「徴兵」詐欺

情報漏洩、国民監視、初代大臣の「しょうがない」辞任、人事のゴタゴタとロクでもない組織の代表格であるところの防衛省だが、またとんでもないことを考えているようだ。


防衛省、人材確保に民間からの「レンタル移籍制度」(読売新聞 2007年8月27日(月))

防衛省が、民間企業の若手社員を自衛隊に2〜3年の期限付きで入隊させる「レンタル移籍制度」の創設を検討している。
(中略)
自衛隊は精強な部隊を維持する上で若手隊員を確保する必要があるため、陸上自衛隊では2年、海上、航空各自衛隊では3年の期限で勤める「任期制自衛官」の制度を設けている。応募資格は18歳以上27歳未満。高校卒業者を中心に毎年1万人前後を採用し、数回の任期を経て、毎年5000〜6000人が退職する。
しかし、最近は、景気回復に伴って民間企業志向が強まっているほか、大学進学率も高まり、高卒者の確保が年々難しくなっている。また、少子化に伴い、募集対象年齢の人口が減り、人材確保は将来的にさらに厳しくなると予想される。
そこで同省が着目したのが、プロサッカーで普及しているレンタル移籍。民間企業の内定者や若手社員、他の公的機関の若手職員を2〜3年の任期制自衛官として受け入れ、任期満了後に元の職場に戻す仕組みを考えついた。身分は通常の自衛官と同じで、訓練内容も変わらない。入隊後は数か月間の基礎教育を経て全国の部隊に配属され、災害派遣など実際の現場での活動を想定している。
(中略)
同省は今後、民間との給与格差をどう解消するかなど、レンタル移籍制度の具体的な方法を検討する。ただ、体験入隊と異なり、入隊期間が2〜3年の長期に及ぶことや、自衛隊で学んだことが企業などに戻った時にどう生かせるかなど課題も多い。同省は「民間企業と人材確保で競合するのではなく、双方のニーズをうまく組み合わせた制度ができれば」と話している。



これは明らかに徴兵であって、憲法違反そのものだ。「レンタル移籍」などと称するのはまったくもって詐欺以外の何ものでもない。体験入隊はあくまでも「体験」であって、任期制の入隊とは異なるものだ。
こんな安易な記事に仕立てた読売新聞の良識も疑わざるを得ない。記事中には「背景には自衛隊の若手教育に対する企業側の期待もある」だの「この制度を後押ししそうなのが、企業で高まる「自衛隊人気」だのとあり、「団体生活を経験して社員の意識が向上」「自衛隊経験者は規律がしっかりしていてまじめ」などと、企業があたかも体験入隊を含め自衛隊入隊経験のある人材に魅力を感じているかのように書かれている。
「民間企業の内定者や若手社員、他の公的機関の若手職員」を対象とすることを検討しているところも大問題だ。まだ経験もなく、もしくは浅く社内に確たる人脈もない若者を、内定や職務命令を盾に有無を言わせず自衛隊という特殊組織に入隊させるというのであれば、人権蹂躙そのものだ。「本人の同意を得て」などということも考えそうだが、イヤと言えない状況では自由意志など確保できようもない。
また、「災害派遣など実際の現場での活動を想定」としか書いていないけれど、一事あればどのような処遇となるのかまったく不明だ。いざという時の人数を集めるのが目的なんだから、当然のように駆り出されることになるだろう。派遣された先の現場では、独自の判断で戦闘に巻き込まれるような事態も発生する懸念が払拭されないままになっている。
折しも大臣が替わり、カタチだけは新たな内閣となった。文民統制というものが形骸化しかねないような状況をきちんと本筋にたち戻していただきたい。
それすらできないようでは、実に存在意義も何もない政府である。即刻解散するしかない。