選挙関連の記事

久間防衛相辞任:後任に小池氏 イメージ回復狙い 「選挙の顔」も期待(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年7月4日(水))

安倍晋三首相が、辞任を表明した久間章生防衛相の後任に小池百合子首相補佐官(安全保障担当)を充てるのは、参院選を目前に控え、閣僚経験も長く安定感のある女性の起用で内閣のイメージ回復を図る狙いからだ。首相官邸で安全保障政策に携わり、キャスター出身で知名度も高い小池氏は「選挙の顔」になるとの判断もあったようだ。
「国防は一刻も手を緩めることができないので引き受けてほしい」
安倍首相は3日午後3時45分、官邸の執務室に小池氏を呼び、防衛相就任を要請した。久間氏が首相に辞任を伝えてから、わずか2時間半後。安倍政権での過去2回の閣僚交代では人事構想に時間をかけ、本人に伝達したのも深夜だったのと比べると異例ともいえるスピード決着だった。それだけ首相が追い込まれていたともいえる。
安倍政権発足以来、小池氏が安全保障担当補佐官として、安全保障政策に関与した経験も適任と判断する材料になった。防衛省副大臣政務官は経験していないが守屋武昌事務次官とは旧知の仲。制服自衛官幹部との付き合いもあり省内の一部には待望論もあった。
一方、自民党内からは「小池氏なら全国を飛び回れば選挙にプラス」(閣僚経験者)など、参院選での活躍を期待する声が出ている。「女性初」の防衛相として安倍内閣の新たな顔に据えることで、参院選に向けた反転攻勢の契機にしたいとの首相の計算も働いたとみられる。【古本陽荘】


◇日本版NSCを推進−−小池百合子氏(54)=町村派
安倍晋三内閣発足に合わせて新設された安全保障担当の首相補佐官に就任。来春発足を目指す日本版NSC(国家安全保障会議)の設立構想を進めてきた。
細川護煕元首相に口説かれ、92年の参院選でキャスターから政治家に転身。日本新、新進、自由、保守、自民と政党を渡り歩いた。
エジプトのカイロ大卒でアラビア語に堪能。中東諸国の王族や政治家に知己が多い。沖縄北方担当相時代、米軍普天間飛行場キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり地元の声を代弁し、防衛庁(現防衛省)と対立したこともある。小泉純一郎内閣では環境相として夏の軽装を勧める「クールビズ」を発案した。



久間防衛相辞任:選挙へ「しょうがない」 与党陣営うんざり「有権者にどう説明」(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年7月4日(水))

原爆投下を事実上容認した久間章生防衛相が3日、辞任を表明した。参院選をにらんだ素早い幕引き。しかし公示が迫り、激しい戦いの渦中にある自民党の立候補予定者や陣営からはうんざりした表情で「辞任しても影響は避けられない」「有権者へどう説明すればいいのか」などの厳しい発言が起きた。一方の防衛省。失言で大臣が去り、初めての女性のトップを迎える事態に、幹部からは「二重の驚き」の声も漏れた。
久間氏の地元・長崎県。長崎選挙区から出馬する自民新人で元国見高校校長の小嶺忠敏氏は同日、「ご本人が決断されたことで、私は(何か)言える立場にないが、非常に残念だ。残された参院選投開票日までの日々を粛々とやっていきたい」と簡単なコメントを出した。
しかし陣営の心中は穏やかではない。小嶺氏は久間氏の推薦で党公認になった経緯があり、久間氏も「私が引っ張り出した小嶺先生に影響があってはいけない」(辞任表明)と特に気にかけていた。
「(辞任しても)影響は大きい」との声が強い陣営。北村誠吾選挙対策本部長(衆院議員)は「選挙のことを考えて辞めたのだろう。辞めなかったら、選挙はさらにまずい方向になった」と複雑な表情を見せた。
山形選挙区の自民新人、篠原みえ子氏は「原爆についての日本人の感覚に対して不用意な発言で、辞任は仕方ない。ただし政治家の出処進退の問題で、党の問題ではない」と、久間氏の個人的資質の問題と強調。出遅れを意識してか選挙への影響については「あります。スタートが遅れた分、年金に加え、今回の問題についての説明に時間が取られる可能性がある」と危惧(きぐ)する。
現職で、伊達忠一氏(北海道選挙区)のように「野党はあら探しをする。久間さんは舌足らずなところがあった」と擁護する意見もあるが、辞任やむなしとの声は強い。
滋賀選挙区で3選を狙う山下英利氏は「原爆投下を肯定するような発言は防衛相として適切ではない」と批判。「参院選は力いっぱいやるしかないが、内閣には適切なこと(発言)をお願いしたい」と険しい表情で苦言を呈した。
愛知選挙区で鈴木政二氏(官房副長官)を擁立する党愛知県連の小林秀央幹事長も「騒ぎになる前に辞任すべきだった。選挙で戦うのは、地方議員の我々。有権者から『なっとらん』と言われる」と突き放した。
前日の2日に「万死に値する」と久間氏の辞任を求めた保坂三蔵氏(東京選挙区)は「(参院選に向け)負の要因が少しは払しょくできたと思う。しかし、核に関する疑念を晴らすことが先で、自分も自民党の一人として、国民の皆さんにおわびしていきたい」と語った。
一方、与党・公明党の立候補予定者も怒りを隠さない。再選を目指す山口那津男氏(同)は「日本は唯一の被爆国として、核廃絶のため世界をリードしなければならないが、逆のメッセージになった。辞任で選挙への影響が最小限にとどまってほしい」。大阪選挙区の白浜一良氏は「大臣の発言の責任は重い。辞任は当然。与党として影響はあるが、党の立場は一貫している」と述べた。


