揺れる「愛国新評価」

県内の小学校 通知表作成大詰め 揺れる「愛国心評価」(朝日新聞2006年6月6日(火)朝刊)

県内の小学校で通知表の作成が大詰めを迎える中、愛国心についての評価項目をどうするかが議論を呼んでいる。記者会見で今後も続けると表明した市もあれは、「見直しも含め、各校の判断に委ねる」と慎重に説明する町もあり、対応は分かれている。県教育局が5日現在で把握している範囲では、4市2町の48校が昨年度、愛国心評価を実施したことがわかっているが、県議会を見据えて、今月半ばまでに学校数を再調査する予定だ。


昨年度実施6市町48校「継続」「慎重に」
県教育局 議会見据え調査へ


■見直しせず
行田市の津田馨教育長は5日の会見で、国の学習指導要領が改定されるまで、愛国心評価の「見直しの議論はない」と述べた。また、教師は児童の学習意欲などをみるため「心の中身まで踏み込んで評価することはしていない」とした。
 同市で使われている小学6年の通知表に関して、小泉首相が1日の衆院特別委員会で「愛国心」に関する項目について「必要ない」と答弁したばかり。上田清司知事も先月末、「評価するのは難しい」などと話していた。
 同市の評価項目は、学習指導要領の「国を愛する心情」という文言に基づき、4年前に教職員の代表による検討委員会がモデル案を作成、各校が導入している。同市の「自国を愛し」という表現は、必ずしも日本を指すものではなく、外国籍の子供なら、それぞれの国を指すものとして、モデル案に採用されたという。
だが、同市内の小学校で実際に愛国心の評価を行っている50代の教諭は「違和感を覚えたが、拒否できないムードが学校側にあった。愛国心についての達成目標が示されているわけでもなく点数はつけられない」と話している。
■削除も検討
騎西町では、小学校5校のうち4校の通知表に「国を愛する心情を持とうとしている」などの評価がある。導入後、取りやめた学校が1校ある。
 町教委によると、各校は今月半ば頃までに今年度の通知表の作成を進めており、学校によっては表現の削除を含めて検討しているという。朝日新聞の取材に対し、4校は「表現を変える考えはない」「削除を含めて検討している」「他校と連携して検討したい」などとそれぞれの姿勢を語った。町教委は、改訂を検討する動きの背景について「心情を評価するのは難しい面がある」と話している。
鴻巣市は昨年10月、旧鴻巣市と旧川里、吹上両町が合併して誕生した。各市町では以前から愛国心を評価する通知表が使われていたが、合併を機に、旧鴻巣市で導入されていた通知表に統一。導入していなかった旧吹上町の残り3校でも、今年度から導入する予定。市教委は「小規模校の教員負担や評価基準の均一化を考慮した」という。
■強制に不安
一方で、通知表での評価が愛国心の強制につながると警鐘を鳴らす団体もある。埼玉教職員組合は、県内の市民団体と協力し、来週から通知表に愛国心評価を盛り込まないよう4市2町の教育委員会に申し入れを始める。同組合は「県北部は組合組織が他地域より弱く、教師が愛国心教育の強制に不安を感じ、議論する機会も少ないのでは」と見ている。