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職員が先に発症、外部からウイルスか インフル集団感染(朝日新聞 2009年1月19日(月))

入院患者がインフルエンザに集団感染した東京都町田市の鶴川サナトリウム病院の3棟7病棟(フロア)のうち、多くの入院患者が発症した3病棟を含む5病棟では、それぞれの担当職員が先に発症していた。専門家は職員や見舞客らを通じて外からウイルスが持ち込まれたとみている。
同病院の17日までのまとめでは、発症者が22人と最も多く、死亡した患者3人のうち2人がいた北棟3階で、1月3日に職員1人が院内で最初に発症。患者は9日に7人、10日5人、12日5人が発症した。同様に南棟3階、中央棟3階でも職員に続いて患者らの発症が相次いだ。職員だけ発症した病棟はあるが、患者だけ発症した病棟はない。
ただ、南棟4階と、南棟とつながっている中央棟5階は患者が先に発症していた。
東北大の押谷仁教授(微生物学)は「院内感染で問題になるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA)やノロウイルスなどと違い、インフルエンザは施設内に定着するウイルスではない」と指摘し、職員や見舞客ら施設の内外を行き来する人を介しウイルスが持ち込まれたとみる。
各病棟で最初に患者が発症した日は最大6日ずれている。感染経路の解明が急がれる。患者で最初に発症者が出た南棟3階の入院患者らは、認知症でも自分で歩くことができる人たち。日野研一郎院長によると、徘徊(はいかい)などで施設内を歩き回り、マスクを外してしまう人も多い。
同病院の職員や患者の約9割がワクチン接種をしていた。菅谷憲夫けいゆう病院小児科部長は「高齢者でワクチンが有効な人の割合は半数以下という報告や、病棟間を移動する職員が感染を広げた例も過去にある」と話す。
新型インフルエンザ・クライシス」などの著書がある北海道小樽市の元保健所長外岡立人さんは「一つの病院内でこれだけ強い感染力を持つウイルスが出ていることは要注意だ」と危機感を募らせ、「現時点でウイルス株の種類がわかっていないのは遅すぎる」と指摘する。
インフルエンザはAソ連型、A香港型、B型の3種類あり、それぞれ特徴があって対策に注意が必要だ。18日現在、今回の感染ではA型としか分かっていない。Aソ連型は今季、多くの患者で抗ウイルス薬のタミフルが効かない可能性が指摘されている。(武田耕太、服部尚)



世界の移植臓器、通し番号で管理 WHOが指針改定案(朝日新聞 2009年1月19日(月))

世界保健機関(WHO)は、臓器移植を受けた患者や提供者の情報管理を加盟国に求める指導指針の改定案をまとめた。移植臓器に世界共通の通し番号を付けることを想定している。臓器売買を伴う反社会的な移植を減らし、経済的に豊かな患者が他国の患者の移植の機会を奪う不公平を解消する一歩にする考え。
改定案のポイントは、(1)移植を受けた患者と提供者の所在や健康状態などについての継続的な把握(2)プライバシーに配慮したうえでの情報公開という2点。不適切な問題には各国の保健当局が対処すべきことも盛られた。
指針には条約のような法的拘束力はないが、各国の医療政策に生かされ、臓器移植に実質的に影響を与えてきた。改定案は、19日にスイス・ジュネーブで始まる執行理事会で承認され、5月の総会で正式決定する見通し。
WHO移植委員の篠崎尚史・東京歯科大角膜センター長は「どの臓器が誰に移植されたかが常にリンクしていれば、不適切な移植への抑止力になる」とみる。
例えば、外国人への移植を禁じた国に、地元の人を装わせて外国人に移植を受けさせる違法業者がいたとしても、番号で管理すれば、違法な移植で正規の番号が付くことは考えにくい。帰国後の治療を考えれば、そうした業者に頼る人は減るという論理だ。
改定の背景に日本など臓器提供が少ない国の患者が外国で移植を受けることへの批判がある。WHOは改定案に付随する報告書で、外国人向けに臓器を売買する業者の存在や、営利目的の移植のため誘拐まで起きている実態に警鐘を鳴らした。日本移植学会は今年1月、WHOの改定を前に移植を受けた患者と提供者の情報管理を始めている。
厚生労働省臓器移植対策室の平塚洋一室長補佐は「適正な移植のため情報の透明性は重要。日本も前向きに取り組む」と話す。(長野剛)



