参拝したいが為の憲法変更?

自民党憲法改正案で政教分離見直し 伝統行事対象外に(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

自民党憲法調査会保岡興治会長)は29日、今国会中にまとめる「党憲法改正草案の素案」に、特定宗教の布教・宣伝を目的にしない宗教的行事の場合は国が関与できるよう、政教分離を定めた憲法20条3項の改正案を盛り込む方針を固めた。伝統的・儀礼的な行事であれば政教分離の対象外との考え方に基づくもので、首相の靖国神社参拝に伴う憲法問題をクリアするのが最大の狙いだ。戦前の「国家神道」への反省から生まれた政教分離をなし崩しにするとの批判を生むとみられる。

現行憲法の20条3項は「国及びその機関は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定。財政面でも政教分離を徹底するため、同89条は「公金その他の公の財産」を宗教組織・団体に支出することを禁じている。

自民党内には「首相の靖国参拝や、地鎮祭などへの公金支出は、憲法が禁じる『宗教的活動』にはあたらない」との考え方が根強くある。同調査会の議論でも「戦没者の追悼を目的とする参拝が政教一致のはずがない」「日本の伝統・文化に関する行為を『宗教』の名のもとにひとくくりにしていいのか」といった意見が続出していた。

このため、同調査会は20条3項を「国及びその機関は特定宗教の布教・宣伝を目的とした宗教的活動をしてはならない」と改めるとともに、89条にある「宗教団体への公金支出制限」の規定を削除することを、改憲草案の素案に盛り込むことにした。同調査会幹部は「これで靖国問題にけりをつけたい」と語っているが、「特定宗教の布教・宣伝目的」であるかどうかをどこで線引きするかという問題は未解決になっている。

自民党は結党50周年に当たる来年11月の党大会で憲法改正草案を公表する方針で、同調査会がまとめる素案はそのたたき台となる。

◆ことば◆政教分離

憲法20条は、1項で「信教の自由」を保障する一方、3項では、戦前・戦中の政治権力が国家神道と深く結びついたとの反省に基づき、国や地方自治体による宗教的活動を禁じている。これを「政教分離の原則」と呼ぶ。77年の津地鎮祭訴訟最高裁判決は「目的に宗教的意義があり、効果が宗教への援助や圧迫となるような行為」を宗教的活動とする解釈を示し、以後の政教分離訴訟での判断基準となっている。