票の割れた互選での委員長就任

県教委:委員長に元「つくる会」高橋氏、中立性に懸念の声 知事は期待 /埼玉(毎日新聞 2007年10月26日(金))

◇選挙で異例の票割れ
新しい県教育委員長に「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長の高橋史朗氏(56)が選任された。上田清司知事は「多岐にわたる見識をお持ちでうまくとりまとめていただける」と期待を寄せたが、県民や団体からは歴史認識の押しつけや教育の中立性から不安視する声が相次いだ。
高橋氏は04年12月、上田知事に請われる形で教育委員に就任、05年7月に教育委員長職務代理者となった。職務代理者は次期委員長に選任される例が多いが、06年の委員長選では市民団体の反発などで高橋氏自らが辞退した経緯がある。今回の選挙では全6票中2票が他の委員、1票が白紙。票が割れることが少ない同選挙では異例のこととなった。
高橋氏は辞退した前回との違いについて、「親学推進協会や(自分の私塾の)埼玉師範塾の理事長などを務めており、委員長の職務を全うできないと考えた」と説明。師範塾の理事長を辞任するなどの考えを示唆した。また、歴史認識の強要については「教育委員会は合議制。委員長が独断専行するわけではない」と否定した。
上田知事はかねてから、高橋氏について「体験学習、感性教育など多岐にわたり教育の問題点を把握している一線級の人」と高く評価。この日は記者団に「まとめ役なので個性が逆に死んでしまうのではないかという感じはする」と語った。
一方、市民団体「教育と自治・埼玉ネットワーク」の片岡洋子代表世話人は「教育委員は政治的中立でなければならないのに、自身の教育観を押しつけようとしており、ふさわしくない」と批判。県教職員組合は「教育委員会の中立性が損なわれるのではないかとの県民の声を真摯(しんし)に受け止めることが求められる」と文書で発表した。【鷲頭彰子】


=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
■解説
◇「上田カラー」色濃く
上田清司知事が04年に教育委員に迎えた高橋史朗氏の教育委員長就任は、結果的に2期目に入った教育行政に「上田カラー」が色濃く反映されることになるといえよう。
上田知事はかつて、高橋氏を「教科書を書いたり、監修を依頼されるほど学識が高い」と発言するなど信頼を寄せている。確かに、教育委員長は教育委員の互選であり、知事の権限で決めたわけではない。
高橋氏は「私の歴史観で埼玉の教育全体を動かす考えはない」と、慎重な姿勢を見せる。
ただ、ある県西部の高校に務める男性教諭は「教育論や歴史観で知事と共鳴する委員長の就任で、県の教育行政はトップダウン型の傾向がより強まるのでは」と懸念する。
選挙で票数が割れたことや、市民団体などから不安の声が上がる中、高橋氏が進めようとする教育行政は平たんにはいかないだろう。万一、批判が高まった時、上田知事の対応も注目される。【高本耕太】



埼玉県教育委員長に高橋史朗氏 「つくる会」元副会長(朝日新聞 2007年10月25日(木))

埼玉県教育委員会は25日、教育委員長に「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長の高橋史朗明星大学教授(56)を選んだ。任期は26日から1年間。高橋氏は04年12月から同県教育委員を務めている。
高橋氏は「委員長就任について、いろいろな心配があることは承知している。私の歴史観で埼玉県の教育を動かしていく考えはなく、合意が得られることを進める」と話した。



埼玉県教委:教育委員長に「つくる会」元副会長・高橋氏(毎日新聞 2007年10月25日(木))

埼玉県教育委員会は25日、教育委員長に「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長の高橋史朗氏(56)を互選で選出した。26日に就任し、任期は1年。上田清司知事に請われる形で04年、県教育委員に就任していた。
選出後、高橋氏は「教育委員長は委員会のまとめ役。私の歴史観で(埼玉県の)教育全体を動かしていこうという考えは毛頭ない」と語った。
高橋氏は早稲田大大学院人文学研究科修士課程修了。米・スタンフォード大フーバー研究所客員研究員などを経て90年4月、明星大教授に就任。政府の臨時教育審議会専門委員も務めた。【高本耕太、鷲頭彰子】



県教育委員長に高橋氏 歴史教科書「独断で進めぬ」(読売新聞 2007年10月26日(金))

就任に批判も
教育委員会の新委員長に選出された「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長の高橋史朗・明星大教授(56)は25日、「歴史教科書問題などで懸念はあると思うが、独断で進めるつもりはない。議論を重ねてまとめていきたい」と述べた。一方、教職員組合などからは「ふさわしい人物ではない」と不満の声も出ている。
この日は委員6人の互選による委員長選挙が行われ、高橋氏は3票を獲得した。高橋氏は教育現場の改革などを課題に挙げ、「親と教師をサポートする体制を作りたい」などと抱負を語った。歴史教科書問題については「私の歴史観で動くつもりはない」とした。
1年前の前回選挙では、在任期間が最も長い高橋氏の選出が確実視されていたが、高橋氏が私的な教員養成機関「埼玉師範塾」の理事長や塾長を務めていることに一部から反対の声が上がり、自ら辞退した。今回の選出に伴い、同塾の理事長と塾長は退任するという。
高橋氏の委員長選出について、上田知事は「高橋氏の個性が逆に死んでしまうのかなと思うが、多岐にわたる見識を持っているので、うまくまとめてくれると思う」と期待を表明。一方、県高校教職員組合の関原正裕副委員長は「教員の人事にかかわる立場でありながら、教員養成の塾を開講して塾長を務めるなど、公正中立であるべき委員長にはふさわしくない」と批判した。