米軍のオリンピックは命がけらしい

「被害食い止め功績」 米軍ヘリ墜落で在日米軍司令官(asahi.com

沖縄県宜野湾市の米軍ヘリ事故をめぐり、26日に日本記者クラブ(東京)で記者会見した在日米軍のワスコー司令官は、墜落時のヘリ乗員の操縦について「被害を最小限に食い止めるために、とても功績があった」とたたえた。米軍の安全に対する意識を、アテネ五輪で金メダルを取った男子体操の日本チームに例え、「心意気は同じだ」とも語った。
墜落原因を問われたワスコー司令官は「メカニックなことが原因」とした上で、事故の目撃者から届いた電子メールをもとに「乗員3人はコントロール不能になった機体を、精いっぱい人のいない所に持っていった。とても素晴らしい功績があった」と話した。
また、司令官は「安全に対する責任を深く実感している」としつつ、日本の男子体操チームを引き合いに「普通に演技すれば金メダルをとれる状況で、最後の選手は無難に終わらせてもよかったが、とても難しい技を選んで演技した。その心意気は在日米軍の隊員と同じだ。日本国民のよき隣人であるべく日々努力している」と話した。
米軍の対応への沖縄県民の反発については「真摯(しんし)に受け止めている」と述べるにとどまった。

乗員対応「素晴らしい」 ワスコー司令官、事故で認識(琉球新報

トーマス・ワスコー在日米軍司令官は26日、日本記者クラブで講演し、記者との質疑で米軍ヘリ沖国大墜落事故について「乗員は墜落すると分かった段階で、被害を最小限にしようと努力した。3人の乗員が制御不能な状況下で、人のいないところに(ヘリを)もっていったという素晴らしい功績があったことを申し上げたい」と述べ、住民に負傷者が出なかったことは乗員の功績だったとの認識を示した。これに対して県内からは「一歩間違えれば人が死んだかもしれない事態をなぜ褒めるのか」などと反発の声が出ている。
普天間飛行場の移設問題について嘉手納飛行場への統合案について「一つの選択肢だ。(日米間で)実際に協議したことがある」と述べ、在日米軍再編の日米協議で議題に上ったことを説明した。
ワスコー司令官は墜落直後に海兵隊員が駆けつけたことについて「たまたま海兵隊員が(飛行場内の)野外で通常訓練をしていた際、上空を見るとヘリが通常とは違うおかしな飛行をしていることが分かり、(兵員が)すぐにフェンスを乗り越えて事故現場にたどり着いた」と述べ、墜落直前に機体の異常な飛行に気付いた兵士が現場に駆けつけたことを説明した。
また事故同型機の検査と同時期にラムズフェルド米国防長官から同型機6機をイラクに派遣するよう命令があったことを明かし「6機をさらに点検し、安全飛行ができることを確認した。6機はイラクで実際に戦闘に入る。安全でなければ飛ばすことはしない」と述べ、十分な安全点検後の飛行だったことを強調した。
また事故機を含むCH53D輸送ヘリ12機は、ハワイのカネオヘベイ基地から岩国基地にいったん配備され、その後に普天間飛行場に来ていたことを示し「普天間に残る5機は徹底した整備後に岩国基地に返すことになる」と述べた。
事故機が劣化ウラン弾を搭載していたのではとの指摘があることについては「決してそんなことはない。積んでいないし、海に捨てるようなこともしていない」と否定した。


◇嘉手納基地統合案に波紋
在日米軍司令官が26日、米軍普天間飛行場の嘉手納基地への統合案を「一つの選択肢」と言及。地元、沖縄県では再び波紋が広がった。
嘉手納基地は沖縄市嘉手納町北谷町にまたがる。沖縄市の仲宗根正和市長は「もし再び具体化されれば、地元3市町で連絡をとって速やかに行動し、強力な体制で阻止していく」と警戒する。嘉手納統合案は日米特別行動委員会でも議論された経緯があり「浮かんでは消えていく案の一つであってほしい」と切実な気持ちを語った。
稲嶺恵一知事は米軍ヘリ墜落事故後も、普天間飛行場の名護市沖への移設を「着実に進めていきたい」と、従来の方針を堅持している。
下地幹郎衆院議員は「知事はそろそろ、嘉手納統合案の勉強をする時期にきている」と語る。


