとしたらそれは少しばかり疑問に思う。人権条項等によってすでに擁護されているのだから、それに沿った法令が整備されるのがスジだと思う。これを憲法に書かなければ守れないとしたら、情けないことなのではないだろうか。憲法の理念にきちんと則り、ちゃんとした法と体制の整備をすれば十分にケアができるだろう。お手本はいくらでもあるように思うのだが。