逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第52条> 会期制国会の長所と短所

国会の常会は、毎年一回これを召集する。

国会は、年中開いているわけではない。「常会」、いわゆる通常国会は、年に一回召集されることがこの条で規定されており、「会期」は国会法で百五十日と定められている。
通常国会は、以前は十二月下旬に召集されていたが、予算案の審議まで間延びすることもあり、最近は一月に召集されている。
通常国会は一回だけ会期延長できる。一九八一年十二月召集の第九十六通常国会は、常会としては現行憲法下最長の二百四十四日に及んだ。
これほど長期になるなら、あえて「会期」を区切る必要があるのか、という疑問も出てくる。国民の多くも、国会議員が懸案を素早く処理するために、一日でも多く国会で働いてほしいと思っていることだろう。
実際、憲法論議の中では、「通年国会」を導入すべきだとの声も聞かれる。
自民党の若手有志「あさっての会」がつくった改憲試案「未来憲法」では、五二条に代わって「両議院の運営については、各議院の規則でこれを定める」との条文を設けた。
そのときどきの社会の要請にあった国会運営ができるよう、憲法上の制約は最小限にしようとの試みとみられる。
ただ、一方では、国会の会期制は必要との意見もある。会期中に成立しない法案には何か“欠陥”があるはずで、会期で区切って議論を仕切り直しした方がいい法整備ができる、との考え方だ。
例えば、二〇〇二年の通常国会に提出された人権擁護法案はいったん廃案になり、現在、再提出に向け与党内で議論が進行中だ。
しかし、通年国会だったら、数に勝る与党の賛成多数で、とっくに成立している可能性が高い。
会期制は、議席数の少ない野党にとっては、法案の成立を「時間切れ」に追い込む武器という側面もある。