◇「とんでもない話だ」 憤りの声相次ぐ
米軍ヘリ墜落事故で「素晴らしい功績だ」と乗員を称賛したワスコー司令官の発言について26日、宜野湾市民や沖国大関係者からは憤りの声が相次いだ。
伊波洋一宜野湾市長は「とんでもない話だ。県民の声は何も届いていない。民間人に負傷者がいないのは奇跡であって、人為的ではない。在日司令官は即、更迭すべきだ」と、事実認識の違いに強い憤りを示した。さらに「小泉総理がもたもたしているから米国がごう慢な対応を取る」と、日本政府の抗議の弱さにも原因があると指摘した。
沖国大の黒島安武事務局長は「言語道断。街の上空を飛んでいるという認識はないのか」と指摘。「大学が広くて人が少ないから、ここを選んで墜落したと言うのか。そばには道路があり、ガソリンスタンドもある。1号館には職員が大勢いた。とんでもない」とした。
比嘉忠信県基地対策室長は「今回の事故は一歩間違えれば大惨事になりかねず、地域住民や県民は強い衝撃を受けた。前日に知事が要請したばかりの中で、こうした発言は配慮がなく理解できない」と不快感を示した。
同大商経学部4年生の宮里千尋さんは「いいように解釈しているが、事故はメンテナンスをおろそかにしているだけの話。愛国心をあおる米国らしい解釈だ」と話した。
墜落現場の正面に住み、壁やガラスなどに大きな被害を受けた仲村健一さんは「ばかなことを言うな。不愉快でたまらない。一歩間違えれば人を殺したかもしれない事態をなぜ褒められるのか」と怒りをあらわにした。
後部ローターが近くに落下した我如古公民館の島袋清自治会長は「大学が幸いにも夏休みだっただけで、大惨事に変わりはない。公民館でも子どもたちがたくさん遊んでいる最中を通過し、部品を落とした。被害を知らずに何を言うのかとあきれる」と話した。
ヘリ基地反対協議会の大西輝雄代表委員は「学校や公園は彼らの訓練の場だと告白したようなもの。今後もある、との宣告だ。県民を愚弄(ぐろう)している」と憤る。県民感情を逆なでする発言に対しては「彼は素直なだけ。それが軍人の本質だ」と指摘した。


◇抗議へ400人異例の結集 米軍ヘリ墜落緊急国会集会
【東京】米軍ヘリ沖国大墜落事故に抗議する緊急国会集会が26日午後、衆院第二議員会館であり、野党国会議員29人を含む約400人が詰め掛けた。国会でのこの種の集会としては異例の規模で、事故を契機に米軍基地問題が注目されつつあることを印象付けた。集会では「県民の人命軽視だ」「米軍のやり方は治外法権だ。日本は主権国家か」と、政府への憤りの声が相次いだ。集会では(1)民間地上空での米軍機飛行即時停止(2)普天間基地閉鎖(3)辺野古沖移設中止と無条件撤去(4)日米地位協定の全面改定―などを求める緊急アピールを採択、引き続き問題解決に取り組むと誓った。
集会は県選出・出身野党国会議員6氏が呼び掛けた。参加者は予定の会場に入りきれず、急きょこしらえた別室からもあふれる状態だった。
冒頭、金田誠一衆院議員(民主)が「事故は大変残念で、皆さんに申し訳なく、責任を持つ1人としてざんきに堪えない」とあいさつ。次いで沖国大関係者が撮影した事故直後の映像を紹介。アパートが立ち並ぶ住宅地の真ん中で噴煙が上がる様子が映し出されると、参加者は食い入るように見つめた。「人命の犠牲がなかったのは奇跡中の奇跡」との照屋寛徳氏の説明に、うなずく人もいた。
引き続きあいさつした赤嶺政賢大田昌秀東門美津子喜納昌吉糸数慶子の5氏は「沖縄の問題でなく、自分の命の問題と受け止めてほしい」「過去10年の米軍機の事故45件中、原因不明は35件もある。政府の言う“再発防止”はうそだ」などと訴えた。
大城紀夫宜野湾市職労委員長が「政府は、米軍の訓練に湯水のごとく予算を使っている。国家予算が危機というなら、まず米軍予算を削ればいい」と語ると、会場から「そうだ」との声が上がった。次いで「8万8000人の市民の命を守る取り組みに支援を」「国家主権と大学の自治が侵害される異常な事態だ」と訴える伊波洋一宜野湾市長と渡久地朝明沖国大学長のメッセージが読み上げられると、ひときわ大きな拍手が起こった。
参加した川内博史衆院議員(民主)は「これほどたくさん集まるとは予想もしなかった。沖縄の皆さんだけでなく、国民的怒りの広がりを感じた。採択したアピールの実現にしっかり行動しなければと思った」と話した。

