逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第33条> 逮捕には令状が不可欠

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

漫画「天才バカボン」に出てくるお巡りさんは、怒るとピストルを撃ちながら「逮捕だ! 逮捕だ!」と叫ぶ。しかし、このお巡りさんが、本当に市民を逮捕したら憲法違反になる。
三三条は、現行犯を除いて「権限を有する司法官憲」である裁判官が出した令状を示さなければ、人を逮捕することはできないと定めている。
お巡りさんは、どう考えても令状は持っていない。しかも、逮捕しようとする相手は、現行犯で捕まえるような罪を犯したようには見えない。だから、憲法違反なのだ。
刑事訴訟法では、逮捕するには(1)容疑者が罪を犯したと疑える相当な理由がある(2)容疑者が逃げたり、証拠隠滅を謀ったりする恐れがある−の要件を満たさなければならないとされている。お巡りさんは、刑訴法もよく知らないようだ。
ちなみにバカボンのパパの「死刑なのだ」は、裁判請求権を認めた三二条違反になる。
令状なしの逮捕を認めれば、見込み捜査で片っ端から関係者を捕まえて自白を迫るとか、騒ぎを起こしそうな人間を前もって拘束することもできてしまう。政治弾圧には、もってこいの手段だ。
現行犯以外に、もう一つ令状のない段階での逮捕がある。「緊急逮捕」と呼ばれるもので、重大な罪を犯したと疑える「十分な」理由があり、令状を入手する時間がない時に認められる。この場合、逮捕後、速やかに令状を求めることになっている。
ただ、緊急逮捕は現行犯でもなく、令状もない。このため、三三条を厳密に解釈して「緊急逮捕違憲」と主張する学者もいる。