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修学旅行中に窃盗疑惑、生徒53人の指紋採取 全員潔白(朝日新聞 2008年12月25日(木))

茨城県立大子(だいご)清流高校(茨城県大子町)の2年生の男子生徒らが先月、修学旅行のフェリーで乗客の財布を盗んだと疑われ、捜査に当たった第6管区海上保安本部・坂出海上保安署香川県坂出市)から生徒全員の指紋を採取されていたことがわかった。採取された指紋は財布についていた犯人のものとみられる指紋と一致せず、嫌疑は晴れたが、学校は「指紋を早く廃棄してほしい」と求めている。
学校や同署によると、事件が起きたのは11月18日夜、瀬戸内海を大阪から新門司港に向かうフェリーの船中。乗客が「財布から現金が盗まれた」と届け出たという。同署は「近くに男子生徒がいた」との目撃証言をもとに、同校の男子生徒53人全員の指紋提出を学校側に求めた。翌朝、指紋採取に時間がかかった影響で、予定していた阿蘇山観光はキャンセルせざるを得なかったという。
引率した大畠丈夫教頭は「27日になって、指紋は(財布の指紋と)一致しなかったと連絡があった。証言した乗客は酒に酔っていたようで、生徒たちは最初から潔白だと確信していたが、名誉が守られてよかった」「採取した指紋はできるだけ早く廃棄してほしい」と話す。
同署の小田隆司次長は「目撃情報に基づいて生徒の指紋を採った。教頭の了承も得ており、捜査は適切だったと考えている。捜査は続いており、採取した指紋はまだ破棄していない」としている。



生活保護の母子加算、廃止判断を容認 広島地裁初判断(朝日新聞 2008年12月25日(木))

高齢者やひとり親世帯を対象にした生活保護費の老齢加算母子加算を、国が廃止を前提に段階的に減額したのは生存権を保障した憲法25条に違反するとして、広島県内の32人が、国の委託を受けた県や広島市など6自治体を相手に減額処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が25日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は原告側の請求をすべて退けた。提訴後に死亡した5人については、訴訟が終了しているとして判断しなかった。原告側は控訴する。
老齢あるいは母子加算をめぐる同様の訴訟は広島を含む10地裁に起こされた。6月の東京地裁判決は老齢加算について「廃止は厚生労働大臣の裁量の範囲内」とする初判断を示して原告の請求を棄却し、原告側が控訴。母子加算については広島地裁判決が初判断となったが、判決はいずれの加算も「国の判断過程が不合理だったとまではいえない」として減額処分の取り消しを認めなかった。
判決はまず、生活保護費の水準をめぐる「朝日訴訟」の最高裁判決(67年)が憲法25条がいう「健康で文化的な最低限度の生活」について「認定判断は厚生大臣(当時)の合目的的な裁量に委ねられている」とした判断を踏襲。老齢加算については「(見直しの過程で)厚労大臣が国民から見て必ずしも納得できる説明をしたとは言い難い」としつつ、廃止されても「最低生活費が充足されない事態をもたらすとはいえない」と判断した。そのうえで老齢加算をめぐる問題について「政治的、社会的な問題として解決されるべき事柄だ」とした。
母子加算についても「母子世帯に、一般世帯の支出総額と比較して加算に相当するほどの特別な需要があるとは言い難い」と述べ、廃止に違法性はないと判断した。
原告のうち2人が母子加算、残る原告は老齢加算を居住地の自治体から受給していたが国の決定に伴い、総支給費の15〜20%を減額された。
裁判には、加算廃止前に検討を行った「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」で委員を務めた布川(ふかわ)日佐史・静岡大教授(労働経済論)が原告側証人として出廷。行政側は厚労省の加算制度廃止はこの専門委員会の提言を受けて行われたと主張していたが、布川教授は「専門委員会は老齢加算の無条件の廃止を結論づけていないし、母子加算の廃止についても慎重に議論、検討すべきだとしていた」と国の決定を批判した。



渡辺元行革相「選挙前に旗」 政界再編の可能性強調(朝日新聞 2008年12月25日(木))

