「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/20 第25条 国防軍海外派遣の根拠にも(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 自民党案で加わった条文だね。
先生 生存権を定める第25条に条文を三つ加えています。自民党「草案Q&A」では2と4を「新しい人権」と位置付け、「時代の変化に的確に対応するため、国民の権利保障を一層充実していくことは、望ましいことです」としています。
憲太 それはいいことだね。
先生 議論が必要な点もありますね。
憲太 最初は環境権のことだね。
先生 良い環境の中で生活を営む権利ですね。戦後の高度成長の中で公害問題が出てきたことから、第25条を根拠に提唱されるようになりました。
憲太 自民党案は「国」が主語だね。
先生 国の責務で、国民の権利という形ではないですね。環境権を法的権利とするには不明確な点が多く最高裁でも認められていません。自民党案は「国民と協力して」と、国民に環境保全義務を課す形にもなっています。
憲太 次は在外邦人の保護?
先生 「Q&A」では「グローバル化が進んだ現在、海外にいる日本人の安全を国が担保する責務を書き込むべきだ」としています。ただ、日弁連憲法委員会の伊藤真弁護士は「国防軍を海外に派遣する根拠にもなる」と指摘しています。
憲太 自衛隊は在外邦人を保護できない?
先生 アルジェリアで日本人が犠牲になった人質事件がありましたが、自衛隊ができるのは安全な地域への輸送任務だけ。自民党案第9条の2は、国防軍が「国民の生命若(も)しくは自由を守るための活動を行う」とし、「Q&A」では海外での「武力行使は可能」とされています。第25条の4は「犯罪被害者への配慮」ですね。=次回は第26条。25日掲載です
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自民党案>(新設)
第25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
第25条の3 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。
第25条の4 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。