自民・民主が党大会 麻生首相は結束、小沢氏は転換訴え(朝日新聞 2009年1月18日(日))

二大政党がぶつかり合う政治決戦を控え、自民、民主両党が18日、定期党大会をそれぞれ東京都内で開いた。消費増税をめぐって足並みが乱れる自民党は、麻生首相が責任政党としての役割維持、党の一致結束を促す「堅守」の姿勢を強調した。これに対し、民主党は「自公連立政権の失政は限界」と政権奪取に意欲を見せ、小沢代表は新政権発足後の具体的な政策構想を早くも打ち出した。
麻生首相は党大会の演説で、「国会としての意思決定を遅らせているとの批判を生んでいる。国会の制度やあり方を見直さなければならない」と、「ねじれ国会」の現状を指摘。そのうえで衆参両院の選挙制度を見直す必要があるとの認識を示し、党内で議論するよう提言した。
ただ、今年秋までに行われる次期総選挙の前に制度を改めるのは困難で、自らが主張する消費増税の前提として、国会議員の定数削減を検討する姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。
現在、衆院選は300小選挙区と11ブロックの比例代表制を組み合わせた小選挙区比例代表並立制参院選は47都道府県別の選挙区と全国一律の比例代表制で実施している。首相は「衆参両院で似かよっている選挙制度の見直しも必要になってくる。党内で議論を進めて頂きたい」と語ったが、具体的な見直しの方向性には触れなかった。
首相がこだわる「3年後の消費増税」には、中川秀直元幹事長らが「増税の前に徹底的な行革が必要だ」と批判を強めている。そのため、党執行部内には「議員定数削減で身を削る姿勢を示すことが必要だ」として、「衆院比例区参院で選挙区を廃止すればいい」との意見もある。
一方、首相は10日、「小選挙区制には元々反対。政界再編を小選挙区でするとなると(保守の)大連立は難しい」と発言。総選挙後の政界再編を念頭に、小選挙区制見直しをにじませた可能性もある。しかし、公明党小選挙区制を見直して中選挙区制に戻すことは歓迎だが、比例区廃止に反発するのは必至だ。また、選挙制度見直しに必要な公職選挙法の改正に対し、民主党など野党の賛成が得られる見込みはなく、総選挙後も議論が加速する見通しはたっていない。
民主党の小沢代表は党大会のあいさつで、景気回復策として環境と安全・安心を掲げた「二つのニューディール」構想を打ち出した。太陽光パネルの全戸設置や全小中学校校舎の耐震化、介護労働者の増員などが柱。経済危機への対応策として、次期総選挙のマニフェスト政権公約)に盛り込む。
同党は、オバマ次期米大統領の「グリーン・ニューディール(緑の内需)」構想を参考に、内需喚起策を検討してきた。小沢氏の提唱で具体化作業が加速しそうだ。
小沢氏は「経済危機の今こそ、日本の大転換を成し遂げる好機」と指摘。「自公政権が総選挙目当てに強行した総額2兆円の定額給付金のような、ただのバラマキであってはならない。将来の『人間のための経済』『住民のための社会』を実現できるものでなくてはならない」と語った。
「環境のニューディール」では、農林漁業者向けの戸別所得補償制度の創設のほか、新築戸建て住宅を対象とした太陽光パネルについて、設置費の半額補助で全戸設置をめざす。耐震化工事と介護充実を進める「安全・安心のニューディール」とあわせ、「総需要維持策の中心」と位置づけている。与党から批判の強い財源は、「予算の総組み替え」によって優先配分する方針だ。
小沢氏は「小規模事業であることから、それぞれの地域で雇用を創出できる地域密着型の雇用創出策だ」と強調した。



