結局また強行採決

対テロ新法:自民、公明両党の賛成多数で可決 衆院委(毎日新聞 2007年11月13日(火))

衆院テロ防止・イラク支援特別委員会は12日、海上自衛隊のインド洋での給油活動を再開させるための新テロ対策特別措置法案を、自民、公明両党の賛成多数で可決した。同法案は13日の衆院本会議で可決、参院に送付されるが、参院与野党勢力が逆転しており、12月15日の会期末に向けて攻防が激化することは確実だ。野党が参院で法案を否決した場合、与党は衆院で3分の2以上の賛成で再議決することも辞さない構えで、衆院解散含みで緊迫する可能性もある。
同委員会はこの日午前に一般質疑を行った後、午後は福田首相も出席して締めくくり質疑と討論を行った。首相は「給油活動は有効な方法だった。日本の艦隊がまたインド洋に行ってほしい、という強い希望を持っている」と、法案成立への決意を改めて表明した。
質疑終了後、各党による賛成、反対討論と採決が行われた。民主、社民、国民新の野党3党は反対討論は行わず、委員長席を取り囲むなどして採決への反対を表明。共産党は反対討論を行った上で採決に加わった。
同委員会の深谷隆司委員長(自民)は採決終了後、記者団に「誠実な議論が展開された。最後まで(民主党の)対案が出ず、やむを得ずこのような形になった」と採決の正当性を強調した。民主党鳩山由紀夫幹事長は「防衛省がスキャンダルまみれになっている時に、そのことをほったらかして『別の話だ』と(言う)。もっとまじめな議論をすべきだった」と与党の対応を批判した。
同法案はテロリストや武器の海上移動を阻止する他国軍艦船への給油・給水の「補給支援」に活動を限定。基本計画で規定されていた活動区域などを法案本体に取り込み、旧特措法にあった国会承認の規定を削除した。期限は1年。
政府・与党は同法案を今国会の最重要法案と位置づけているが、参院では民主党など野党が多数を握っているため、法案成立はなお不透明だ。
自民党の鈴木政二、民主党簗瀬進参院国対委員長が12日に国会内で協議し、鈴木氏は14日に参院本会議で趣旨説明を行うよう求めたが、簗瀬氏は難色を示した。審議入りは首相訪米をはさみ、19日以降にずれこむ見通しだ。【尾中香尚里】



補給新法、委員会通過 13日にも参院へ(朝日新聞 2007年11月12日(月))

インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するため、政府が今国会に提出した補給支援特別措置法案が、12日の衆院テロ対策特別委員会で、自民、公明両党の賛成多数で可決された。民主、社民、国民新の各党は、委員長席につめよるなどして採決に反対。共産党は討論の中で反対の意思を表明した。
法案は13日の衆院本会議で可決された後、参院に送付される予定。衆院と異なり、野党が過半数を占める参院では、第1党の民主党の対応が焦点となる。
民主党は、補給支援特措法案を審議する参院外交防衛委員会で、同法案の審議を後回しにして、民主党提出のイラク特措法廃止法案の審議を優先させる方針。その間に、守屋武昌・前防衛事務次官を巡る接待疑惑などを追及する考えだ。
政府・与党は延長国会の会期内の補給支援特措法成立を目指しており、野党が参院で法案を否決した場合、衆院で出席議員の3分の2以上の賛成による再議決に踏み切ることも視野に、検討を進めている。



延長国会、波乱含み 補給支援法案、衆院委で可決(朝日新聞 2007年11月12日(月))

インド洋での自衛隊給油活動を再開するため政府が今国会に提出した補給支援特別措置法案が12日、衆院テロ対策特別委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決された。共産党が反対、民主党などは採決に反対だとして加わらなかった。13日の衆院本会議で可決され、参院に送付されるが、12月15日の延長国会会期末までに成立せずに会期再延長となると、衆院解散含みの波乱の展開になる。「大連立」騒動をはさんで再開した逆転国会第二幕は、首相問責決議案提出や解散をちらつかせて牽制(けんせい)しあう「不穏な師走」に突入する。
「ここに来るまでも長かったけど、これからも長い道のりを一生懸命やらなければいけない」。福田首相は12日夜、特措法案の衆院特別委可決についてこう語り、成立への道のりがなお険しいことを強調した。
小沢代表の辞任騒動で足もとが揺らぎ、民主党は特措法成立を追認せざるを得なくなる――。こんな希望的観測が一時、政府・与党内で広がった。だが、弱っているからこそ、民主党は対決姿勢を強めている。
「今日可決されたんだってな。参院でしっかり戦え」。小沢氏は12日、参院外交防衛委員会の筆頭理事を務める浅尾慶一郎「次の内閣」防衛相にハッパをかけた。鳩山由紀夫幹事長も「首相訪米を控え、おみやげを持って行かなくてはならない一心で強行的に採決した。大変けしからん話だ」と強気に語った。
参院では、審議日程をめぐる攻防が始まった。
「14日の参院本会議で特措法案の趣旨説明をしたい」。自民党の鈴木政二参院国対委員長が12日、民主党簗瀬進参院国対委員長に求めると、簗瀬氏は「(イラクから自衛隊を撤退させる)イラク特措法廃止法案の審議入りが先だ」と拒んだ。
参院では、法案全体の流れを差配する議院運営委員会と、特措法案を扱う外交防衛委員会の委員長をともに民主党が握る。イラク撤退法案の審議が先になることは確実で、特措法案は審議入りのメドすら立たない。
この展開だと、延長国会会期末の12月15日ごろに、参院採決のタイミングを迎える。民主党は、成立には会期の再延長が欠かせない局面を作り出し、政府・与党を断念に追い込もうと思い描く。民主党国対幹部はこう解説した。「12月15日に政府は再延長するかしないか、決断を迫られる。再延長なら解散含み、断念なら解散しないだろう」
この延長日程は、政府・与党側があえて引いた「ライン」でもある。再延長して与野党が激突し解散含みになるのが嫌なら、延長した会期内の成立を容認してほしい――。こんなメッセージも込められている。自民党伊吹文明幹事長は12日の記者会見で「党利党略的なことに野党が出た場合は、出合い頭とか、いろいろな判断をせざるを得ないと申し上げている」と語った。
解散風を吹かせる与党側だが、対決ムードのまま会期末を迎えたくないのが本音だ。
参院で否決されれば衆院で3分の2以上の賛成で再可決する「伝家の宝刀」を抜くほかに成立の道はない。与野党が激突したまま再議決に至った場合、民主党は逆転国会の「切り札」である首相問責決議案を提出するかどうか判断を迫られる。問責可決は解散の引き金になりかねない、との見方が政界では主流だ。
だから、与党内でも公明党は再議決に慎重だ。民主党も早期解散は避けたいのが本音で、問責を出すかは未定だ。同党は13日にまとめる対案の要綱に自衛隊海外派遣のための恒久法整備を行う規定を盛り込む方針で、与党と話し合う余地が全くないわけではない。
だが、波乱の可能性は否定できない。自民党中川秀直元幹事長は12日の講演で「霧の中、何が起こるかわからない。切り札を持っているが出さないと言う監督はいない」と語った。首相も12日夜、衆院解散の考えを記者団に問われ、けむに巻いた。「まだ参院にも行ってないのに、いま考えるには早すぎるんじゃないですか」