「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/17 第21条 自民、表現の自由に「公益」制約(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 表現の自由は大事という話だったけど、どんな表現も許されるの?
先生 最近問題になったのがヘイトスピーチですね。特定の人種や民族を差別的な言葉でののしる表現です。京都地裁は10月、人種差別に当たり、違法と判断しました。判決は「公益を図る目的の表現行為とは言えない」としていますね。
憲太 芸能人や政治家が出版社や新聞社を訴える例もあるね。
先生 記事が名誉を傷つけたとして裁判になるケースですね。名誉毀損(きそん)に当たるかは、記事の公共性や真実性などで判断されます。インターネットでの表現が問題になることも増えています。
憲太 自民党案は2項で「公益及び公の秩序を害することを目的とした」活動や結社を禁止したね。
先生 「公共の福祉」について以前説明しましたね。この言葉は四つの条文で出てきますが、表現や信教の自由など精神的な自由を定めた条文にはありません。精神的自由の権利は「壊れやすく傷つきやすい」ので、制約につながる言葉は入っていないのです。大阪大大学院の鈴木秀美教授は「なぜ、あえて最も大事とされる表現の自由に制約を明記するのか疑問だ」と批判しています。
憲太 自民党の「草案Q&A」は?
先生 この規定は「オウム真理教破壊活動防止法を適用できなかったことの反省などを踏まえた」とし、「目的とした」という表現を使って「制限できる範囲を厳しく限定している」としていますね。自民党案第21条の2は情報公開の規定です。国民側からの「知る権利の保障」という規定ではなく、「国の責務」にとどまっています。=次回は第22〜24条です
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<自民案>
第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
第21条の2 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。