逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第22条> 職業にも一定の規制

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。

この条が定める自由と、二九条が定める財産権は「経済的自由権」と総称され、信教の自由、表現の自由などの「精神的自由権」と区別される。
転居、職業選択の自由というと、当然の権利のような印象を受けるが、明治維新前の封建時代は自由な引っ越しは難しかったし、「士農工商」の身分制度によって職業の選択もままならなかった。
職業選択の自由と、その仕事を行う営業の自由は、厳密には違う。しかし、好きな職業を選んでも、その仕事ができなければ意味がないため、一般的には職業選択の自由の中に営業の自由も含まれると考えられている。
中曽根試案では、営業の自由も明記した。
職業選択の自由には、「公共の福祉に反しない限り」という前提がつく。
例えば、医師は国から免許を与えられないと開業できない。勝手に医師を名乗る人が間違った手術や治療をすれば、患者が損害を受け、「公共の福祉」に反するからだ。
今、与党は、悪質な探偵、興信所をめぐるトラブルが急増しているのを重く見て、開業の届け出を義務付けるなどの法整備を進めている。これも、職業選択の自由を「公共の福祉」で縛ろうという発想だ。
二項の「外国に移住する自由」には、海外旅行の自由も含まれているというのが多数説。ただし、旅券法一三条は、国の利益、公安を損なう恐れがあるときは、旅券発行を拒否できると規定している。
最高裁は同法一三条は合憲との判断を示しているが、政府がこの規定を適用する場合は、国の利益、公安を害する恐れを厳格に立証する必要があるとの説が有力だ。