「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/22 第27、28条 労働基本権、公務員は制限も(毎日新聞 2013年12月26日(木))

<戦後70年に向けて>
憲太君 今回は働く人の権利だね。
先生 第25条にある「健康で文化的な最低限度の生活」を営むには、まずは働いて給与を得ることが必要ですね。国民は「働く機会を確保してください」と国に配慮を求めることができる。それが、勤労の権利ですね。
憲太 第28条は労働者の権利?
先生 労働基本権と言います。資本主義社会では、経営者は利益を得るために労働者を安い賃金で目いっぱい働かせようとします。しかし、それでは労働者は健康で文化的な生活を送れません。そこで憲法は、労働者と経営者が対等な関係になるように、第28条で労働者が団結し、経営者と交渉できる権利を保障しています。
憲太 ストライキって時々聞くけど。
先生 労働条件の改善を求めて、労働者がまとまって働くのをやめることです。経営者側に損害が出ても、第28条の「団体行動」として保障されているので、正当な行為なら、解雇されたり、賠償を求められたりすることはないんですよ。
憲太 自民党案の第28条2項は、公務員の労働基本権を制限しているの?
先生 今でも公務員は法律でストライキなどが禁止され、人事院という国の機関が労働条件を国会や内閣に「勧告」する仕組みになっています。自民党案はこれを憲法に明記しましたが、民主党は労働基本権を認めることに前向きで、「憲法に明記されれば、議論もできなくなる」という意見があります。=次回は第29、30条です
==============
<現行憲法
【第27条1】すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
【第27条2】賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
【第27条3】児童は、これを酷使してはならない。
【第28条】勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。


<自民案>
【第27条1】全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
【第27条2】賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
【第27条3】何人も、児童を酷使してはならない。
【第28条1】勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。
【第28条2】(新設)公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。