消費増税 自民税調会長も首相方針に反対明言(朝日新聞 2009年1月17日(土))

自民党津島雄二税調会長は17日、麻生首相税制改正関連法案の付則に11年度からの消費増税の明記を指示したことについて「(与党の)税制改正大綱では時期は明示していない。付則でも明示する必要はない」と語った。党税調の責任者が首相の方針に反対する姿勢を鮮明にした形で、週明けからの党内論議に影響を与えそうだ。青森市内の会合での発言。



海自、ソマリア沖へ 3月にも活動開始 海上警備行動(朝日新聞 2009年1月17日(土))

政府はアフリカ東部・ソマリア沖の海賊対策に海上自衛隊を派遣するため、3月にも自衛隊法に基づき海上警備行動を発令する方針を固めた。浜田防衛相が月内にも海自に準備を指示する。政府・与党は海賊対策の新法を3月上旬までに国会に提出する方針だが、成立に時間がかかるため、まずは現行法で可能な海警行動で対応することにした。
与党海賊対策プロジェクトチーム(PT)は、20日に海自派遣の行動基準をまとめる方針。麻生首相は16日、官邸で記者団に「与党PTがまとまれば、すぐやらせていただく。ことは急いでいる」と明言した。自民、公明両党の党内手続きの終了後、首相の意向を受け、防衛相が準備を指示する。準備は1〜2カ月かかるとされ、実際に発令されて海自が活動を始めるのは3月以降になる見通しだ。
首相は昨年末、浜田氏に対し、ソマリア沖の海賊対策のため、海警行動を含む具体的な対応の検討を指示した。防衛省公明党内には慎重論も根強いが、現場海域で海賊被害が多発し、国際社会が対策に取り組んでいることから、日本としても早期に対応する必要があると判断した。
これまでの政府・与党内の調整で、保護対象は日本籍の船だけでなく、日本人や日本の貨物をのせた外国籍の船も含めることが固まっている。武器の使用は警察官職務執行法を準用し、正当防衛と緊急避難の場合に限定する。国会の関与については、派遣の基本計画を閣議決定した後、国会に報告するとしている。
ただ、海警行動は遠洋への派遣を想定しておらず、武器使用基準も不明確との批判がある。政府・与党内では、本来は新法に基づいて派遣すべきだとの意見も強い。海警行動が新法制定までの「つなぎ」であることを明確にするため、発令は新法の閣議決定に合わせて行う方向だ。
世界の海上輸送の安全を監視している国際海事局(本部・ロンドン)が16日に発表した08年の海賊事件の報告書によると、ソマリア周辺での発生件数は計111件と前年より倍増。世界全体の計293件の4割弱を占めた。



定額給付金、財政審の異論に閣僚ら反論(朝日新聞 2009年1月16日(金))

財政制度等審議会財務相の諮問機関)が定額給付金を撤回すべきだとの考えで大筋一致したことに対し、閣僚や与党幹部が16日、記者会見で相次いで反論し、当初の方針通り08年度第2次補正予算案と関連法案の早期成立をめざす考えを強調した。
中川財務相は「見識の深い(財政審の)委員の自由な議論は重い」としつつ、「定額給付金はできるだけ早く年度内に実施したいという考え方は変わらない」。与謝野経済財政相も「財政審の言っている通りの方向に進みがたいものがある」と述べた。
また鳩山総務相は「衆院を通ったものに、事後的に意見を言うのは初めてのことだ。世界同時不況から早く抜け出すためのきっかけづくりになる」と反論。給付金を主導した公明党の太田代表も「衆院で可決され参院に行っていることを、しっかり踏まえて頂きたい」と苦言を呈した。
一方、民主党鳩山由紀夫幹事長は「政府のために働いている機関があえて定額給付金に対して異論を唱える。大変大きなことだ。麻生首相ももっと真剣、深刻に考えるべきだ。今からでも遅くない」と指摘し、給付金の撤回を求める考えを改めて示した。



イスラエル:地上部隊の一部撤退開始(毎日新聞 2009年1月19日(月))

