カート・ヴォネガット氏逝去

カート・ボネガット氏死去 米小説家(CNN 2007年4月12日(木))

ニューヨーク──皮肉とユーモアに満ちた作風で戦争の愚かさを描き、科学の進歩に疑問を投げかけてきた米小説家カート・ボネガット氏が11日に死去した。84歳だった。
妻で写真家のジル・クレメンツさんによると、ボネガット氏は数週間前、米ニューヨーク市内マンハッタンの自宅で転倒し、頭部を負傷していた。
インディアナ州インディアナポリスのドイツ系移民の家庭に生まれる。第二次世界大戦中、母親の自殺直後にドイツ戦線に配属されるが、連合軍がドイツ軍の最後の反撃に対抗した「バルジの戦い」で捕虜となり、ドレスデンでの拘束中に連合軍の爆撃を経験。これが後に代表作「スローターハウス5」を生んだとされる。
「猫のゆりかご」「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」など少なくとも19作の長編小説を執筆し、多くはベストセラーとなった。作品には短編小説やエッセイ、戯曲もあり、講演活動も行って、因習に囚われない鋭い視点で社会を批評した。
長編小説の執筆から遠ざかった後も、2005年にノンフィクションをまとめた「A Man Without a Country」を出版。ブッシュ政権を「歴史も地理も知らない上流階級の劣等生」と批判し、地球の未来に懸念を表明した。



訃報:カート・ボネガットさん84歳=米作家(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年4月12日(木))

ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)によると、米作家で1960〜70年代の若者をとらえた対抗文化(カウンターカルチャー)の旗手、カート・ボネガット氏が11日、ニューヨーク市内で死去した。84歳。関係者によると数週間前に転倒した際、脳を損傷し治療を続けていた。
22年、ドイツ系移民の子としてインディアナポリスで生まれた。第二次世界大戦で従軍中にドイツ軍の捕虜となり、連合国側によるドレスデン爆撃を体験。これが後に作家としての原体験となった。
ユーモアとペシミズムが織りなす独特の語り口で、米文化の衰退や人間の存在の意味を問う作品を著した。その作品群により、ベトナム戦争に悩む若者たちにとって文学的な偶像となった。
52年の「プレイヤー・ピアノ」で登場、ドレスデン体験に基づいた69年の「スローターハウス5」は代表作の一つ。ほかにSFの「タイタンの妖女」や「猫のゆりかご」などがある。(共同)