自民党渡辺喜美元行革担当相は25日午前、テレビ朝日の情報番組で、「政界再編は必至。選挙の前にやるのか後にやるのか。私は選挙の前に旗を立てるのが大事だと言っている」と語り、衆院解散・総選挙の前にも、自らが主導する形での政界再編があり得るとの考えを強調した。
渡辺氏は24日の衆院本会議で、民主党提出の衆院解散要求決議案に自民党執行部の方針に反し、賛成した。25日の番組終了後、渡辺氏は「(選挙前に)国民運動をやる。運動をやるからにはアジェンダ(指針)が必要。何をなすべきか、旗を立てる必要がある。自民党の器を超えてやると」と述べ、自民党の選挙公約に縛られず、独自の公約を作る考えを表明した。
渡辺氏と同様、独自の政策ビジョンを作る意向を示している中川秀直元幹事長との連携についても「あり得る」と述べ、麻生政権と距離を置く自民党議員らとの連携を模索する考えを明らかにした。
また、番組内で渡辺氏は、政府が1月の通常国会に提出する2兆円の定額給付金を盛り込んだ第2次補正予算案や道路特定財源一般財源化に関連する法案への党内からの造反についても「あると思う」と述べ、造反の動きが広がるとの見方を示した。



「11年度黒字化」維持へ 政府、財政再建目標巡り調整(朝日新聞 2008年12月25日(木))

政府は、「11年度に基礎的財政収支を黒字化する」という財政再建目標を努力目標として維持する方向で調整に入った。景気の急速な悪化で税収が落ち込み、財政収支は大幅に悪化。与謝野経済財政相は見直しを示唆していたが、政府内に「財政規律がなし崩しになる」と懸念する声が強く、維持の方向となった。
目標は小泉政権が06年に掲げ、社会保障費抑制や公共事業費削減を進めるテコとしてきた。来月中旬に決める「経済財政の中長期方針と10年展望」(仮称)で達成への努力は続けることをうたう。一方、世界的な金融危機で景気後退が加速するなど、政府の努力とは無関係な要因により達成が難しくなっているとの記述も盛り込む見通しだ。
「10年展望」は、税財政・社会保障制度改革の「中期プログラム」に沿い今後10年間の財政状況を示す。11年度に消費税率の段階的な引き上げに着手できた場合でも、基礎的財政収支の赤字は避けられないとの内容となる見通し。
だが、歳出増圧力をかわすためにも、「達成できるかどうかは別として、目標を掲げ続けること自体に象徴的な意味がある」(経済官庁幹部)との判断に傾いた。



財政出動、乏しい余力 日本、欧米諸国の流れに協調(朝日新聞 2008年12月25日(木))

世界的な景気悪化を受け、麻生政権が積極的な財政出動に踏み出した。「100年に1度」とも言われる危機を乗り切るため、欧米諸国が軒並み景気対策を打ち出し、その流れに日本も協調する形になった。だが、日本は巨額の借金を抱え、主要国で最悪の財政状態。難しいかじ取りが続く。
政府は24日、過去最大の一般会計総額88.5兆円の09年度予算案を閣議決定した。麻生首相は記者会見で、「日本も世界不況の津波から逃れられないが、世界で最初に不況脱出をめざす。異常な経済には異例な対応が必要だ」と述べ、財政出動の必要性を強調した。
景気対策のため、政府が08年度第1次、第2次補正予算と09年度予算案で打ち出した財政支出額は計12兆円(地方自治体の支出を含む)。名目GDP(国内総生産)の約2%の規模になる。
財務省によると、米国や英国、ドイツなどの経済対策の財政支出の規模は名目GDPの1〜2%。財務省は「日本の規模は見劣りしない」と説明し、十分な予算をつけていることを強調する。
欧米各国は政府の支出をできるだけ抑え、市場重視の経済政策をとってきた。しかし、今年に入り金融危機が本格化すると、利下げなどの金融緩和とともに財政出動路線に転換。中国も大型の財政出動に乗り出した。
11月の金融サミット(G20)でも「即効的な内需刺激の財政施策を用いる」として、各国が協調して財政出動することを確認。比較的傷が浅い日本も「世界が無理をしている時に、日本だけが知らぬ顔とはいかない」(財務省幹部)との認識が政府内で強まった。国内でも総選挙をにらみ、与党内の歳出増を求める声が強まり、国内外で財政出動への圧力が高まった。