逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第51条> 無制限か議員発言の自由

両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問はれない。

民主党議員が二〇〇四年三月の衆院総務委員会で、インターネット接続サービス「ヤフーBB」の契約者情報が流出した事件をめぐり、逮捕者と創価学会の関係を取り上げた。創価学会を支持母体とする公明党神崎武法代表は記者会見で抗議するとともに、機関紙「公明新聞」が民主党批判のキャンペーンを展開する騒ぎに発展した。
しかし、公明党創価学会が、この民主党議員を名誉棄損で訴えたり、損害賠償を求めたりすることはできない。議員の免責特権を定めた五一条があるからだ。
議員が自由に意見を表明したり、投票することは、議会制度にとっては不可欠だ。表決とは、議案に対する可否の意思表明のこと。議員は、自身の投票行動について責任を問われることはない。
ただ、議員の国会での言動は、全く制約がないというわけではない。院の権威をけがす言動には、それぞれの院から懲罰を科せられることがある。党議拘束のかかった重要法案の採決で「造反」すれば、党から処分を受けることもある。
また、無責任な言動は、訴えられなくても政治的責任は問われる。その場合、投票によって、有権者から手痛い仕打ちを受けることになる。
今のところ、この五一条を見直そうという意見は、国会内の議論ではない。しかし、国会審議の内容がインターネットなどを通じて瞬時に家庭にも届く現在、名誉棄損やプライバシー侵害の可能性は飛躍的に高まっている。公明党議員はヤフーBB事件に先立つ〇二年二月の衆院予算委員会で、「議員が週刊誌を引用する形で質問し、後日その記事が事実無根であったような場合、被害者は国会でも名誉を棄損される」と指摘した。
議員の免責特権は十分担保されなければならないが、一般国民が国会審議でプライバシーや名誉を傷つけられた場合、国会として何らかの回復措置を検討する必要はあるだろう。