奥平康弘「憲法を生きる」読了

憲法を生きる

憲法を生きる

図書館から。
平氏のことはよく知らなかったけれど、この本ははしがきに「私(奥平康弘)を切り口にして、日本国憲法施行六○年がもつ意味を考えてみようではないかと意図して作られた」とあって、奥平氏のことも憲法に関することもとてもわかりやすく読みやすく作られていてよかった。
特に次の部分。

なぜ九条が大切なのか
(略)
中平さんはこんな話をしました。戦争中、何となしに、それが一番都合がいいよというので、海軍経理学校に行った。ものすごく矛盾は感じたけど、それが人生だと思って行った。でも、この自分の行いが、九条の敵だということが分かり始めたっていうのね。こういうときに一歩踏みとどまらせるのが九条だとね。これこそ九条の効果だと思う。そういうわけで、今でも九条を自分の戒めと思ってますと、おっしゃってました。
樋口陽一さんも、「自由の前提として九条があった」というけど、ぼくもそう思う。徹底して、徹底して、そう思う。それは、ぼくの個人的な体験であり、それを後代の人たちに伝えることは、なかんずく感得させることはすごく難しいことだと思うけれど、ぼくはそこから離れることはできない。九条が変えられてしまったら、他のところだって無事ではないと思うのも、この経験があるからでしょう。
長いものに巻かれろというのは、どこの社会でもそうなのかもしれないけど、戦前の日本の場合、長いものへの巻かれ方がね、あまりに定型的であり続けた。そして、「長いものに巻かれてちゃいかんよ」と教訓をたれたのは、日本国憲法ではないかと思ったりするわけですよ。現代でも、「まぁいいよ、一番気楽だよ」という格好で、長いものに巻かれてしまう人たちがいるけれど、「ちょっと待って、ちょっと待って! そうはいかんよ」という感じだね。

P207-208



何を拠り所にするのかというのはとても大切なこと。“ヒゲの隊長”にもお読みいただきたいものだ。