エルサレム高橋宗男】イスラエルオルメルト首相は18日夜、エルサレムを訪問した英独仏首脳らと共同記者会見し、パレスチナ自治区ガザ地区の情勢が安定すれば「可能な限り早期に(イスラエル軍地上部隊を)撤退させる」と強調した。首相発言に先立ち同軍地上部隊の一部は同日夕、撤退を開始した。
イスラエルに即時停戦を求めてきた欧州諸国は、イスラエルの一方的停戦を歓迎しつつも、停戦の永続化を求めている。これに対しオルメルト首相は「我々はガザを征服するつもりはない。ガザにとどまりたくもない」と強調し、早期撤退の意向を示した。
イスラエル紙ハーレツによると、軍当局筋は「地上部隊の段階的撤退」の開始を認めたが、撤退完了の時期は明らかにしていない。
イスラエル軍の一方的停戦は18日午前2時に発効。イスラエルへのロケット弾攻撃を続けていたイスラム原理主義組織ハマスも同日午後、イスラエル軍が完全撤退するまで1週間の猶予を与えるとし、即時停戦に入った。ただ、その後もガザ地区からイスラエル領へ少なくとも3発のロケット弾が撃ち込まれており、イスラエル軍は状況を見極めながら撤退時期を模索するとみられる。
ハマスも停戦表明
エルサレム前田英司】イスラエルオルメルト首相がガザ地区への攻撃の「一方的停戦」を宣言したことを受け、イスラム原理主義組織ハマスも18日、即時停戦に入ると表明した。ハマスは「武装闘争が敵を一方的な攻撃停止に追い込んだ」との声明を出した。



無年金:社保職員が初歩的二重ミス 千葉の男性、7年超も(毎日新聞 2009年1月19日(月))

社会保険事務所職員の二重の初歩的ミスで、千葉県内の男性が厚生年金の受給資格を満たしながら7年以上無年金になっていたことが分かった。千葉社会保険事務局は「あってはならないミスで申し訳ない。検証を進める」と謝罪。男性は「同様の対応をされた人が他にもいるのではないか」と話している。
無年金になっていたのは千葉県富里市の無職、宮本守美さん(67)。1959〜93年、運送や不動産など12社に勤めた。01年に受給手続きで千葉社保事務局佐原事務所を訪れたが、年金相談室の窓口で職員に「納付が300カ月必要だが217カ月しかなく資格がない」と言われた。
転職を繰り返した宮本さんの年金記録は、複数の年金番号が別々に付番されていた。窓口で渡された回答票には「厚年217月(300月)83月不足」と書き込まれた。「プロの調べだから仕方ない」と引き揚げた。
生活苦から08年10月、掛け金が一部でも戻らないか相談しようと佐原事務所を再訪し、受給資格があったことが分かった。
公的年金の受給資格は現行では納付期間が原則25年(300カ月)以上必要。だが52年4月1日以前に生まれた人は、厚生年金の納付期間20年(240カ月)以上で受給できる。宮本さんは厚生年金保険料を240カ月納めていた。01年に対応した職員が計算を誤ったうえ、厚生年金の受給資格を間違う二重のミスをしたとみられる。
佐原事務所の君塚辰夫所長は08年10月、資格期間の判断を間違えたとするおわびの文書を宮本さんに渡した。未支給分の計約570万円が支払われ、月額約8万円も給付される。
宮本さんは00年に交通事故に遭って右腕が動きにくくなり、経営していた会社を閉鎖。友人に借金し生活費を工面した。長男は、会社出勤前に新聞配達をし、月に3万〜4万円を仕送りしてくれた。
宮本さんは「息子夫婦が孫の保育園通いをあきらめ、節約してくれたのが一番つらかった」と話している。
今回のような初歩的なミスで無年金になった例を、社保庁は把握していないという。【野倉恵】



毎日世論調査:橋下大阪知事、支持率69%に上昇(毎日新聞 2009年1月19日(月))

