タミフルと異常行動の因果関係を再調査

タミフル:厚労省、事故「関係は否定的」撤回 異常行動、再調査へ((MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年3月23日(金))

厚生労働省の辻哲夫・事務次官は22日の定例会見で、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と飛び降りなどの異常行動との因果関係について、従来の「否定的」との見解を事実上撤回し、「虚心に原因を調査したい」として、白紙に戻す考えを示した。転落と飛び降りが死亡事例以外にも15件あることが判明し、「重大な問題」との認識を新たにしたという。これまで異常行動の内容を十分に分析していなかったことになり、厚労省の認識不足に批判が集まりそうだ。
事務次官は10代へのタミフル処方を原則禁止したことに関し「(服用後の異常行動を)非常に重く受け止め、極めて重大な問題と考えている。可能な限りの措置を取りたい」と話した。さらに副作用情報として厚労省に報告がある中で、異常行動について徹底的に調査すると明言。有識者による審議会で検証する一方、情報を公開していく方針を明らかにした。
タミフル服用後の10代の死亡事例は04年以降で計5件。辻事務次官は「死亡事例は認識していた」としながらも、20日までに分かった死亡事例以外の15件(うち10代は11件)は「知らなかった」と釈明。分析していなかったことを明らかにした。同省の黒川達夫・大臣官房審議官も会見し、死亡事例以外を調査しなかった点について「他の薬の副作用情報が多かった」と弁明。問題はなかったとの立場を強調した。
厚労省によると、タミフルの副作用報告総数は01年の発売以降、1763件(20日現在)という。



なぜこうした対応が最初からきちっとできなかったのか、大いに疑問に思う。世間で大きく話題になったからと言って、すでに収拾したデータ・情報の中身が変わるわけではない。要はそれをどのように受け止め、分析し、対処するかという「姿勢」の問題だ。ことここに至ってようやく自分らの職責に(少なからず)目覚めたということか。遅きに失した、とはこのことで、これからやっと本格的な調査を始める(かもしれない)ことについては歓迎するが、迅速な対応を取らなかったことで負傷したり死亡したりした事例があるわけで、政府と厚労省には大きな責任がある。


タミフルと異常行動の関係、「否定的」を撤回 厚労省(asahi.com 2007年3月22日(木))

(前略)
詳しい分析をしなかったことには、医薬食品局の黒川達夫審議官は「副作用の情報は膨大なので、死亡例に重点を置いて調査していた」と説明している。



「膨大」との言い訳だが、発売は2001年で、副作用報告総数の約1800件は昨日今日集まったわけではなかろう。調査の方法はいくらでもあったはずだ。これを怠慢と言わずして何を言うのか。もし「死亡例だけ押さえておけばいいだろう」などという空気があったとしたら言語道断だ。


タミフルと異常行動 因果関係『否定的』を撤回(東京新聞 2003年3月23日(金))

(前略)
厚労省の対応について「薬害タミフル脳症被害者の会」の軒端(のきば)晴彦代表(49)は「輸入販売元が報告する資料を分析するのが国の仕事なのに、データを隠していたとしか思えない。国は把握しているデータをすべて公表して、現状がどうなっているか国民に示してほしい」と話した。



輸入販売元が報告する資料だけでなく大きな問題であれば自ら調査をするべきだが、やるべきはずの調査もしていなかった、データは持っていたのに「知らなかった」などというとんでもない状況では、遺族もいたたまれない。国民と医療現場の混乱を避けるためにも、迅速かつ真摯な調査と例外のない全面公開が必要だ。
さて、こうした動きの中、タミフル製造元が反論している。


製造元が、タミフルと異常行動の因果関係を否定する声明(asahi.com 2007年3月22日(木))

インフルエンザ治療薬「タミフル」の製造元である製薬大手ロシュ(本社スイス・バーゼル)は20日、「タミフル服用と神経精神症状との間の立証された因果関係はない」とする声明を発表した。
声明は、臨床研究の結果から小児インフルエンザでタミフル治療をした患者と治療を施さなかった患者の異常行動発生率に大きな差はないと主張。米国の健康保険記録ではタミフルを服用した患者の異常行動の発生率の方が低かったとしている。
日本の異常行動発生率が米国に比べて高いことは認めているが、「タミフルは世界4500万人の患者に利用され、症状緩和の効果が証明されている」と強調している。



あくまでも「立証された因果関係」がないだけであって、未知の因果関係については今後の精査を待つしかない。ただ単に「米国の記録では発生率が低い」というだけでは日本の状況への説明にもなってもいないし、説得力もない。
症状緩和の効果は確かにあるだろうけれど、本当に必要な薬なのか、必要な場合にだけ処方されているのか、そもそもインフルエンザは通常こんなに大騒ぎするほどの病気なのかも含め、もう一度基本に立ち返るべきではないだろうか。