◇最後は苦笑交じり
防衛省では、防衛相の辞任に大きな衝撃が走り、会見では久間防衛相が釈明を繰り返した。
同省11階の第1省議室。午後4時半、久間氏はさばさばとした表情で現れた。「核廃絶に否定的ということはありえない」「辞任は選挙への配慮と同時に、(発言が)被爆者のみなさんの気持ちを軽んじたと受け取られたため」と弁明を重ねた。
久間氏によると、辞任を決めたのはこの日午前中。「選挙を控え与党として困ってるな」と感じ始めたという。「長崎が最後の核兵器の使用であってもらいたいと、まぁもう過ぎたことはしょうがないんですが」と続けた後「今もね、しょうがないって言ったけど」と言い直す場面もあった。
さらに「被爆地の(原爆反対の)署名運動をしている高校生が、記事の見出しだけ読んで私が原爆を是認してるように思われると残念」と無念そうな表情も浮かべた。最後に真珠湾攻撃歴史認識を問われ「過去のことをああすればよかったと言っても始まらない。しょうがない……」と言いかけ、「そんな感じですかね」と苦笑交じりに締めくくった。
これに先立つ午後1時過ぎ、防衛相辞任のニュース速報に守屋武昌防衛事務次官は携帯電話を片手に「まだ正式には聞いてない」とエレベーターに駆け込むあわてぶり。6日付で公表予定だった「防衛白書」も印刷済みで、久間氏の写真入り「刊行によせて」の2ページ分の差し替えも間に合わないという。
後任に小池百合子氏が就任することにも驚きが広がった。男性が約95%を占める同省のトップに女性が立つのは初めて。ある幹部は「久間さんの辞任以上の驚き。自衛隊では将官クラスの女性はまだいない」と話した。



'07参院選:久間防衛相辞任 野党、敵失で攻勢 擁護責任、首相に批判集中(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年7月4日(水))

