逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第62条> 国政調査権過半数の壁

両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言ならびに記録の提出を要求することができる。

国会は、政府が国民のためにきちんと仕事をしているか、税金の無駄遣いをしていないかなど、国民の代表としてチェックする権限を持つ。そのため各省庁から報告や記録を提出させて調べたり、特定の人を「証人」として呼んで話を聞くことが認められている。これが「国政調査権」だ。
この権限は、法律をつくるための事前調査など、国政全般にわたる。だが、国会の現場では、政治家や官僚らが絡む疑惑について証人を呼んで問いただす場面で、その威力を発揮してきた。
野党にとって、国政調査権は政府・与党を攻める「武器」になる。今国会でも、民主党自民党橋本派への一億円ヤミ献金事件に関して、橋本龍太郎元首相らの証人喚問を要求している。
しかし、国政調査権は、衆参両院や各委員会に与えられた権限なので、与党の「過半数」という壁にぶち当たる。衆参ともに与党が過半数を維持する今は、野党が喚問要求を乱発し、与党がそれをたなざらしにするというパターンが増えている。
国政調査権の形骸(けいがい)化傾向を踏まえ、中曽根試案では「両議院でそれぞれ総議員の十分の一以上」、鳩山由紀夫・元民主党代表の試案では「三分の一以上」の賛成がある場合は、調査を行わなければならないという規定を追加した。
また、衆院憲法調査会の最終報告書にも、「少数会派が国政調査権を発動できるようにすることは、政権交代可能な政治の実現や行政監視機能の充実を図るため、最も必要なことである」との意見が明記されている。
このような改正が実現すれば、国会の活性化も期待できる。ただ、野党にとって有利な改正が、与党側も賛成して実現する可能性は高いとはいえない。