元院長の医師免許取り消し 富士見産婦人科事件で厚労省(asahi.com)

元院長の医師免許取り消し 富士見産婦人科事件で厚労省asahi.com

厚生労働省は2日、25年前に不必要な子宮摘出手術を行うなどの「乱診乱療」で問題となった富士見産婦人科病院(埼玉県所沢市、87年破産)をめぐり、北野千賀子元院長(78)を医師免許取り消しとし、元勤務医3人を2年から半年の医業停止とする処分を決めた。これまでは刑事裁判の結果によって判断してきたが、初めて民事訴訟に基づいて踏み切った。医療ミスでの処分も医業停止にとどまっており、診療そのものを問題にして、免許を取り消すのも初めてという。
医業停止の3人は、元勤務医の青井保男医師(76)=2年=、佐々木京子医師(66)=同=、楢林重樹医師(80)=6カ月。いずれも手術する必要のない子宮などを摘出したと認定された。処分は16日から。
北野元院長は所沢市内で診療所を経営し、佐々木医師は、東北地方で診療行為をしている。残りの2人は、現在、医療行為に携わっていないという。処分が諮問されていた別の医師は、戒告となった。
処分の決定に先だち、厚労相から諮問されていた「医道審議会医道分科会」は、処分案を検討。行政処分には時効がないことや、子宮や卵巣という重要な臓器の摘出手術が行われ、医療に対する信頼が大きく失われたことを踏まえれば「厳重な処分を行うべきだ」と判断した。厚労相はこの答申を受け即日、処分を決めた。
これまで医師の処分については、業務上過失致死傷事件などの刑事裁判で認定された事実に基づいて行われてきた。
しかし、医療過誤を繰り返す「リピーター医師」の存在が指摘され、患者取り違えなどの重大な事故が相次ぐなど、医療不信が高まった。そのため、02年12月には刑事事件にならなくても、明白な医療過誤があれば処分対象とする方針に転じ、04年3月には民事訴訟の結果を判断材料にすることにした。
同病院事件の被害者が、不正な医療行為を受けたとして損害賠償を求めた民事訴訟が昨年7月に確定したのを機に、処分を検討。今回のケースは、方針変更後の初適用となった。