埼玉県平和資料館の展示を巡る歴史修正の動き

上田清司埼玉県知事の県議会での発言慌てて開催した運営協議会で展示見直しが検討されてから一年あまり経って、どうやら見直しに向けた動きが活発化しそうな気配だ。


県、「従軍」削除を提案 平和資料館 慰安婦展示問題(Web埼玉 2007年7月24日(火))

上田清司知事が県議会で「慰安婦はいても従軍慰安婦はいない」として県平和資料館の展示見直しを求めた問題をめぐり、有識者らで構成する県平和資料館運営協議会(会長=森田武埼玉大学名誉教授)は二十三日、本年度初の会合を開いた。資料館側は昭和史年表に書かれている「従軍慰安婦」の表記について「従軍」を削除する見直し案を示した。
問題とされたのは、資料館の年表にある「一九九一年 従軍慰安婦問題など日本の戦争責任論議多発」という記述。同資料館は「戦時中の呼称は『慰安婦』であって『従軍慰安婦』の呼称は昭和四十三年ごろからの造語。どちらを使っても軍の強制連行の有無の違いを含まない」とし、「オリジナルな用語は『慰安婦』」と主張し、表記見直しを提案した。
これに対して委員からは「戦時中ではなく、一九九一年に日本の戦争責任論が盛んになったことを明記する項目。むしろ従軍慰安婦のままでいいのでは」などの意見が出た。
(後略)



見直しの対象にしようとしているのは「従軍慰安婦」だけではない。


年表から「従軍」削除を提案(日刊スポーツ 2007年7月23日(月))

埼玉県平和資料館(同県東松山市)は23日、館内に展示している年表の「従軍慰安婦」の表記から「従軍」を削除するなどの見直し案を、学識経験者らでつくる同館運営協議会に提案した。一部委員は反対したが、館に最終判断を委ねることで合意した。
館の案は年表の「従軍慰安婦問題などの日本の戦争責任論多発」から「従軍」を削除。また現在、紙で覆っている「南京大虐殺」を「南京事件南京虐殺」と変更する内容。
(後略)



1年前にも指摘したことだが、この「資料館」は県が運営するもので、展示内容は時の知事の持論でコロコロ変えていいものではない。しかも、上田知事の主張はあくまで持論の域を出ず、政府の見解にもそぐわないものだ。政府内や自民党内でこれらの文言について修正を加えようという動きがあるものの、首相が「当時の談話を踏襲する」と表明しており、立場が変わったわけではない。それをたかが「知事」という一個人の「持論」でもって「見直し」をするなどとんでもない。決して許されることではない。
昨年から運営協議会がどのように開催され、どのような議論が為されてきたのかについてを知ることはできない。報道を見る限り、一部の委員は反対したけれども、最終的な判断は平和資料館に委ねることで合意したとのことで、それでは何のための運営協議会なのか疑問を持たざるを得ない。ヘタをすると展示内容が見直されるという、見過ごせない事態のようだ。
上田知事は今年行われる知事選挙に出馬する。参院選では自民、公明、民主の4候補を応援するという無節操さだ。自らは「どこの推薦も要請しない」と標榜していて、自民党公明党がすでに支持を表明している。
盤石の体制を敷く上田氏だが、こんな勝手な歴史観を県民に押しつけるような知事はいらない。