「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/21 第26条 教育内容、国の介入どこまで(毎日新聞 2013年12月25日(水))

<戦後70年に向けて>
憲太君 今回は僕たちの権利だね。
先生 個人の人格を形作るために教育はとても大事なんですね。だから憲法は全国民が平等に教育を受ける権利を保障しています。憲太君らは権利を侵害されないだけでなく、国に適切な教育を求める権利があるんです。
憲太 だから、自民党案の3項に、国が教育環境の整備に努めるとあるの?
先生 今の憲法の解釈でも、国はそうした義務を負うと考えられていますね。自民党「草案Q&A」では「具体的には、教育関係の施設整備などに、国が積極的な施策を講ずる」としています。
憲太 2項の義務は?
先生 これは親の義務です。憲太君の親には、憲太君に教育を受けさせる義務があります。その義務を果たしてもらうため義務教育は無償としています。
憲太 第26条の義務には罰則もあるの?
先生 正当な理由がなく、子どもを就学させない場合は10万円以下の罰金になります。
憲太 学校での勉強内容は誰が決めるの?
先生 文部科学省が作る学習指導要領で、教科や内容などが決まっています。全国的に一定の教育水準を保つには、国が教育内容に関わることが必要です。ただ憲法では、親が子どもに授ける教育内容は国に干渉されないという「教育の自由」も保障されています。戦前の教育勅語軍国主義に結びついた歴史もあり、国がどこまで教育内容を決められるかという点では、意見が対立しています。=次回は第27、28条です
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<現行憲法
【第26条1】すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
【第26条2】すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。


<自民案>
【第26条1】全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
【第26条2】全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。
【第26条3】(新設)国は、教育が国の未来を切り拓(ひら)く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。