逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第61条> 条約承認も衆院が優越

条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

条約を結ぶ権利は、七三条で内閣に与えられているが、国会の承認も必要だ。それに関する規定が六一条。
憲法では、条約の締結権は天皇にあり、議会は関与できなかった。しかし、条約は国民生活に大きな影響を及ぼすため、国民を代表する国会の承認が必要にしたのだ。
ちなみに、七条では条約の公布は天皇が行うと規定している。この結果、条約は内閣が結び、国会が承認し、天皇が公布するという日本特有のシステムになった。
この条にある「前条第二項の規定」とは、予算の審議について(1)衆参で議決が異なり、両院協議会でも意見が一致しない(2)衆院で可決したものが参院で三十日以内に議決しない−場合、衆院の議決を国会の議決とみなすという内容。
条約の承認についても、予算の扱いに準じて衆院に優越権を与えたのは、条約がいつまでも発効しない事態に陥れば、日本が国際的な信用を失い、国益を損ないかねないと配慮したからだ。
三十日たって自動的に条約が承認されることを「自然承認」という。国内で大議論となった一九六〇年の日米安保条約改定は、この自然承認だった。
今の改憲論議で、この条文はどのような議論の対象になっているのだろうか。参院憲法調査会では、外交には長期的な視点が必要だという理由から、衆院より任期が長く、解散がない参院をむしろ優越させるべきだとの意見が数多く出た。荒井正吾氏(自民)は「(外交のように)長期的視野で慎重な検討を要するものは、参院先議とする考え方もある」と指摘。富岡由紀夫氏(民主)も「条約は慎重を期す必要がある」と、衆院優越の見直しを求めた。
衆院憲法調査会の最終報告書でも、「外交関係などは任期の長い参院優位とすべきである」との意見があったことを紹介している。