「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/18 第24条 「個人の尊重」逆行の指摘も(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 憲法は結婚のことまで定めているんだ。
先生 大日本帝国憲法下の民法では家制度があって、家を支配する戸主(こしゅ)の同意がなければ結婚できませんでした。また、女性は結婚すると法律行為をする資格がなく、男女は平等ではありませんでした。だから憲法は第24条で、両性間の合意だけで結婚でき、家庭では夫婦が平等と定めたんです。
憲太 民法の規定はどうなったの?
先生 憲法施行後、大急ぎで改正され、家制度は廃止されました。ただ、新しい民法でも、夫婦が別姓を名乗れない点や、女性が離婚後6カ月間は再婚を禁じられている点で、改正を求める声があります。また、憲法の条文は「婚姻は両性の合意」としており、同性同士の結婚は法的に認められていません。
憲太 自民党案は「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される」とする1項を追加したね。
先生 慶応大の小林節教授は「大日本帝国憲法下では、家族が最小、国家は最大の社会的単位とされ、戦争に突入した。その反省から憲法は一人一人の個人を尊重したのに、自民党案は逆行している」と指摘しています。自民党「草案Q&A」は「昨今、家族の絆が薄くなってきていると言われていることに鑑みた」「個人と家族を対比して考えようとするものでは、全くありません」としています。
憲太 第22、23条はどんな規定なの?
先生 第22条は居住、移転、職業選択の自由です。職業選択の自由からは選んだ職業を行う自由、つまり「営業の自由」も認められます。自由権の区分で言えば、経済的自由権の規定です。第23条は学問の自由。具体的には、研究や研究発表、教授の自由が挙げられます。=次回は第25条です
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<現行憲法
【第22条1】何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
【第22条2】何人も、外国に移住し、又(また)は国籍を離脱する自由を侵されない。
【第23条】学問の自由は、これを保障する。
【第24条1】婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
【第24条2】配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。


<自民案>
【第22条1】何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
【第22条2】全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
【第23条】学問の自由は、保障する。
【第24条1】家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
【第24条2】婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
【第24条3】家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。