米軍、星条旗自画自賛「素晴らしい操縦」(琉球新報

米軍準機関紙「星条旗」は27日、米軍ヘリ沖国大墜落事故直後、現場に早く駆けつけた海兵隊員を取材した記事を掲載し、市民への被害を防いだパイロットを「素晴らしい操縦をした」とたたえるとともに、現場を封鎖したのは、たまたま早く駆けつけた海兵隊部隊の判断だったことなど、事故直後の模様を詳しく報じた。
同紙によると、13日午後2時、普天間基地内のスティンガー地対空ミサイル中隊が隊列を組んでいた際、上空のヘリの後部回転翼が落下するのに気付き、上官が現場に行くように命じ、約100人が約500メートル先の現場に走った。有刺鉄線をよじ登って越えたため、6人がけがをした。
最初に到着した兵士が、コックピットに挟まれていた乗組員を救出。約10歩離れた時、機体が爆発し、もう一歩で生命が危うかったという。
同部隊の軍曹が、市民が集まりだし、燃え上がる機体に近付かないようにするため、現場封鎖と車両の通行制限を命じた。警察権がない部隊が独自の判断でキャンパスの中で非常線を敷いたわけで、緊急対応の在り方に疑問を生じそうだ。
海兵隊員たちは「素晴らしい操縦をした」と民間人のけが人を避けた乗組員をたたえている。


◇「ビルにちょっと傷」 米大使館背景説明
【東京】駐日米大使館は27日午前、報道陣を招いて米軍ヘリ沖国大墜落事故に関する背景説明を行った。説明した在沖第3海兵遠征軍の担当官は「県民に大きな心配をかけたのは申し訳ない」と繰り返したが、事故については「大学の敷地に緊急着陸した」「不時着した」「大学の施設に触ってしまった」「ビルがちょっと傷を受けてしまったが、中の人たちを安全なところへ避難させた」と説明した。実態と大きくかけ離れた認識は、県民の反発をさらに招きそうだ。
事故原因について同担当官は「後部回転翼の固定器具が外れたが、物理的な故障か、部品取り付けの不具合(によるもの)か、まだ分かっていない」と述べた。その一方、「原因は事故機特有のもの」と再三強調し、事故機特有と断定する根拠を問う報道陣の質問には「事故の流れ、墜落の状況を見て調査官が結論付けた」と繰り返すばかりで、明確な返答はなかった。
事故前後の流れについては(1)当日の午後2時17分に管制塔が緊急信号を受信(2)2時18分に事故機が“緊急着陸”(3)2時19分、別の航空機が管制塔へ火災を報告―と説明した。同型機のCH53Dは一個編隊が日本にあり、岩国基地所属で現在は普天間基地に配備されていると明らかにした。22日の飛行再開で飛び立った6機を除く5機の同型機については近く岩国基地に戻すことを示唆した。
日本の警察当局との協力関係については「現場で一緒に調整した行動を取った」と表現し、県警の捜査を拒否した件については「地位協定に準拠した」と述べるにとどまった。日本政府の要請を無視し、飛行再開を強行したことについては「対テロ作戦の使命を帯びていたから」と答えるだけだった。