赤城農相問題に関する社説

社説:農相の事務所費 この説明では納得できない(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年7月8日(日))

あぜんとするほかない。もちろん、7日発覚した赤城徳彦農相の不明朗な事務所経費問題だ。
農相は「付け替えや架空のものは計上していない」と反論し、安倍晋三首相も農相の進退問題にはつながらないとの考えを早々に示して「農相はしっかり説明した」とまで語った。だが、関係者の話との食い違いは明らかだ。拙速に幕引きを図ろうとする姿勢は、かえって有権者の不信を増幅させるのではないか。
今回の問題は農相の関係政治団体赤城徳彦後援会」が、茨城県の父親の自宅を団体の所在地として届け、05年までの10年間に約9045万円に上る経常経費を政治資金収支報告書に計上していたにもかかわらず、父親らは「(事務所として)使っていない」と証言したというものだ。
また、東京にある農相の妻の実家に事務所を置く政治団体も毎年100万円以上の経常経費を計上しながら、少なくともこの10年は活動実態がないとされる。
安倍内閣では昨年暮れ、佐田玄一郎・前行革担当相が、実際に存在しない事務所に対し光熱水費や事務所費など計7800万円の経費支出を政治資金報告書に記載したとの疑惑により辞任した。その後も松岡利勝前農相の巨額の光熱水費問題も浮上。松岡氏は5月末、自殺した。
安倍首相は佐田氏のケースとは違うと明言。赤城農相は「事務所は後援活動の中核で、経費は電話代や事務機器のリース料だ」などと釈明した。だが、「中核」との説明と事務所として実体はないという父親らの話とはまったく異なる。ならば父親らが虚偽の説明をしたということなのか。さらに事務所費には家賃は含まれていないというが、だとすれば巨額過ぎないか。そして、「計上すべきものはきちんと計上している」と言いながら、領収書を公表する考えはないという。
佐田氏も記者会見では事務所が架空とは認めず、辞任の理由は国政を混乱させたというものだった。松岡氏も領収書公表など内訳の説明を求められながら拒み続けた。だから、赤城農相もこうした説明で乗り切れると考えているのかもしれないが、これだけ国民の間に政治とカネの問題に対する不信感が高まっているのだ。従来に増して説得力のある説明が求められるのは当然ではないか。
しかも、赤城農相は松岡氏の後任だ。自民党内からも「なぜ、後任人事を決める際にちゃんとチェックしなかったのか」との声が出ているほどだ。参院選を控え、年金記録漏れ問題や久間章生前防衛相の辞任に続き、安倍政権にとっては大きな打撃となるはずだ。
先の国会で与党の賛成により成立した改正政治資金規正法は政治家1人に1団体認められる資金管理団体にのみ限定して5万円以上の経常経費支出(人件費を除く)に領収書添付を義務付ける内容で、今回の農相の後援会のような他の政治団体はその規制外だ。ザル法であるのが早くも分かったことも指摘しておきたい。



社説:赤城農水相―また不自然な経理処理(asahi.com 2007年7月9日(月))

