「煮えくりかえった腹」市教委の対応

『照会せず』正式決定 戸田市教委 君が代不起立問題で(東京新聞 2006年8月25日(金))

戸田市教育委員会の伊藤良一教育長が、同市立小中学校の卒業式や入学式で君が代斉唱の際に起立しなかった来賓を各校長を通じて「照会」するとした問題で、同市教委は二十四日、市の個人情報保護条例に違反するとして、照会の取りやめを正式決定した。
伊藤教育長は六月定例市議会で、不起立の来賓について「調査する」と発言。同月末の定例教育委員会後の会見で「調査でなく照会する」との方針をあらためて表明したが、個人情報は本人から直接収集しなければならないとする同市個人情報保護条例に抵触する可能性があることが判明。七月の委員会では「見送り」を決めており、この日の委員会で最終結論を出した。


解説 説明責任果たさず
戸田市教委の伊藤良一教育長が、君が代斉唱の際に起立しない来賓や保護者について激しい不快感を示し、調査すると発言した問題は、六月の定例市議会から二カ月半をへてようやく決着した。
一連の騒動は、来賓への指導権限のない市教委が、規律を優先させるために市民の「内心の自由」に立ち入ることができるのかが問われた。伊藤教育長は「来賓には児童・生徒の範となってもらいたいから」と述べるが、圧力ともとれる“行政の目”に従うことが、本当に子どもたちの「範」となるのだろうか。
照会見送りを決めた七月の定例教育委員会後、市教委は「照会しないと結論づけたわけではない」と、教育長の記者会見を急きょキャンセル。二十四日も「結論を公表するという話はもともとなかった」として、会見は開かれなかった。
議会という公の場が発端となり、議論を呼んだこの問題。わずか五席しか傍聴席が用意されていない委員会で何が話し合われたのか、市教委は会見の場できちんと説明すべきではなかったか。 (池田悌一)