日本脳炎予防接種に関する情報

先端医療 - (8/22)日本脳炎の新ワクチン、承認は07年以降に(NIKKEI NET いきいき健康 2006年8月22日(火))

重い副作用が報告され、昨年予防接種の勧奨が中止された日本脳炎をめぐり、当初は本年中とみられた新ワクチンの承認や供給開始が2007―08年ごろにずれ込むことが22日分かった。
副作用リスクが比較的低いとされる新ワクチンについて、国の審査機関が承認申請者の2つの財団法人に対し「有効性や安全性の検討にはより多くの症例数が必要」として、治験の追加実施を指示したため。
過去の予防接種禍を教訓に慎重を期した対応といえるが、日本小児科学会は「勧奨中止が長期にわたれば日本脳炎流行が危惧される」として厚生労働省に対し、ブタを対象とした流行予測調査を拡充することなどを求めている。
新ワクチンの承認を申請しているのは阪大微生物病研究会(阪大微研、大阪府)と、化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)の2法人。製造時にマウスの脳を利用する現行ワクチンに対し、人工的に培養した細胞を使うため品質管理がしやすい新ワクチンをそれぞれ開発し、早期の実用化を目指してきた。
阪大微研は昨年6月の申請時に約300人分のデータをそろえたが、厚労省が審査実務を委託している医薬品医療機器総合機構から「症例数を増やすように」と指示を受け、新たに約300人を対象に治験を追加実施する。
昨年5月の申請時に約470人分のデータを提出した化血研も、同様の指示を受け、追加の規模などを検討中という。
阪大微研は「被験者を集めるのに一定の時間が必要だが、本年度中にはデータをそろえて提出したい」とし、化血研も「できる限り早く承認が得られるよう努力していく」としている。
現行のワクチンは、接種後に重症の「急性散在性脳脊髄炎(ADEM)」になった女子中学生のケースが報告され、厚労省は昨年5月、接種の勧奨を中止するよう自治体に緊急勧告を出した。〔共同〕



日本脳炎、接種中断が4年以上に 新ワクチン開発が難航(asahi.com 2007年7月15日(日))

副作用の影響で、05年から事実上中断されている日本脳炎の定期予防接種の再開が、新型ワクチン開発の遅れから、大幅にずれ込むことが分かった。再開は09年以降になる見通しという。当初1年程度とみられた中断期間が4年以上に延びることになり、専門家からは感染者の増加を心配する声も出始めている。旧型ワクチンはすでに製造体制がなく在庫量も限られており、厚生労働省は対応に苦慮している。
日本脳炎はウイルスをもつブタの血を吸った蚊に刺されて感染する。60年代には年間2000人以上発症したこともあり、76年に予防接種法に基づく定期予防接種が始まった。中断前の標準的な接種は、3歳で2回、4歳1回、9歳1回、14歳1回だった。
厚労省は05年5月、山梨県内の中学生が副作用で寝たきりになったとして、「接種の積極的な勧奨をしない」との勧告を出した。このため、ほとんどの自治体は、学校での集団接種や保護者への案内をやめた。副作用が出にくいとされる新型ワクチンの開発を見込んだ措置で、同省は1年程度で定期接種を再開できる見通しを示していた。
ところが、メーカー2社が開発している新型ワクチンは、いずれも臨床試験で皮膚がはれるなどの副作用が多く出た。うち1社が再試験を始めたのは今年1月。すべての試験が終わりデータがそろうのは来年で、同省の承認を得るのに順調でも半年程度かかるとみられる。生産はそれからだ。もう1社の再試験はさらに遅れている。
92年以降の発症者は年10人以下だが、ブタの感染は減らず、九州・四国を中心とする12県の感染率は8割を超している。
定期接種の中断が4年になると、09年には6歳以下の大半は免疫をもたないことになる。昨年9月には熊本県内で3歳児が発症。15年ぶりに5歳以下の発症が確認された。これを受けて同省は今年5月、旧ワクチンの接種希望者への情報提供や、医療機関などの在庫を調べて不足地域に融通することなどを求める通知を都道府県に出した。
旧型ワクチンは現在、12歳以下の定期接種対象者が希望すれば、多くの自治体で無料で打てる。ただ、旧型の原液の在庫は数百万回分と限りがあり、接種を呼びかけるなどの対策は打ち出しにくいのが現状だ。
昨年は希望者向けに22万回分が出荷されたが、勧告前は年に四百数十万回分が使用されていた。同省結核感染症課は「当面は未接種の幼児がなるべく蚊に刺されないようにするなど情報提供に力を入れる」と話す。
国立感染症研究所の倉根一郎・ウイルス第1部長は「子どもは成長すると活動範囲が広がるので、感染した蚊に刺される機会は格段に増える。これまでの感染率や発症率から考えると、数十人の子どもの患者が出てもおかしくない。特に西日本で接種を受けたことのない子は、旧型ワクチンを打つのが望ましい」としている。