逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第24条> 『家族』めぐる意見多様化

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚ならびに婚姻および家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

結婚や家庭のあり方を定めた二四条。草案を書いたのは、オーストリア生まれで米国在住の女性ベアテ・シロタ・ゴードンさんだ。子どものころに約十年間を日本で過ごしたゴードンさんは、二十二歳になった一九四五年、連合国軍総司令部(GHQ)民政局のスタッフとして再来日した。
親が娘の嫁ぎ先を決めたり、長男しか遺産が相続されないことなど、日本の慣習をよく知っていたゴードンさんは、新しい憲法で日本の女性の地位を向上させようと尽力した。草案段階では、今の条文よりも、さらに女性を守ろうという意識が徹底していて、「親の強制でなく」「男性の支配ではなく」という表現もあった。
その二四条は今、「個人主義が強すぎる」と、批判にさらされている。
衆院憲法調査会では、自民党から「家庭の規定を設けるべきだ」(森岡正宏氏)などという主張が出た。
民主党鳩山由紀夫元代表の試案も、「家族は社会の基礎的単位として尊重されなければならない」と明記した。ただ、同じ民主党内でも「個人主義は利己主義ではない。否定的に見る必要はない」(山花郁夫氏)と、今の条文を支持する声も根強い。
この論議をゴードンさんはどう受け止めているだろうか。二〇〇〇年、参院憲法調査会参考人として招かれた時、「いい憲法なら守るべきではないか」と訴えた。「二四条の母」らしいひと言だ。
ちなみに、二四条に基づいた「(結婚時に)夫または妻の氏を称する」との民法規定に関し、国会の憲法調査会では夫婦別姓をめぐる民法改正問題も議論されている。