「集団自衛権 公使容認」読売の姿勢

社説:集団的自衛権 行使容認へ議論を深めるべきだ(YOMIURI ON-LINE 2007年7月9日(月))

集団的自衛権の行使の容認へ一定の方向性は出た。その道筋を明確にするため、さらに議論を深めるべきだ。
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」による対米支援に関する二つの類型の議論では、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を変更するべきだ、という意見が大勢を占めた。もっともな主張である。
「公海上での米艦防護」については、個別的自衛権や、自衛隊法95条の「武器等防護」に基づく正当防衛での対応には限界がある、という意見が相次いだ。
同じ船舶検査や警戒監視活動に従事していても、自衛隊と米軍の艦船は通常、相当離れた場所で活動する。水平線の先にいる米軍艦船への攻撃を自らの艦船への攻撃とみなし、正当防衛などを根拠に反撃するのは、法の拡大解釈だろう。
「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃」でも、ミサイルが日本上空を通過する、しないにかかわらず、個別的自衛権自衛隊法82条の警察権の適用は無理がある、との見解で集約されつつある。
日本が配備中の迎撃ミサイルに、米本土やハワイ、グアムに向かうミサイルを撃ち落とす能力はないが、将来、そうした能力を保有する可能性は十分ある。能力さえあれば迎撃するという、明確な姿勢を示すことが重要だ。
米艦防護もミサイル迎撃も、日米同盟の根幹にかかわる問題だ。仮に日本が憲法上の制約を理由に、米国への攻撃を座視すれば、同盟は崩壊する。国連憲章も認めている集団的自衛権を行使するのが、自然な対応だろう。
懇談会は8月以降、「国際平和活動における武器使用」など、残る2類型を議論した後、秋の報告書策定に向けて、4類型全体の詰めの作業に入る。
報告書で集団的自衛権の行使の容認を提言する場合は、国民の理解が得られるよう、説得力のある内容にすることが必要だ。法整備も避けられない。
自衛隊に新たな任務を与えるための自衛隊法改正は当然だが、併せて安全保障基本法を制定することが望ましい。基本法で、どんな場合に集団的自衛権を行使し、どんな場合は行使しないのか、基本的な考え方を定めてはどうか。懇談会でも議論してもらいたい。
政府・与党内には、憲法解釈を変更すると憲法改正の機運が失われる、という意見がある。これはおかしい。
憲法改正の発議は早くて3年後だ。集団的自衛権の行使が必要な事態は、いつ発生するか分からない。憲法解釈の変更は差し迫った課題だ。解釈変更後、早急に憲法全体の改正に取り組めばいい。