ヒゲの隊長が釈明?

ほうぼうで取り上げられ、ここでも以前記事にした「駆け付け警護を行うつもりだった」と発言したと言われている“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員だが、昨日の毎日新聞夕刊の「特集ワイド」で、釈明じみたことを言っている。


自衛隊の武器使用、どこまで ヒゲの隊長・佐藤正久さんに聞く(毎日新聞 2007年9月5日(水))

(前略)
佐藤さんの真意はどこにあるのか。東京・永田町の議員会館を訪ねた。表情は少し暗く、「まいった」という顔だった。
「実際、テレビ取材を受けたのは、あの安保法制懇の2、3日前で、そういうやりとりの中で使われるとは思ってなかったんです。(報道では安保法制懇で話し合う)集団的自衛権の話になっていますが、私は『駆け付け警護』を含め、一般論として武器使用の話をしただけなんです。自衛隊の武器使用はいろいろな議論を経て、今では指揮官がそれを命令できるようになった。そして、『自己または自己の管理下にある人間を守るため』の正当防衛、または緊急避難の範囲なら、武器が使えることになっています」
これでもまだ不十分だと、佐藤さんは感じてきた。
「現状では、オランダ軍どころか、自衛隊の仲間や邦人が拉致されたとしても、我々は武器を使えないんです。サマワで、報道陣やNGO(非政府組織)の人が襲われても、何もできない」
要は一般法の中で、隊員にもう少し自由に武器を使わせてほしいということか。
しかし、今の自衛隊が海外での活動で武器を自由に使えないのは、国民のコンセンサスの表れでもある。現にイラクで日本人青年が誘拐され、殺された時、自衛隊に対して「武器を使ってでも助けろ」という声は国内ではほとんど上がらなかった。
なのになぜ、今ごろになって「オランダ軍の警護」という仮定の話を持ち出したのか。しかも、なぜ「喜んで裁かれてやろう」などと、国民の理解が得にくくなる言い方をしたのか。
佐藤さんによると「これは明らかな誤解」。二つの別な話が一つにまとめられてしまったためだという。「裁かれるというのは司法判断のこと。我々がもし武器を使ったら、最終的には日本の司法が(その合法、違法性を)判断します」
佐藤さんはそれを「裁き」と呼んだに過ぎず、違法行為もいとわないという考えではない、と語る。「イラクに限らず、カンボジアでもどこでも、武器を使えばそれが正当防衛だったかどうかを裁かれることになる。それを多くの国民はわかってくれていないんです」
(中略)
インタビューの中で、佐藤さんは本音をはっきりとは語らなかったが、言葉の裏を類推すると、「それだけの装備があるのだから、それなりのことをやらせてほしい」−−。武器をまともに使えないのなら、むやみに外に出すな、という思いだろう。
(後略)

「多くの国民はわかってくれていないんです」というのはどういう意味で言っているのかいまいちはっきりしないのだが、もし「何もできないのだから外に出さないでほしかった」という意味で言ったのなら、それは大きな勘違いだろう。誰が積極的に派遣を実施したがったか。多くの時間が議論に費やされたと胸を張って言えるような状況でもなかったし、多くの人々が反対運動も行ったはずだ。アフガニスタンカンボジアイラクも、国民の総意で海外派遣を実施したわけではない。
「外に出した以上、しかも優秀な人材と武器を持っているのだから、きちんと使わせてほしい」という意味で言ったのなら、それはまた立場をわきまえない妄言と言わざるを得ない。少なくとも、戦闘を前提にしての派遣ではなかったはずだ。勝手に他国と戦争を始めてもらっては困る。
現場で多くの矛盾を抱えなければならないのなら、最初から派遣しないのが一番だ。