また、である。安倍内閣の閣僚の事務所経費をめぐって不自然な会計処理が発覚した。うんざりだ。いい加減にしろ。そんな感想の人が多いのではないか。
問題が指摘された赤城農水相はよりにもよって、自殺した松岡前農水相の後任だ。松岡氏は巨額の光熱水費などについて国会で追及され、「ナントカ還元水」という迷答弁を残した。その後任者にまたも似たような問題が浮上した。
「政治とカネ」の問題で守勢に立たされてきた安倍首相には、悪夢のような事態だろう。人事権者としての首相の責任も問われている。
今回の問題の構図はこうだ。
赤城氏の後援会は、茨城県筑西市の赤城氏の実家を所在地として届け出ている。後援会は05年までの10年間に、事務所費や光熱水費など約9000万円にのぼる経常経費を計上していた。
実家にいる赤城氏の母親は「電気代、水道代は私が支払っている。ここに人を集めることはない」と語った。後援会の代表をつとめる元県議は「自分が代表者であることも知らなかった」と話した。
その後、実家の父親が「以前ほどではないが、地元の会合は行われている」とのコメントを出したものの、活動の実態が本当にあったのか、疑問は残る。
赤城氏は「電話代や切手代、事務機器のリース料などを積み上げた」として、架空の計上や付け替えはないと強調した。水戸市にある自民党支部を後援会の事務所としても使っているので、その分の経費が合算されてもいるのだという。
赤城氏は、やましいところがないのなら、裏付けとなる領収書などを示してきちんと説明すべきだ。
安倍内閣では昨年暮れ、佐田前行革担当相が架空の事務所に巨額の経費を計上していた疑惑で辞任した。後を追うように、松岡前農水相らの問題が続いた。
私たちがうんざりさせられるのは、こうした問題が続くことだけではない。
松岡氏は結局、疑惑について一切の説明を拒み通した。今回も赤城氏や安倍首相は「問題ない」「しっかり説明している」などと釈明するばかりだ。だが、それでどれだけの人が納得すると考えているのだろうか。
資料を示し、具体的に説明責任を果たす。そんな政治家の基本的な倫理観がないがしろにされ、今回もそれが繰り返されようとしている。そのことに国民は失望し、不信を募らせているのだ。
赤城氏の問題は、先の国会で与党が通した改正政治資金規正法に大きな「抜け穴」があることを早くも裏づけた。
改正規正法は1件5万円以上の経常経費に領収書の添付を義務づけた。だが、資金管理団体だけが対象で、赤城氏の後援会のような政治団体はそもそも対象外なのだ。領収書を出す義務がない。
規正法が具体的な説明を拒む口実に使われる。この腐った仕組みだけは一日も早く正さねばならない。



【主張】農水相事務所費 首相は「説明責任」を促せ(Sankei Web 2007年7月9日(月))

こんな調子で自民党は、まともに参院選を戦えるのだろうか。前防衛相が米国の原爆投下をめぐる発言で辞任したばかりだというのに、今度は赤城徳彦農林水産相の事務所経費問題である。
日曜日のテレビ番組で行われた7党首討論でも取り上げられ、安倍晋三首相は経費の内訳などを細かく説明して理解を求めていたが、防戦一方との印象はぬぐえなかった。
赤城氏に関係する政治団体は、両親が住む実家を主たる事務所として届け、16年間で約1億2300万円の経常経費を人件費や事務所費、光熱水費などとして計上していた。
赤城氏は「付け替えや架空計上はない」と主張している。だが、両親や後援会関係者は事務所の実体はなかったと話しており、納得は得られまい。領収書の公表などで、さらに説明しようという姿勢もみられない。
安倍首相は基本的には「問題ない」との見解で、罷免する考えもないという。とくに、事務所経費の処理について違法性がない点を強調した。
さきの国会では、5万円以上の経費には領収書添付を義務付ける政治資金規正法の改正が行われた。それ自体は、政治とカネの問題に対する国民の不信をぬぐうため、最低限の措置だけはとったものといえよう。
しかし、首相が「透明性が格段に向上した」と胸を張れるほどのものではないことが露呈してしまった。疑問を持たれた政治団体は、政治資金管理団体とは異なり、領収書添付が義務付けられる対象でないためだ。
しかし、ここまで問題化した以上、赤城氏はさらに説明を尽くすべきであり、首相もまた、それを促すのは当然だろう。
次々と閣僚から足を引っ張られる首相は、やっていられないという気持ちだろうが、同じく事務所経費問題を問われた松岡利勝農水相の後任に起用した際、クリーンさを重視したはずだ。任命責任は小さくない。
このタイミングをとらえたように、民主党小沢一郎代表は野党が参院過半数を得られなければ、政界を引退する意向を表明した。政治家は政治責任を明確にすべきだと強調するねらいだが、首相は赤城氏の問題にどう対処するか。公示前の焦点である。



