「義務教育システムが普及、充実した国は、必ず家庭崩壊に向かう」

新県教育委員の松居和さん 「親心」を耕す(Sankei Web 2006年10月25日)

音楽プロデューサーとして活躍し、先進国社会での家庭崩壊や、保育者の役割をテーマにした講演、著書も多い松居和さん(52)が今月16日、上田清司知事から県教委の教育委員に任命された。あす26日の教育委員会が初仕事となる。東京都内の自宅で、松居さんに教育観を聞いた。(鵜野光博)
−−就任の話は
「9月末に上田知事と会い、要請された。知事は僕の本を読んでくれており、今まで考えてきたことを実践すればいいのだと理解している」
−−関心は幼児教育か
「この20年言ってきたのは『幼児の存在を使って親心を耕す』ということ。親心が消えると人間社会がいかに崩れていくかを、欧米社会で目の当たりにしたから」
−−親心を耕すとは
「幼児という絶対的弱者にかかわることで、人間は優しさ、忍耐力、善性を引き出される。すべての人が子育てを通じて“そこそこいい人間”になることが人間社会の基本だった。それがいま、揺らいでいる」
−−なぜ揺らぎが
「幼児期からの教育システムが普及したからだ。義務教育システムが普及、充実した国は、必ず家庭崩壊に向かう。そして家庭崩壊が学級崩壊、学校崩壊を引き起こす。実際に米国では4割近くの親が子供に興味を持たなくなっている」
−−なぜ崩壊へ向かうのか
「システムが子育てを肩代わりすることで、親心が育たなくなるからだ。保育士たちは20年前からそれを指摘し、自分たちがいい保育をやればやるほど家庭が崩壊するというジレンマの中で、親心を耕そうと頑張ってきた。しかしこの5年は疲れ切っている」
−−では、どうすればいいのか
「親が自分の人生を大切にするという考えが定着しているが、それでは子育ては成り立たない。自分の人生を犠牲にすることに幸せを感じるという真の幸福論が崩れかかっている。ただしその幸福論は、園の行事などを通じて親たちを幼児に“漬け込む”ことさえすれば、絶対に育つ」
−−行政の役目は
「全ての園で親参加の行事をやってくれと行政が言えば、やるだろう。今は園同士で子供を取り合うような競争をさせているが、親のニーズに応えようとすれば行事の少ない園になる。やるべきことが逆ではないか」
−−教師側の問題は
「教師批判は盛んだが、学校で大切なのは先生の精神的健康。たたくばかりでなく、先生を元気にすることを行政をはじめ、みんなが考えなければならない。ほとんどの生徒は学校で楽しい時間を過ごしている。親がそのことに感謝するには、子供の幸せを自分の幸せと思う親心が育っている必要がある。幼稚園、保育園の時代に親心を育てることが、学校を成り立たせる第一歩になる」



「札幌掃除に学ぶ会」が鍵山秀三郎さん招き、講演会(北海道)(YOMIURI ON-LINE 2006年10月25日)

児童生徒らと学校のトイレ清掃をしている「札幌掃除に学ぶ会」(長沼昭夫・代表世話人)は21日、設立10年記念事業として、自動車用品店「イエローハット」創業者、鍵山秀三郎さん(73)の講演会を札幌市内で開催した。
鍵山さんは、「トイレ掃除をすると謙虚になれる。才能があっても謙虚でなければ人を幸せにできない」との哲学で、会社のトイレ掃除を続けた経営者として知られる。共鳴した経営者らが集まり1993年に「日本を美しくする会」を結成。心の教育に、トイレ掃除を始める学校が全国で相次ぐことになった。
札幌掃除に学ぶ会は、96年結成。2か月に1度程度のペースで、市内の学校でトイレ掃除を行ってきた。
講演で鍵山さんは「日本は豊かになったが、心が貧しくなったように思う。両方とも豊かにするために、謙虚の心を持つことが大事」と、約120人の聴衆に語りかけていた。
札幌掃除に学ぶ会は22日朝から、札幌市立新琴似中学校などでトイレ掃除を行う予定。代表の長沼さんは「学校の先生、生徒、保護者の皆さんと一体になって掃除の取り組みを広げていきたい」と話していた。



素手素足のトイレ掃除、高校で普及…感染症心配する声も(YOMIURI ON-LINE 2006年10月24日)

一部の企業や団体が実践している「素手素足によるトイレ掃除」を、総合学習などの授業に取り入れる学校が増えている。素手と素足になり、スポンジや布を使って便器や床を磨く掃除法で、「心まで磨くことができる」と好評だ。一方で、感染症を心配する声もあり、専門家は掃除後の消毒の徹底を呼びかけている。
この掃除は自動車用品販売チェーン「イエローハット」(本社・東京)創業者、鍵山秀三郎さんが提唱。感銘を受けた有志が1993年、「日本を美しくする会」を設立し、現在は全都道府県に地方組織「掃除に学ぶ会」が発足している。
福岡県久留米市の公立三井(みい)中央高は27日、3年生106人が総合学習の一環として行う。8月に開いた教職員向け事前研修に参加した井上富慈子教頭は「最初は抵抗があったが、だんだん楽しくなり、担当した便器に愛着さえわいた。自分を磨くいい方法」と教育効果を強調。今年度中に1、2年生も実施する方針だ。
同県小郡市の県立小郡高は昨年5月、1年生約240人が実施。久留米市の市立南筑高も今年5月、吹奏楽部の生徒ら十数人が挑戦した。同市の江南中、佐賀県鳥栖市の田代中、同県多久市の中央中などにも広がっており、生徒からは「トイレを汚いと思わなくなった」「こんなに楽しいとは思わなかった」といった声が多く寄せられたという。
一方、三井中央高1年の女子生徒は「どうして素手素足なのかわからない」と戸惑った様子。同校の関係者からも「福祉施設でも手袋をしておむつを交換している。不特定多数が利用する学校でやるのは非常識」と批判的な声が出ている。
感染症に詳しい久留米大医学部の濱田信之助教授(ウイルス学)は「手足の傷や口から菌が入り込み、嘔吐(おうと)下痢症などに感染する危険性がある。良い活動だとは思うが、素手素足を強制すべきではないし、掃除後には念入りな消毒が必要」と指摘している。