毎日新聞は17、18日の両日、大阪府内の有権者を対象に、2月6日で就任から1年を迎える橋下徹知事の府政に関する世論調査を実施した。橋下知事を「支持する」との回答は69%で、昨年6月の前回調査より3ポイント高かった。支持の理由は「政策に期待できるから」が最も多く、メディアを通じて活発に発信する政策やメッセージが高い支持を得ていることが浮かんだ。
調査は電話で実施。大阪府有権者のいる1286世帯から839人の回答を得た。
「支持しない」との回答は5%(前回調査比1ポイント減)、「どちらともいえない」は25%(同2ポイント減)だった。「支持する」を男女別でみると、男性73%、女性67%。年代別では「70代以上」が78%と最も高く、「20代」が56%で最も低かった。
支持政党別にみると、自民党支持層で橋下知事を支持するとの回答は84%、公明党では78%。野党でも民主党76%▽共産党51%▽社民党75%−−など、党派を超えての幅広い支持がうかがえる。昨年6月の調査では、民主党が67%、共産党では32%だった。
支持する理由は「政策に期待できるから」が38%で、「発言が分かりやすいから」も30%を占めた。支持しない理由では「政策に期待できないから」44%▽「発言に重みがないから」25%の順。
府庁舎を大阪市第三セクタービル「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)に移転する構想については、62%が賛成し、反対の24%を大きく上回った。橋下知事が訴えている「関西州」の構想にも55%が賛成している。
「橋下府政で最も成果があらわれている分野」を尋ねたところ、「財政再建」と「大阪のPR」が24%を占めたのに対し、「医療・福祉」「産業振興」「環境対策」「防災」はそれぞれ1%しかなかった。また、橋下知事が学力向上を軸に強いこだわりをみせる「教育」も11%だった。



がん:誘発するたんぱく質を特定 九大グループ(毎日新聞 2009年1月19日(月))

九州大生体防御医学研究所の中山敬一教授(細胞生物学)のグループが、がんを抑制する遺伝子「p53」の働きを妨げるたんぱく質を特定した。このたんぱく質はがんを誘発する機能があり、増殖すると、がんを発症しやすくなると考えられている。たんぱく質の働きを解明することで、新たな抗がん剤の開発につながる可能性もある。18日付の英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」電子版で発表した。
p53は、異常な速さで増殖するがん細胞などを根絶するため、細胞を自滅に導く機能がある。だが、がん細胞と同レベルの速さで著しく増殖する胎児期の細胞はp53の影響を受けず、その理由は謎とされてきた。
研究グループは、p53に結合し、胎児期に多く生産されるたんぱく質「CHD8」に着目。胎児期のマウスによる実験で、CHD8が結合したp53が機能しなくなることを突き止めた。また、これまでの研究では、培養したがん細胞ではCHD8の発現量が多く、マウスにCHD8を皮下注射するとがんを発症する傾向も出ているという。
中山教授は「CHD8はがんを誘発する“がん遺伝子”といえる。CHD8の機能を抑える薬を開発すれば新しい抗がん剤になると期待できる」と話している。【門田陽介】



「西松」幹部にパー券購入依頼、政治家「隠れみの」認識か(読売新聞 2009年1月18日(日))

