「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/23 第29、30条 財産権、制限される場合も(毎日新聞 2013年12月27日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 今回はお金を持つ権利の話?
先生 お金だけでなく土地や建物の所有権や債権など、財産的な価値があるものすべてを指しますね。目に見えない著作権特許権も財産権の一つです。
憲太 財産権の保障は当然だよね。
先生 第29条1項は個人の財産権の保障とともに、財産権を認める法制度も保障していると考えられます。資本主義経済の体制を採るということですね。旧ソ連のような社会主義経済体制では、土地や住宅などの個人所有権は原則認められなかったんですよ。ただ、憲法は2項で「公共の福祉に適合するやうに」と制約を加えていますね。
憲太 どういう場合に制約されるの?
先生 たとえば火事が起きた場合、延焼の恐れがある隣の建物を処分することが消防法で認められています。そうした災害や他人の生命への危害を防ぐために法律で制約されるほか、文化財や自然環境を守るという政策上の理由からも制限を受ける場合があります。
憲太 自民党案は知的財産権にも触れているね。
先生 自民党「草案Q&A」では「特許権等の保護が過剰になり、経済活動の過度の妨げにならないよう配慮することとした」としています。
憲太 第30条は三大義務の一つだね。
先生 税金によって国の財政が成り立ち、国民への行政サービスができますね。だから国の主権者として納税は義務とされています。=次回は第31?35条。1月7日掲載です
==============
<現行憲法
【第29条1】財産権は、これを侵してはならない。
【第29条2】財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
【第29条3】私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
【第30条】国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。


<自民案>
【第29条1】財産権は、保障する。
【第29条2】財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
【第29条3】私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。
【第30条】国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。