逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第50条> 例外ある不逮捕特権

両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会議員には、会期中に逮捕されない「不逮捕特権」が与えられている。司法や行政の不当な干渉によって、国会活動に支障が生じないようにするためだ。
先月十日、自民党中西一善衆院議員=同十五日辞職=が、強制わいせつの現行犯で逮捕されるという前代未聞の事件が起きた。もちろん、国会開会中の出来事だ。「不逮捕特権」があったはずの中西前議員は、なぜ逮捕されたのか。
この条文の「法律の定める場合」という規定に基づき、国会法は三三条で、会期中の国会議員逮捕の条件を(1)院外(国会外)の現行犯(2)議院の許諾があった場合−としている。中西前議員の事件は東京都内の路上で起きたので、(1)のケースが適用された。
(2)のように、逮捕を認める許諾の議決を経て逮捕された例は戦後、十六件十五人あった。多くは「政治とカネ」にかかわる事件に関与した疑いがかけられた議員が対象となっている。最近では二〇〇三年、衆院自民党坂井隆憲衆院議員=当時=の政治資金規正法違反容疑による逮捕許諾を議決。同氏は逮捕された。
国会法三四条の三は、会期前に逮捕された議員を釈放する場合の手続きとして、議員二十人以上の連名で要求書を議長に提出し、議決することを定めている。
国会議員の不逮捕特権は、旧憲法でも認められていた。ただ、革命・クーデターを図る内乱罪、外国の侵略を助ける外患罪の場合には、現行犯でなくても逮捕できた。議員の政治活動が不当に制約される余地があったことになる。
ちなみに、国会外の現行犯は不逮捕特権の対象外だが、国会内での現行犯はどうなるのか。衆参両院の規則によると、衛視が現行犯の議員を拘束した後、警察に引き渡すかどうかは、議長が判断を下すことになっている。