解釈の拡大

麻生外相、北朝鮮の核実験は「周辺事態」認定可能(asahi.com 2006年10月15日)

麻生外相は15日、今回の北朝鮮の核実験発表が「(周辺事態の)範畴(はんちゅう)に入る」と語り、周辺事態法に基づく「周辺事態」を認定することが可能だとの考えを示した。特別措置法の制定に時間がかかることから、周辺事態と認定することで可能になる船舶検査や、検査を実施する米軍への支援を先行させる考えだ。政府は内閣法制局などをまじえて検討に入ったが、防衛庁や与党・公明党には現段階での周辺事態の認定そのものに慎重論が根強く、安倍首相の最終判断に任されそうだ。
麻生氏はこの日のNHKや民放の討論番組で発言した。周辺事態となれば、日本は展開する米軍の後方支援や、船舶検査への参加が可能になるが、現行の周辺事態法の下では強制的な検査は出来ず、武器使用などにも制約がある。このため麻生氏は「周辺事態法で当面は対応する。(特措法などの)法律ができるまでは、ある程度時間がかかるので、時間をかけてきちんとやるという二段階の考え方がある」と語った。
さらに、麻生氏は「前線は米国や豪州にやってもらい、補給をきちんとする考え方もある。また(海上自衛隊の哨戒機)P3Cで怪しい船がどこへ向かうかを(米豪などに)連絡するなど、やり方はいろいろある」と語り、情報収集などにも関与できるとの考えを示した。
麻生氏の発言について内閣官房幹部は15日、「特措法はすぐにはできない。(周辺事態認定は)法的に不可能ではない。あとは政治決断だ」と語ったが、防衛庁幹部は「やはり今の時点では周辺事態の認定は難しい」と指摘した。公明党の斉藤鉄夫政調会長もこの日の民放番組で「現時点で周辺事態とまで認定できるかどうか、もう少し様子を見る必要がある。(北朝鮮が)2回目の核実験をやるかや、決議への反応をみる必要がある」と慎重な考えを示した。



海自も船舶検査参加、「周辺事態」対応で新法整備も(YOMIURI ON-LINE 2006年10月16日)

政府は15日、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議採択を受け、米軍が日本海などで北朝鮮に出入りする船舶への検査を実施した場合、「周辺事態」と認定して対応する方針を固めた。
船舶検査法に基づき、海上自衛隊が自ら船舶検査に参加するほか、米艦船に対し、周辺事態法に基づいて給油などの後方支援を行う。米国以外の国が船舶検査に加わる場合、現行法では後方支援ができないことから、政府は新たな法整備も視野に入れている。
周辺事態は現行法で「日本周辺地域における日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と規定されている。政府は1999年、具体例の一つとして「ある国の行動が国連安保理で平和への脅威と決定され、経済制裁の対象となる場合」を挙げており、今回の一連の事態はこれに該当すると判断した。
麻生外相は15日、フジテレビの報道番組で「国連安保理の決議に基づいており、『ある国』を北朝鮮と読み替えれば、周辺事態と認定できる」と明言した。さらに、NHK報道番組で、日本の船舶検査への参加について「あり得る。(現行の船舶検査法では)強制的に停船させられない問題などがあるが、オーストラリアや米国に(逃走した)船をきちんと連絡するなど、やり方はいろいろある」と述べ、各国と連携しながら実現したいとの考えを表明した。
自民党の中川政調会長テレビ朝日の番組で、今回の事態は周辺事態に該当するとの考えを示し、「(船舶検査への参加も)できる」と語った。
また、船舶検査には、すでにオーストラリアも参加可能との意向を表明している。周辺事態法は対米協力に限った法律であることから、政府・与党内では「米軍以外にも後方支援できるよう新たな法整備を行うべきだ」との意見も出ている。麻生外相はNHK番組で、「時間的なことを考えると周辺事態法で当面、対応する。(新たな法整備は)時間をかけてきちんとやる。2段階の考え方があると思う」と述べた。