準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)が二つの政治団体を使って企業献金をしていた問題で、政治家側から政治資金パーティー券を購入する際、本社や支店の幹部らが窓口になっていたことが分かった。
政治家側はパーティー券に番号をつけて管理しているケースが多く、後で政治団体から購入代金が振り込まれても、同社への販売分だと分かる仕組みになっていたという。政治家側も西松建設政治団体を隠れみのにしていたことを認識していた可能性が出てきた。
西松建設はOBを代表にした政治団体新政治問題研究会」(1995年設立)と「未来産業研究会」(99年設立)を通じ、解散する2006年までに献金やパーティー券の購入費など総額約4億7800万円を支出。このうち、両団体名義で購入したパーティー券は9000万円前後に上る。
複数の同社関係者によると、同社は本社の役員や支店長クラスの幹部らを、国会議員や自治体の首長の窓口にし、パーティー券の購入要請を受けていた。政治家と同郷、同窓の幹部が担当になるケースもあった。元幹部は「自分が担当した政治家の場合、秘書がパーティー券を会社へ郵送したり、自分の所へ直接持ってきたりした」と明かす。
政治家側から購入要請を受けた幹部らは、パーティー券の枚数と金額を同社総務部に文書で連絡。最終的に同部が購入する枚数を決め、政治団体の代表である西松OBが代金振り込みの手続きをしていた。
一方、政治家側はパーティー券にあらかじめ番号を割り振って管理しており、西松建設の担当者に対して、パーティー券と一緒に、番号を記載した振込用紙を渡すケースが多かった。指定口座に政治団体名義で代金を振り込んでも、振込先にこの番号が伝わるので、政治家側は西松建設に渡したパーティー券の代金とわかるようになっていた。
西松建設の元幹部は「ある国会議員の秘書から『新政治問題研究会からの振り込みになっているが、券の番号によると西松建設に配ったものではないか』と尋ねられ、『それはうちだ』と答えた」と証言。また、「担当した政治家の秘書に、『二つの政治団体が振り込んだのは、西松建設の金だ』と説明したこともある」と語った。
総務部が購入枚数と金額を決めていたのは、複数の幹部が同じ政治家側から別々にパーティー券購入を依頼された場合、政治資金規正法が定める一つのパーティーあたりの購入限度額(150万円)を超過する恐れがあり、調整する必要があったためだという。
04〜06年の政治資金収支報告書に、二つの政治団体のいずれかにパーティー券を購入してもらったと記載していた政治家や派閥などの政治団体は少なくとも12あった。読売新聞が西松建設と両団体の関係を知っていたかを取材したところ、「全く知らなかった」「収支報告書に記載した通り」などの回答だった。
同法は、他人名義でのパーティー券購入や代金の受け取りを禁止している。
東京地検特捜部もこれまでに、両団体の代表者の自宅を捜索し、西松建設献金の実態を調べている。



「採決の瞬間判断」…消費増税「造反」に含み、自民・中川元幹事長(産経新聞 - Yahoo! 2009年1月19日(月))

自民党中川秀直元幹事長は19日朝のTBS系番組で、平成21年度予算案に関連する税制改正関連法案の付則に23年度からの消費税率引き上げが盛り込まれた場合の対応について「あくまでも(付則の修正に)努力していく。今のままではいけないと思っているが、その瞬間で判断する」と語り、法案採決時の造反に含みを残した。
麻生太郎首相は付則に明記する考えだが、衆院選への影響を懸念する中堅・若手議員の間に根強い反発があることから、自民党は今週、党内での論議を活発化させる。
番組で中川氏は「不況のどん底で消費税率を上げたら2番底、3番底になる」と述べ、重ねて23年度からの消費増税に反対する考えを示した。そのうえで「17年の衆院選で任期中に消費税を上げると公約していない。2年後に誰が首相かは分からないが、(増税は)選挙で国民が決めることであり、選挙前に法律で縛るのは民主主義のルールに反する」と語り、首相の姿勢を批判した。



WHO:生活習慣病の危険度、腹囲を基準に(毎日新聞 2009年1月18日(日))

