逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第63条> 首相、閣僚に説明の義務

内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。また、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

六三条は、首相や閣僚が国会で発言する権利と義務を定めている。当たり前のことが書かれているように見えるが、国会が政府をチェックする機能の一つとして重要な条文だ。実際、旧憲法では、権利の規定はあったが、義務はなかった。
国民に選ばれた議員の要求によって、首相や閣僚が国会で説明する義務を果たすことで、国民が間接的に政府を監視することが可能になった。
通常国会の冒頭に行う首相の施政方針演説など政府四演説は、首相や閣僚が発言の権利を行使している例だ。しかし、首相や閣僚の国会での発言は、国会の求めに応じて義務を果たす形で行われていることが圧倒的に多い。
首相らの出席を要求するかどうかは、本会議の場合は議院運営委員会、委員会の場合は各委員会の理事会で与野党が協議して決める。出席要求が決まれば、原則として拒否できない。
ところが、竹中平蔵郵政民営化担当相は四月五日の衆院総務委員会を欠席。審議が中止となった。
竹中氏は「正式な依頼がなかった」などと、情報の行き違いが原因だと釈明したが、野党側は「憲法六三条に抵触する国会軽視だ」と反発した。
民主党は一カ月以上たった今も、「一九五四年、当時の吉田茂首相は病気を理由に予算委員会を欠席し、それが原因となって吉田内閣は総辞職した。閣僚の委員会欠席は、それほど重いものだ」(鳩山由紀夫元代表)などと、追及の手を緩めておらず、竹中氏の不信任案提出も視野に入れている。
憲法六三条は、後半国会の「火種」になってきた。