逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第13条> 『加憲』議論のカギ

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

「国民の権利義務」に関する条文として、法の下の平等、思想良心の自由、学問の自由など、さまざまな人権規定が並んでいる。その大きなよりどころとなってきたのが、一三条の「幸福追求権」だ。
自民党では現在、「知る権利」「プライバシーの権利」「犯罪被害者の権利」「環境権」「外国人の権利」など、新しい人権を加憲対象にするかどうかの議論が続いているが、これらの多くが幸福追求権に行き着く。
ただ、幸福追求権を根拠にして、新しい人権を何もかも憲法に書き込もうとすると、「人権のインフレ化」を招き、結果として他人の人権を制限してしまう恐れも指摘されている。
このため、衆院憲法調査会の議論では「新しい人権が一三条に含まれるとの考えには限界があるから、加えるべきだ」という意見と、「プライバシー権、環境権などは一三条を根拠に認めることができるから、新たに規定する必要はない」という考えに割れている。
この条で書かれている「個人の尊重」のさらに上の概念として、「生命の尊厳」を憲法に明記すべきだという意見もある。
生命の尊厳や生命倫理にまで議論が及ぶと、臓器移植、ヒトゲノム研究、クローン研究など、命に関係する先端技術にもこの条はかかわってくる。二〇〇〇年に制定されたヒトクローン技術等規制法は、一三条の考え方の延長線上にある法律といえる。