自民改憲試案:政教分離緩和の方針 一定の宗教活動容認(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

自民改憲試案:政教分離緩和の方針 一定の宗教活動容認(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

自民党憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は6日、4月にまとめる新憲法草案の試案で、現行憲法が定める政教分離を緩和し、社会的儀礼や習俗的行事の範囲であれば国や自治体による一定の宗教活動を認める方針を固めた。特定の宗教に偏らない「一般的な宗教教育」も容認する方向だ。首相の靖国神社参拝や公金からの玉ぐし料支出を新憲法で担保するのが狙い。だが、戦前の「国家神道」の反省に基づく政教分離の線引きが不透明になる可能性があり、中国など近隣諸国や野党から批判が出そうだ。
現行憲法20条3項は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定。これに対して起草委の「国民の権利と義務に関する小委員会」(船田元委員長)は、政教分離原則を守るとしながらも「国や自治体の宗教的活動は、特定の宗教を援助する目的や効果を持たず、社会儀礼や習俗行事の範囲内であれば許容される」との認識で一致した。認められる宗教活動としては、地鎮祭への関与、玉ぐし料支出、殉職した公務員の葬儀への支出などが挙がっている。起草委は首相の靖国参拝をはじめ、これらを「社会儀礼や習俗行事」と位置づける考えだ。
小委員会の議論では「日本の自然宗教は一種の文化になっている。素朴な伝統行事まで『宗教』と言うのはおかしい」などの意見が続出。党憲法調査会が昨年6月にまとめた論点整理でも見直すべき事項として政教分離規定を挙げていた。
また、宗教教育については党内に「宗教は情操教育などに役立ち、すべてを排除すべきではない」などの意見が強く、「一般的な宗教に関する教育」を認める方針。
しかし、戦前の反省から政治と宗教が再接近することに野党の反発は必至。公明党も首相の靖国参拝に反対しており、他党との調整は難航しそうだ。

自民改憲試案:「参拝は伝統」意見を反映 政教分離緩和(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

自民党憲法起草委員会が、新憲法草案試案で現行憲法政教分離規定を緩和する方針を固めたのは、首相の靖国神社参拝など神式行事が日本の伝統だとする党内世論を反映させたものだ。改憲論議を機に、党内は「日本らしさの復活」のための宗教容認論も強まっているが、なにをもって伝統ととらえるのかがあいまいで、政治による拡大解釈の恐れもはらんでいる。
政教分離をめぐる訴訟での判断基準には、77年の津地鎮祭訴訟最高裁判決で示された「目的・効果基準」がある。目的に宗教的意義があり、効果が宗教への援助や圧迫となる行為を宗教的活動と位置づけたものだ。
政府もこの基準を踏まえ、85年の中曽根康弘首相(当時)の靖国神社公式参拝官房長官談話を発表。「戦没者の追悼と世界平和への決意」を目的に、「靖国神社を援助しないよう十分配慮する」ことから「社会通念上、宗教的活動に該当しない」との見解を示している。
しかし、86年からは中国などに配慮して公式での参拝は休止状態。小泉純一郎首相も就任以来、公私の区別を明確にせず参拝を続けている。一方、公金からの玉ぐし料支出などを含め、政教分離をめぐる訴訟は後を絶たず、04年には目的・効果基準に照らし小泉首相靖国参拝違憲だとした判決(福岡地裁)も出た。
こうした状況に、自民党内は「敗戦によってすべてリセットされ、日本の伝統的行事まで政教分離というのはおかしい」との不満が強い。改憲を機に「社会的儀礼や習俗的行事」を憲法上の宗教的活動から除外し、一連の憲法問題にけりをつけたいとの考えだ。しかし、社会的儀礼と宗教的活動をどう線引きするのかは依然として不透明。厳密な現行の政教分離規定を崩せば解釈の幅がより大きくなり、政治による恣意(しい)的な解釈の危険もはらむ。