逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第64条> 議員が裁く弾劾裁判所

国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

裁判官弾劾裁判所は、裁判官を罷免、つまり辞めさせるかどうかを決める裁判所。
裁判官役の「裁判員」は、国会議員が務める。衆参七人ずつで構成し、「職務上の義務に著しく違反し、または職務を甚だしく怠ったとき。裁判官としての威信を著しく失う非行があったとき」(裁判官弾劾法二条)に、裁判官を罷免する。
裁判官を弾劾裁判所に訴えるのは、訴追委員会の仕事。こちらは、衆参各十人ずつの国会議員が検察官役の「訴追委員」を務める。国民は訴追委に対して、裁判官の罷免を求めて訴追するよう求めることができる。
さて、弾劾裁判所はどこにあるのだろうか。ものものしい建物を想像する人が多いだろうが、実は国会議事堂と自民党本部の間に立つ「参議院第二別館」というどこにでもあるようなビルの中にある。
広さは約百九十三平方メートル。旧最高裁判所の大法廷に似たつくりで、奥に十四人の裁判員が並び、向かって右側に訴追委員、左側に弁護人の席がある。傍聴席もある。
弾劾裁判所は、旧赤坂離宮(現迎賓館)内、参院議員会館内を経て、一九七六年に今の場所に移った。
これまでに弾劾裁判を受けた裁判官は七人で、うち五人が罷免された。ロッキード事件の捜査中に、検事総長の名をかたり首相に電話をかけた京都地裁の判事補や、児童買春をした東京地裁判事らだ。
このように現在の弾劾裁判所、訴追委員会ともに、衆参両院議員の混成だが、中曽根試案では弾劾裁判所参院議員のみ、訴追委を衆院議員のみで構成するように提案している。人事案件を参院の専権事項とすることで、党派性を超えた公平な立場を生かし、参院独自の役割を強化させようという考えに基づいている。