心臓病や糖尿病などになりやすい人を見つけるための新しい基準として、世界保健機関(WHO)が腹囲を採用することになった。WHOは従来、肥満度を示すBMI(体格指数)が25以上の「肥満」を高リスク集団としてきたが、アジア人にはBMIが低くても心臓病などで死亡する例が多い。新基準はアジア地域では「男性85センチ前後、女性75センチ前後」となる見込みで、導入されれば日本の「メタボ健診」の腹囲基準に影響を与える可能性がある。【永山悦子】
BMIから変更
WHO本部(スイス・ジュネーブ)で12月開かれた専門家会合で決まった。6月ごろ正式決定する。
BMIは、体重を身長(メートル表示)の2乗で割った数値で、WHOはBMI25以上を「肥満」とし、心臓病や糖尿病、高血圧などの生活習慣病への注意を呼び掛ける基準としてきた。しかし精度への疑問の声もあり、BMIに代わる新しい基準を検討していた。
同会合で約600の文献を検討した結果、アジアではBMIが25以下でも心臓病や糖尿病になる危険性が高く、BMIより腹囲を使った方が、より正確に高リスク集団を見つけられると判断した。
新基準は、体格などの違いを考慮して3種類とする。アジアなど、腹囲が細くても病気になりやすい人が多い地域(男性85センチ前後、女性75センチ前後)▽欧米など、腹囲が太いと病気になりやすい地域(男性100センチ前後、女性90センチ前後)▽中東などどちらでもない地域(男性95センチ前後、女性80センチ前後)−−とする方向で検討中だ。
日本では08年度、メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)対策の特定健診(メタボ健診)が始まった。この場合の基準は「男性85センチ以上、女性90センチ以上」。WHOは、この新基準をメタボ健診の基準とは別の概念と位置付けており、特に健診制度や血液検査が普及していない発展途上国などでの活用を見込んでいる。
◇メタボ健診
腹部に内臓脂肪のたまったメタボリックシンドロームの人は、脳卒中などを発症しやすいとの学説に基づいて、08年度から導入された健診制度。妊婦などを除く40〜74歳が対象で、医療保険者(健保組合など)に実施が義務づけられる。腹囲が「男性85センチ、女性90センチ以上」など一定の基準を超えた場合は生活習慣改善を指導する。
◇解説…「やせ=健康」先入観排除
WHOが、生活習慣病の危険性を判断する目安として、肥満度を見るBMIに代わって腹囲を採用することになった背景には、「肥満でなければ生活習慣病にはかからない」という先入観が、予防や発見・治療を遅らせる例が少なくないことがある。
例えば日本の糖尿病患者はやせていても発症する例が多い。WHOはこうしたアジア人の特性を考慮し、BMIより腹囲の方が、隠れた病気を見落とす可能性は低いと判断した。もちろん腹囲も肥満の人ほど大きい傾向はあるが、新基準はアジア人の基準を欧米など他地域より細めに設定し、高リスク集団を見つけることを目指す。
一方、日本のメタボ健診は、診断の第一条件に「腹部肥満」を据えたため「男性85センチ、女性90センチ」という数値が独り歩きし、「腹囲が基準以下なら健康」との先入観を受診者に広げた。同じ仕組みを採用している国際糖尿病連合は、腹囲をメタボ基準の必須項目から外す方向で検討中だ。
WHOの新基準をこのまま日本人にあてはめた場合、大勢の男女が該当したり、メタボ基準との並立で混乱を招く可能性もある。「科学的根拠に乏しい」と言われるメタボの腹囲基準の見直しも含めて、整理が必要だろう。
基準を検討するWHOの専門家会合に出席した門脇孝東京大教授(糖尿病・代謝内科)は、「WHOの基準は病気の危険性に気付く目安として使ってもらえばいい。数値で一喜一憂するためのものではない」と説明する。【永山悦子】



国内初の心肺同時移植成功=30代男性患者に−「容体は安定」・大阪大(時事通信 - Yahoo! 2009年1月18日(日))

大阪大病院(大阪府吹田市)は17日、脳死判定された男性から提供された心臓と両肺を1人の患者に移植する国内初の心肺同時移植を行った。執刀に当たった心臓血管外科の沢芳樹教授は「手術としては成功した。患者の容体は安定している」と述べた。
手術は17日午後3時半ごろに始まり、同11時50分ごろに終了した。心臓と両肺は同日同5時20分ごろ、同病院に到着した。
移植手術を受けたのは30代男性。肺高血圧症を伴う重い先天性心疾患「アイゼンメンジャー症候群」で同病院に入院していた。
心臓と両肺を同時に移植しなければ助からない患者は、この男性を含め日本臓器移植ネットワークに4人登録されている。ただ日本は脳死移植自体が少ないため、すべての条件が適合するドナーがこれまで現れず、2003年の登録開始から5年以上たっての1例目となった。
移植された心臓と両肺は兵庫県災害医療センター(神戸市)で脳死と判定された30代男性から提供された。