「機械」の次は「健全」の押し付け

柳沢厚労相:子ども2人以上「健全」発言、波紋に拍車(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年2月6日(火))

「女性は産む機械」と発言し釈明に追われている柳沢伯夫厚生労働相が、6日の記者会見で「結婚したい、2人以上子どもを持ちたい若者」を「健全」と表現したことが波紋を広げている。
(中略)
国立社会保障・人口問題研究所の05年の調査で「いずれ結婚する」と回答した未婚男女の希望する子どもの数が平均値で2人を超えたことを踏まえた発言だった。
(中略)
柳沢伯夫厚生労働相の6日の記者会見での主なやり取りは次の通り。
(記者) 少子化対策は女性だけに求めるものなのか、考えはいかがか。
厚労相) 若い人たちの雇用形態が、例えば婚姻状況などに強い相関関係を持ち、雇用が安定すれば婚姻率も高まるような状況なので、まず若者に安定した雇用の場を与えていかなければいけない。また、女性あるいは一緒の所帯に住む世帯の家計が、子どもを持つことで厳しい条件になるので、それらを軽減する経済的支援も必要だろう。もう一つは、やはり家庭を営み、子どもを育てることには人生の喜びのようなものがあるという意識の面も若い人たちがとらえることが必要だろう。そういうことを政策として考えていかなければならない。他方、当人の若い人たちは結婚をしたい、それから子どもを2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいるわけだから、本当にそういう若者の健全な、なんというか希望というものに我々がフィットした政策を出していくことが非常に大事だと思っている。



またまた批判に対して「読解力がない」だの「リテラシーの欠如」だのと喧しいようだけれど、ザックリ読んでみて、「結婚したい」「子どもを2人以上持ちたい」という考えを若者が持つことについて、「健全」だと考えているのは間違いないようだ。こんな考え方にはやはり首を傾げざるを得ない。どうも、言えば言うだけ損をする人格のようだ。
少子化問題」というものが人口減少を食い止める方向でしか考えられていないのだとしたら、その施策を検討しようという立場から見れば、こうした調査結果を人口減少を阻止できそうな要因として「健全」と位置付けておきたいのはわからないではない。しかし、そもそも今の人口を維持する、もしくは人口が増加することだけが選択肢であっていいのか。それに、結婚する、子どもを持つ、ということになぜそれほどの価値を付けておきたいのか、そこにまず、強い疑問を禁じ得ないでいる。
税収も減る、年金も破綻する、で「これ以外に打つ手なし」と言うなら即刻政治家を辞めてもらいたい。カネがないなら使わなければいいのに、莫大な借金を抱えてなお、一般会計82兆円に対して新規の借金が25兆円、借金は返済どころかどんどん膨らんでいくばかり。人口が増えでもしなければ、返せるアテがあるとは到底思えない。優先順位を決め、大事な施策にカネを使い、無駄遣いは極力やめる。こういうことにこそアタマを使い、その施策について国民に広く理解を求め、汗水垂らして説明するのが本来の政治だろう。
単純に考えて、人口が増加し過ぎることは決してよい状況を生むとは限らない。世界に人口過剰で苦しむ国はいくつもある。日本だけに限って言えば、人口過密は通勤列車の超満員状態、過密した住環境、恒常的な渋滞、ゴミ問題などなどの原因となってるわけだし、個人的には今の半分くらいの人口にならないか、もっと少なくてもいいかも、と思うくらいだ。
結婚するかしないか、子供を持つか持たないかはごくごく私的な問題で、個人の自由の範疇を超えるモノではない。少なくとも、国だの何だのに「結婚しよう、子どもをたくさん持とう」なんて言われる筋合いはまったくない。例えご褒美があろうと、結婚する人はするだろうししない人はしない、同じように子どもを持つ人は持つし、持たない人は持たないのだ。
安定した雇用環境が結婚することや子どもを持つことに少なからず影響を与えることはその通りかもしれないが、それにしたって経済的支援をしないと解決できないような状況なのであれば本末転倒もいいところだ。食事や家族が大事だの何だのいう内閣なのであれば、朝飯も夕飯も家族揃って食べられるような雇用環境を整えるのが先決じゃないのか。それをほったらかしにして、雇用される側だけに「頑張って」のなんの強要するからみんなからこぞって文句を言われるのだ。
こんな大臣はやっぱりいらない。早く辞めてもらおう。
蛇足:なんとなぁく、愛国心の押し付けの構図と似たような考え方だなぁ。