「折々のうた」にて

折々のうた 大岡信朝日新聞 2006年10月5日(木)朝刊)

慰霊碑は戦後に建ちて立ち続けやがて戦前になるか摩文仁(まぶに)よ 古堅喜代子(ふるげんきよこ)


『長母音の島』(平一八)所収。作者は那覇市に生まれ、沖縄県で高校教師を続けてきた人。教壇から見る沖縄の現実の諸相が歌に詠まれている。右は太平洋戦争末期、沖縄戦最後の激戦地となった摩文仁を詠んでいる。「やがて戦前になるか」という憂いをもって、かつての激戦の地を見つめる沖縄の人。この歌と並ぶ歌は「自衛隊サマーワに派兵」として、「あんなにも戦争を好む国に添うてゆくべきか立ちつくす慰霊碑」。