米国の原爆投下を「しょうがない」と発言した久間章生防衛相が引責辞任を表明したことで、野党は参院選に向け新たな追及材料を得た。「辞めて済む問題ではない。内閣そのものの本質にかかわる問題だ」(小沢一郎民主党代表)などと攻撃の矛先を安倍晋三首相に集中させ、政権批判の世論を喚起したい考えだ。【須藤孝、南文枝
民主党の小沢代表は3日、高松市で記者団に対し、久間氏を擁護していた首相の責任に言及するとともに、「安倍内閣国家主義的、権力的な姿勢が背景にある」と指摘した。
共産党志位和夫委員長も同日、国会内で記者団に「かばい続けた首相の責任は極めて重い」と批判した。国民新党亀井久興幹事長も「安倍内閣の姿勢そのものが間違っている」と足並みをそろえ、社民党福島瑞穂党首は「原爆投下を正当化する発言を首相がどう考えるかを明らかにすべきだ」と、この問題に対する首相の姿勢を徹底追及する考えを示した。
野党各党は参院選で、年金記録漏れを最大争点に据え、政権を追及する構えでいる。ただ、この問題が必ずしも民主党など野党の支持率上昇に結びついてはおらず、与党が選挙日程を1週間延ばし態勢立て直しを図りつつあることも懸念材料だった。
こうした中、飛び出したのが久間氏の「原爆投下はしょうがない」発言。国民の機微に触れる問題だけに、野党は世論を背に安倍政権を追い込みたい考えで、民主党幹部は「いよいよ選挙というタイミングでの辞任は大きい」と語った。さらに、首相がいったんは久間氏の発言を不問に付したうえで辞任に至ったことから、追及材料がより広がったとみている。鳩山由紀夫幹事長は3日の記者会見で「安倍内閣が漂流している姿が国民の前に明らかに映し出された」と語った。
民主、社民、国民新3党は同日、国会内で幹事長会談を開き、首相の任命責任を一致して追及することを確認。具体的には衆参の予算委員会衆院決算委への首相や久間氏の出席を求めることを申し合わせた。
このうち民主党が委員長を務める衆院決算委は3日、委員会を4日に開くことを決めた。ただ、審議内容については合意に至らず、与党は野党が求める首相や久間氏の出席にも応じない考え。会期末も5日に迫り、国会での対応には限界があることから、野党は街頭活動を中心に追及を続ける方針だ。



参院選与党陣営に危機感 「辞任遅い」「けじめついた」(asahi.com 2007年7月3日(火))

公示まで9日と迫った参院選に久間防衛相辞任が与える影響を、自民党など与党の立候補予定者の陣営は懸念する。「このままで戦えるのか」という悲鳴の一方で、「けじめがついた」と事態の沈静化を期待する声も上がった。
久間氏の地元、長崎選挙区の自民新顔、小嶺忠敏氏は3日夜に長崎県壱岐市であった総決起集会で、辞任には触れずじまいだった。応援演説の谷川弥一衆院議員が「お許しいただきたい。原爆が『しょうがない』なんてことはない」とわびた。
小嶺氏は1月、久間氏の要請を受けて立候補を決断。内閣支持率の低下もあり陣営は最近、安倍首相と小嶺氏が握手を交わすポスターをはがし、久間氏と並んだものなどに替え始めたばかりだった。「このポスターもはがすことになるかも」と陣営幹部。
同じく被爆地を含む広島選挙区の現職、溝手防災担当相は「広島ではありえない発言。辞任は仕方ない」。さらに「私は広島のことはよく知っている。久間さんと違うことは有権者にわかってもらえるはず」と強調した。
栃木選挙区に立つ現職の国井正幸氏は「何十万人が死んだことを、いかなる文脈でも『しょうがない』と表現するのはおかしい。語彙(ごい)が不足しているのではないか」と改めて久間氏を批判。「(選挙への影響は)プラスにはならないだろう」と口を濁した。
「辞任はむしろ遅かったのでは」(岩手県連)、「党執行部はもっと緊張感をもってほしい」(富山県連)。公明党からも「国会議員をやめてほしいくらいだ」(富山県本部代表・島田一県議)との声が上がった。
茨城選挙区でも、自民陣営の幹部は「党への批判が高まるのは確実。党執行部ももっと早い段階で『発言は問題だ』と意思表示すべきだった」と憤る。佐藤憲保・福島県政調会長は「年金問題で風当たりが強い中、また批判の火種が広がってしまった」。
一方で、辞任でけじめがついたとする見方もある。長野県連の石田治一郎幹事長は「大変な批判を受けていた私どもからすれば、何とかけじめをつけて欲しいと思っていた。辞めなかったらさらに影響は大きかっただろう」と語った。東京都連幹部は「責任をとったことに敬意を表したい」。
民主党陣営は一気に攻勢に出る。同党北海道はこの日、札幌市中心部で緊急街頭演説。宣伝カーに「大臣辞職ではすまない!議員辞職せよ」との横断幕を掲げ、北海道選挙区に立つ現職の小川勝也氏が「安倍首相の責任をうやむやにしていいのでしょうか」などと聴衆に呼びかけた。