【社説】赤城農相疑惑 領収書なしで収まらぬ(東京新聞 2007年7月9日(月))

赤城徳彦農相に疑惑が浮上した。実家に多額の経常経費を計上していた。後援会の主たる事務所としては実体が疑わしい。農相の説明では国民は納得しない。参院選へ引きずっていくつもりか。
開いた口がふさがらない。「何とか還元水」など不明朗な政治資金の使途を追及され、自殺した松岡利勝前農相の後任が、同じような「政治とカネ」の問題を疑われている。安倍晋三首相はどこまで事前のチェックをしたのか。
参院選公示が目前だ。与党内からも「もういいかげんにしてほしい」と声があがる。もっともなことだ。
農相の政治団体赤城徳彦後援会」は茨城県内の実家を「主たる事務所」と届け、二〇〇五年までの十年間に約九千万円もの経常経費を計上していた。しかし、母親はいったん「私たちが住んでいるだけ」といい、団体の代表者も「事務所の実体はないはずだ」と語った。
農相は「後援会活動の中核の場所で、付け替えや架空計上はない」と反論。水戸市の事務所の分と合算して報告していると説明した。
母親らの話と農相の言い分の食い違いは何なのか。どちらかが嘘(うそ)をついていることになる。農相は領収書をつけて内訳を明らかにすべきだ。
都内にある農相の妻の親族宅が所在地の政治団体「徳政会」も、十年間で約千五百万円の経常経費を計上している。親族宅には政治団体の表札もないという。何に使っていたのか。農相は再度、詳しく説明する責任がある。
首相は八日のテレビ番組で「農相はしっかり説明していた」と、野党の辞任要求に応じる考えがないことを強調した。松岡氏の問題でも「法にのっとって適切に処理していると報告を受けている」とかばい続け、結果的に悲劇を招いた。首相は自分の発言に責任を持つべきだ。
首相はまた、資金管理団体に限り五万円以上の経常経費に領収書添付を義務づける改正政治資金規正法の成立で「政治資金の透明性を前進させた」と自画自賛した。しかし、農相のケースはこの法律ではしばれないことを分かっているのか。
安倍内閣では、昨年暮れの佐田玄一郎前行革相の不正経理問題を皮切りに、松岡氏と伊吹文明文部科学相の事務所費問題が相次いで発覚した。いずれも十分説明されず、いまだに疑惑が残る。野党が一斉に領収書の提示を求めるのは当然だ。
農相は就任直後にも「違法献金」疑惑が指摘され、慌てて返却した。このままでは政治不信を強めた罪は一層重くなる。



社説1 赤城農相はきちんと説明責任を果たせ(日経ネット 2007年7月8日(日))

