「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/19 第25条 「生存権」脅かす保護費減額(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 第25条からは「権利」という言葉が続くけど、どんな規定なの?
先生 第23条までは自由権、第24条は平等権の条文でした。第25条からは「社会権」の規定が始まりますね。
憲太 社会権って何?
先生 社会的、経済的に弱い立場の人でも人間らしい生活を送れるよう、国家に配慮を求める権利です。自由権や平等権の後で生まれた人権なんですよ。
憲太 どういうこと?
先生 欧米では市民革命と前後して産業革命が起こり、資本主義のシステムができました。資本主義は弱肉強食の世界ですから、「自由だ。平等だ」と言っても、労働者はひどい条件で働かされ、失業すれば生活も苦しい状況に置かれるのが実情でした。そこで、社会権の考え方が生まれたんですよ。
憲太 だから「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」とあるんだね。
先生 「生存権」と言います。この1項は政府原案にはなく、新憲法を決める衆議院の議論の中で追加されたものなんですよ。
憲太 2項には「社会福祉」や「社会保障」「公衆衛生」って言葉があるけど。
先生 生存権を保障するために国が努力すべき分野を挙げていますね。社会福祉は生活が困難な人や障害者を援護するための生活保護法や身体障害者福祉法社会保障国民健康保険法や国民年金法、公衆衛生は感染症予防法や予防接種法などで、具体的な施策が決まっています。
憲太 夏に、生活保護費が切り下げられたってニュースを見たけど。
先生 8月に始まり、政府は今後3年で段階的に平均6・5%減額する方針です。受給者が約216万人に達し、財政を圧迫しているからですが、「減額されれば健康で文化的な最低限度の生活さえ送れない」という声もあります。=次回は自民党案第25条の2〜4です
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<現行憲法
第22条1】何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
【第22条2】全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
【第23条】学問の自由は、保障する。
【第24条1】家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
【第24条2】婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
【第24条3】家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第25条1】すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
【第25条2】国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


<自民案>
【第25条1】全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
【第25条2】国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。