「恥ずかしい国」へまた一歩

国民投票法案:衆院特委で可決 今国会成立ほぼ確実に(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年4月13日(金))

衆院憲法調査特別委員会は12日、国民投票法案の与党修正案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。民主党が提出した修正案は、与党案の採決に反対した野党が委員長席に詰め寄る混乱の中、賛成者が確認できないまま否決された。与党は13日の衆院本会議で与党案を可決し、16日から参院で審議を進める方針。同法案が今国会中に成立することはほぼ確実となった。
(中略)
委員会で野党側は「審議時間が不十分だ」などとして採決を行うことに反対したが、中山太郎委員長は討論の時間が終了したことを宣言し、採決に踏み切った。
(中略)
自民、公明両党の国対幹部は国会内で会談し、13日に衆院本会議で採決する方針を改めて確認。衆院通過後、16日に参院本会議と参院憲法調査特別委員会で与党修正案の趣旨説明を行い、審議入りさせる構えで、5月3日の憲法記念日までの成立を目指す。
(後略)



実に恥ずかしい事態になった。
国の根幹に関わる最重要な法案を、自由民主党公明党からなる与党と内閣は強行採決という許し難い暴挙によって今国会での成立をゴリ押ししている。コレのどこに「理想」やら「美しさ」があるというのだ。まったくもって呆れかえる。
すでに多く指摘されていることではあるだろうけれど、最低投票率もない有効投票に対する過半数、つまり、とにかく何人でもいいから賛成さえすれば憲法を変えてしまうことができることになるのではないか。そうであれば、投票率が低くてもかまわないなら、例えば反対票を投じようとする人の投票を阻止することによって賛成票の比率を上げることができるだろう。憲法第96条1項には次のように書いてある。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

極端なことを言えば、投票率10%の過半数は5%でも憲法の変更が可能、もっと言えば、1人だけが投票して賛成すればそれで好き放題、ということにならないか。憲法の変更を図る勢力は、まず投票への無関心を画策し、さらに組織票と反対勢力の投票妨害をすればよいことになる。
それにしても、メディアの反応の鈍さにも首を傾げざるを得ない。紙メディアでは確かにトップ扱いをしたかもしれない。しかし、東京新聞のサイトではトップからのリンクがあるが、主要紙のサイトでの扱いは驚くほど小さい。社説に至っては毎日が立てているだけだ。
ここに至る経過の報道も小さかったが、教基法の際と同じく、成立してしまってから「とんでもないことになった」と言い始めるのではないか。テレビで「有効投票総数の過半数と知らない人が実に多い」と言っていたけれど、それを伝えるべき自分らの責任はいったいどこに行ってしまったのか。


社説:国民投票法案 手続き法でこの有り様では(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年4月13日(金))

(前略)
最低投票率を定めるべきだとの意見もある。低投票率になった場合、有権者全体では決して多数とはいえない人たちの賛成で改憲されるのを懸念したものだ。私たちはまず投票率アップに力を注ぐべきだと考えるが、最低投票率を設けない点についても、もっときちんと理解を求める必要があろう。
参院審議も同じように進むのだろうか。だが、手続き法案でこの「政局優先」の有り様では、冷静な改憲論議などおよそ期待できないということになる。双方、もう少し頭を冷やしたらどうか。



【社説】投票法案可決 時期も運びもむちゃだ(東京新聞 TOKYO Web 2007年4月13日(金))

数にものをいわせて与党が動く。改憲を視野に入れる国民投票法案が衆院の委員会で可決、きょうの本会議採決をへて、与党は大型連休前の成立を目指す。強引な運びは憲法論議をややこしくする。
(中略)
各種の世論調査でも「急ぐ必要はない」とする穏当な意見が多数だというのに、安倍晋三首相が今国会絶対成立の方針を掲げ、改憲参院選で国民に訴えると力んだことで、政局の材料へ一気に浮上した。
(中略)
与党原案に民主の修正要求を相当程度取り入れた法案というが、その中身が国民にどれほど周知されているか、心もとない。そもそも、なぜ慌てるのか、の疑問に、納得のいく答えは示されていないのである。
公聴会をこなしたといっても、言いっ放し聞きっ放しでは理解が広まるはずもない。そんな段階での数にものをいわせる国会の運びが、多くの国民に受け入れられるとは思えない。
(中略)
安倍政権の強攻策を可能にしたのは衆院の三分の二を超える与党の議席数だ。しかし誤解しないでもらいたい。議席は一昨年の郵政選挙で得られたものだ。総選挙に打って出た当時の小泉純一郎首相は、この手続き法に興味も示していなかった。
(後略)



クローズアップ2007:国民投票法案、衆院委可決 7年間の協調、水泡(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年4月13日(金))
国民投票法案:憲法改正手続き 与党、修正案を可決 今国会成立へ−−衆院委混乱(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年4月13日(金))
国民投票法案採決、野党が反発 辻元氏「角も牙も出た」(asahi.com 2007年4月13日(金))
「むちゃくちゃ」 抗議の声相次ぐ 国民投票法案採決(asahi.com 2007年4月13日(金))
国民投票法案が今国会成立へ、衆院特別委で与党案可決(YOMIURI ON-LINE 2007年4月13日(金))
国民投票法案を可決 憲法特別委、きょう衆院通過(東京新聞 TOKYO Web 2007年4月13日(金))