安倍内閣でまたも「政治とカネ」をめぐる閣僚の疑惑が表面化した。赤城徳彦農相の政治団体が、実家を主たる事務所の所在地として届け、活動実態がなかったとみられるのに、毎年多額の経常経費を計上していたことが判明した。
農相は「(事務所は)後援会活動の中核の場所。付け替えや架空計上などは全くない」などと説明しているが、詳細を明らかにしていないので説得力に欠ける。「政治とカネ」の不祥事が相次ぎ、政治不信が高まるなか、農相はきちんと説明責任を果たす必要がある。
農相の政治団体赤城徳彦後援会」は、2005年までの10年間で人件費や事務所費、光熱水費などの経常経費を約9000万円計上していた。家賃などにあてる事務所費だけで約1630万円も計上しているが、農相の事務所は家賃を払っていなかったことを認めている。
農相は水戸市にあるもう一つの事務所を含め、電話代や切手代などを積み上げた額と説明している。そうであるならば、裏付けとなる領収書などを示してもらいたい。
安倍内閣では昨年12月に佐田玄一郎行政改革担当相の政治団体が、00年までの10年間に架空の事務所の経費約7800万円を計上していたことが発覚、辞任に追い込まれた。松岡利勝前農相の政治資金管理団体でも多額の事務所費や光熱水費を計上していた問題が、国会で追及された。松岡氏は説明責任を果たさぬまま、5月に自殺した。
赤城氏は松岡氏の後任の農相だ。これまでは事務所費などの経常経費の詳細を明らかにする必要はなかったが、それを盾にとって松岡氏のような対応をするのは許されない。
安倍晋三首相は「しっかり説明するように指示をした」と記者団に語ったが、赤城氏の説明を了とするのだろうか。前通常国会で不明朗な事務所費問題があれほどの騒ぎになったにもかかわらず、松岡氏の後任の閣僚が同じ問題で批判を浴びるようでは、危機管理能力を問われかねない。安倍政権にとって新たな痛手となるのは避けられない。
前国会で改正政治資金規正法が成立した。政治家が一つ持てる政治資金管理団体については、経常経費(人件費を除く)のうち5万円以上の支出には領収書の添付が義務づけられるようになった。08年以降に提出する政治資金収支報告書から適用される。ただ赤城農相のケースのようなその他の政治団体は対象外だ。政治団体も含めた法改正の是非を改めて議論する必要がある。



社説:赤城農相事務所費 納得のいく説明ができるのか(愛媛新聞 2007年7月9日(月))

赤城徳彦農相に関係する政治団体が、両親が住む実家を「主たる事務所」として茨城県選管に届け多額の経常経費を計上していたことが分かった。別の政治団体も都内にある妻の実家を主たる事務所としていた。
いずれも事務所として実体のない疑いがあり、極めて不透明な経費処理というほかない。
赤城農相は活動実績があったと説明し「付け替えや架空計上は全くない」とするが、事務所の実体を否定する関係者の話と食い違っているのは重大だ。
これで説明責任を果たしたとはいえない。国民の納得を得られる説明を尽くすべきだ。それができなければ閣僚としての責任も問われよう。
それにしても「政治とカネ」の問題が相次ぐのはどうしたことか。安倍晋三内閣のタガが緩んでいるとしか思えない。
政治団体の架空事務所費計上の発覚で佐田玄一郎行政改革担当相が引責辞任したのは昨年末。松岡利勝前農相や伊吹文明文部科学相らの資金管理団体が家賃無料の議員会館に事務所を置きながら多額の事務所費を計上していたことも浮上した。
不透明な光熱水費問題を抱えたまま自殺した松岡前農相の後を受けて先月就任したのが赤城農相だ。だが、不祥事の連鎖を断ち切るどころか、前農相と同じような疑惑で輪をかける結果となった。
こうした事態に、安倍首相の責任は重大だといわねばならない。原爆容認発言で辞任した久間章生前防衛相を含めた一連の問題と同様、今度も農相を擁護する姿勢に終始しているが、危機感の薄さが気がかりだ。任命前の調査のありようも含めて、揺らぐ危機管理体制を厳しく見直す必要がある。
今回、先月末成立の改正政治資金規正法ザル法であることをあらためて浮き彫りにした。
改正法は資金管理団体の支出の透明性を高めるとの触れ込みで、五万円以上の経常経費の支出について明細の記載や領収書の添付を義務付けた。しかし資金管理団体以外の政治団体は対象外で、五万円未満に小分けするなどの「抜け道」もあるのが実態だ。
赤城農相の政治団体の場合、改正前の報告であり、改正法のもとでも領収書義務づけの対象とはならない。総額の記入で済ませられる。だが、制度上はそうだとしても、これでは支出の具体的な内訳は分からず、実態が不透明になる。
農相が架空計上などはないことを主張するのであれば、領収書なども使って詳細に説明すべきではないか。
また、十六年間で約一億二千三百万円の経常経費を計上していた政治団体は実家を「主たる事務所」として届けていたが、実家とは別に水戸市に事務所があり、合算の経費であることが明らかになった。「主たる事務所」以外の事務所は報告の必要がない規正法は、実態を分かりにくくしている。
いま安倍内閣に試されているのは政治資金の透明化へ自浄力を発揮するかどうかだ。



社説:赤城農相の事務所費 詳しく説明を聴きたい(中国新聞 2007年7月8日(日))

安倍政権の「政治とカネ」をめぐる問題が、また持ち上がった。赤城徳彦農相が、両親の住む実家を後援会事務所として茨城県選挙管理委員会に届け、家賃などを経常経費として政治資金報告書に計上していた。事務所の実態をめぐる関係者たちの話は食い違う。農相の説明には釈然としない点が多い。詳しく説明を聴きたい。
松岡利勝前農相が資金管理団体の事務所経費として巨額の光熱水費などを計上し、非難の渦中に自殺したのは五月末だった。赤城氏は六月一日に後任として就任し、またも事務所費問題が浮上した。政治資金をめぐる閣僚の姿勢には、お粗末な印象がぬぐえない。
県選管への報告書などによると、農相は筑西市の実家を事務所として届け、二〇〇五年までの十六年間に、家賃など計約一億二千万円を経常経費として計上していた。しかし農相の父親は「家賃をもらっておらず、事務所として使ったことはない」と説明。後援会代表と記載されている元県議は、事務所の「実体はない」と話す。
農相は「(事務所は)初当選以来まさに拠点。付け替えや架空計上はない」と否定する。父親の話などと食い違う。実態はどうなのだろう。
佐田玄一郎行政改革担当相が、架空の事務所費を計上したケースを思い出す。佐田氏は不適切な処理の経緯などに触れないまま辞任した。松岡前農相も、何も語らないまま世を去った。不透明なカネの流れは今も闇の中だ。
政治家の収入は政党助成金など税金も含まれる。農相は先月も、林業団体の寄付金を報告書に記載していなかったことが発覚している。自らの政治資金の流れを詳細に説明すべきである。
今国会で改正政治資金規正法が成立した。資金管理団体に限り、五万円以上の経常経費に領収書添付を義務付けるなどの内容である。後援会など政治団体すべてに全領収書の添付を義務付ければ、透明度はぐっと増すはずだ。
中国新聞社の世論調査では、参院選の争点に「政治とカネ」を挙げた人は26・3%で年金、福祉政策に続き三位。クリーンな政治へ有権者の強い思いがうかがえる。
安倍内閣の発足から九カ月余り。三人も交代した閣僚のうち二人は事務所費をめぐる問題である。農相について首相は、法的問題はないとの認識を示した。しかし政治不信の解消へ、首相の指導力が厳しく問われる。



社説:農水相疑惑*後任者の説明も足りぬ(北海道新聞 2007年7月8日(日))

この説明で納得できるわけがない。国民の政治不信は募るばかりだ。
赤城徳彦農水相政治団体が活動実体のない事務所を登録し、多額の経常経費を計上していた疑いが浮上した。
政治団体とは地元茨城県にある後援会だ。初当選した一九九○年以降十六年間にかかった経常経費は約一億二千三百万円。内訳は人件費約七千百六十万円、家賃に当たる事務所費約二千二百八十万円などと報告していた。
事務所は書類上、農水相の両親が住む住宅にある。ところが父親はこの事実を知らないと否定し、「事務所として使ったことはない」と話した。
農水相は記者会見で「後援活動の中核の場所だ」と主張したが、後援会の代表は「実体はない」という。これでは虚偽を疑われても仕方がない。
父親は家賃をもらったことはないとも話している。では高額な事務所費は何に使ったのか。
農水相は会見で、他に一つ事務所があり電話代や事務機器リース料などをまとめて報告したと説明した。だが二つの事務所で経費がいくらずつかかったのか詳細は答えなかった。
架空の経費を計上したのではないか。他の政治団体の経費を付け替えたのではないか。こういった疑惑を晴らすためには会計帳簿を公開し、すべての支出について語る必要がある。
でなければ農水相が「きちんと報告している」と言っても説得力があるとは思えない。経常経費をめぐる疑惑があまりに頻発し、政治への信頼が大きく揺らいでいるからだ。
昨年十二月、佐田玄一郎行政改革担当相の政治団体による架空事務所費計上が発覚し、佐田氏は辞任した。
次いで伊吹文明文部科学相らの多額の事務所費が問題になり、巨額光熱水費の使途を追及された松岡利勝農水相が自殺する事件まで起きた。
その後任者が同じ問題で不透明さを指摘されたのでは、国民は驚きあきれるしかない。農水相は閣僚としてこの責任をどう考えるのか。
松岡氏問題を受け、与党は政治資金規正法を改め五万円以上の経常経費支出に領収書添付を義務付けた。対象を政治資金管理団体に限定したため、野党は一般の政治団体に付け替える抜け道を用意したザル法だと酷評した。
今回、疑惑が持ち上がったのも資金管理団体でない政治団体だ。批判の正しさが早速裏付けられたといえる。
安倍晋三首相は相変わらずだ。
農水相はしっかり説明した」とかばい、問題ないと突っぱねた。国民に対する説明責任はなおざりにする気らしい。野党の辞任要求も拒否した。
松岡氏や久間章生前防衛相の時とまったく同じ展開だ。
首相はこのままで参院選を戦えると考えているのだろうか。



社説:農相事務所費 説明責任だけで済むのか(新潟日報 2007年7月9日(月))

またも閣僚による不明朗な事務所費処理が発覚した。あきれるしかない。赤城徳彦農相の関係政治団体が、事務所として実体がない両親の住む実家に多額の経常経費を計上していた。
赤城農相の父親は、住宅は事務所として使用されていないと話している。農相は他の事務所との経費を合算して計上したと説明し、架空支出や付け替えを否定している。
政治活動が行われていない場所でカネが動くこと自体が「架空」ではないか。公私の区別も不明確である。自宅分の光熱費などとは区別していたというからには、領収書を示し支出の実態をすべて明らかにすべきだ。
問題は説明責任で済まないものをはらんでいる。安倍内閣が発足してから、閣僚をめぐる政治とカネの疑惑が絶えない。すべてうやむやに幕引きされてきたといっていい。
赤城農相の前任者である松岡利勝氏は、「ナントカ還元水」など不透明な事務所費については口をつぐんだまま自殺した。佐田玄一郎前行革担当相の場合は国政を混乱させたというのが辞任理由で、架空の事務所費についての説明は最後までなかった。
赤城農相はこれらの不祥事から何を学び取ったのか。説明をあいまいにすることを教訓としたのではあるまい。
安倍晋三首相の任命責任も大きい。佐田氏の場合は自ら引責辞任を申し出て首相から了承された。失言で辞任した久間章生防衛相も同じだ。首相自ら罷免することはなかった。
首相は赤城氏を農相に任命する際の政治資金調査を見ているという。その上で辞任の必要はないと擁護している。任期を全うしない閣僚が相次ぐ深刻さを受け止め、自ら厳しく事情を聴くべきだ。「しっかり説明されたと聞いている」などと人ごとのように発言している場合ではない。
通常国会政治資金規正法の改正が行われた。領収書が不要だった経常経費へ他のカネが付け替えられていることが問題化したからだ。
改正法では五万円以上の支出があった場合に領収書が必要となる。しかし、今回の赤城農相のケースは政治団体であり、対象を資金管理団体に限った改正法でも違法ではない。
政治団体に分散すれば経常経費の領収書は不要となる。改正後もなお「ザル法」といわれるゆえんだ。
安倍首相は八日の民放テレビ番組で、「政治団体資金管理団体に一本化するよう指導している」と述べた。閣僚が率先して実行すべきだろう。
国民の不信をぬぐうには、こんな「口頭指導」での限界は見えている。政治資金透明化への首相の見識と決断が問われている。